3 / 9
朝食と時報と姉妹
しおりを挟むしかしまあ、ホテルの部屋を出て最初に出くわしたのが人類にあるまじき骨格を持つマッチョだったなんて、トラウマになってもおかしくないね。
そんな未知の人類との接近遭遇を乗り越えて辿りついただけはあるよ。
だって朝食は無料でご提供いたしますって書いてんだよ?
そう、一階のレストランって朝食無料のおかわり自由だった!
無料ってタダってことで良いんだよね!?
和食のセットを頼んじまったよ?
値段が「free」だったよ?
後でお金を請求されないかビビってる私の情けなさ。
それに比べて堂々としている姉ちゃんの頼れる感じは最強だ。
悠然とは我が姉のためにある言葉だぜ。
しかしね、ご飯と味噌汁に焼き魚もついて無料とか、近所にあったら私はここに毎日通うよ。
味噌汁のくせにエビが入ってて、最初はなんだこりゃ!?って思ったけど…
うん、美味いな。
まじで無料か?
チップをお願いされたりしないよな?
まあ、無一文だし、もう食べちゃってるし、心配するだけ無駄だよな。
うん、味わおう。
しかし姉ちゃん、さっきから味噌汁しか食ってねえぜ…
栄養が偏っちゃわないかな?
あっ、ワカメが入ってるから大丈夫か。
逆にご飯と焼き魚食べた方がバランス悪いのかな。
だが、私は美味しい料理を前に考えるのをやめたぜ!
出てきたものは食い尽くすのが私のスタイルだ!
うん、焼き魚も半端ないっつうかけしからん!
怒りがわくほど美味い!
何がどう美味いのか理解できないけどとにかく美味い!
お米だって逆立ちしながら駆け出しそうな躍動感を口の中に届けてくれるぜ!
あー、でもお腹いっぱいだ。
おかわりなんて夢のまた夢。
「ご馳走さまでした」
しかし他に客って居ないのな。
こんな夢みたいなレストランなのに過疎るとか、他にもっと凄いとこがあんのかね?
「あれ、そういや今って何時だ?」
ここまで一つも時計もなければ窓すら無い。
一階なのに地下みたいに壁に囲まれてるとかヤバいんじゃないか?
火事になっても逃げ道ないぜ?
まあ、今すぐ火事にならんよね。
「そろそろ朝の5時ね」
ん?
「朝の5時って言った?」
そんな時間に起きてる自分がこの世に居るなんて驚くわ
「あれ、時計とかあったっけ?」
姉ちゃんなら体内時計があるのかもしれないけどね。
「一時間に一度、時報のようなものが流れるのよ。前回は4時だったわ」
むむ、それなら時計置いて欲しいね。
まあ良いや。
そんなことより…
「めっちゃ早起きじゃん!?」
5時から朝ごはん食べてたとか何者だよ私は?
これ、お昼までにお腹減っちゃうんじゃない?
その時、ザザザってノイズが聞こえた。
スピーカーかな?
「「ピンポンパンポーン」」
おっとチャイムだ、だが肉声だ。
女の子二人の声だね。
「「なおこずが朝の五時をお知らせします!」」
ああ、これが時報か。
んでも、なおこずって誰?
「なおちゃん、朝の五時っていつも何してる?」
「夢の中でザリガニのポーズする頃っす。こずえちゃんは?」
「私は普通にネトゲだよ」
「こずえちゃんの普通は一般的ではないっす」
「そうかなー?」
「一般的には神社巡りとかじゃないっすか?」
「いやいや、空いてるからって朝から神社に行かないでしょ」
「そうっすよ。こずえちゃんのネトゲにも同じ感想だったっす」
「なるほど。でも、朝は自分の好きなことするには良い時間だよね!」
「おっ、上手く締めたっすね!それじゃあここらで…」
「「はい、朝の5時からぱやぱや!なおこずでした!」」
うん、なにこれ?
プツッとスピーカーが切れるような音がして放送がやんだ。
「ねえ、姉ちゃん、これが時報なの?」
寝てるときにこんなの流すホテルはおかしい。
「そうよ。3時は牛、4時はチョコレートの話だったわ」
よく寝てたね私。
「っていうか、姉ちゃんはいつから起きてんだ?」
「さあ?気付けばあの部屋に居て3時の時報を聞いていたけれど、それ以前のことは思い出せないのよ」
うっひょい。
これは事件の匂いだぜ。
しかしまあ、気が付いたら牛の話が聞こえていたとか、姉ちゃんはそれでも平静に冷静にとにかく静かに無表情だったんだろうね。
半端ないぜ。
いやいや、それ以前にだよ…
「気が付いたら過去が思い出せないって、いくら姉ちゃんでも怖くなかったの?」
回答はなんとなく想像がつくけどね。
「怖がる必要があるのかしら?」
うん、必要はないね。
「今って過去からの連続じゃん?それが途切れてたら不安になって考え込んだりさ、私はしちゃうね」
まあ、姉ちゃんと一緒だから平気なんだけどね。
一人で目覚めてたら、私は怖くてがくぶるだったよ絶対。
「不安って理解できないわ。それに、分かることは考えなくても分かるし、分からないことは考えても分からないもの。考える意味がないでしょう」
直感型の天才って理解できないぜ。
私ってつくづく凡人だよな。
「ふーん、姉ちゃんらしいね。さて、お腹も膨れたし次はエントランス行ってみようかな?」
外に行きたいし。
「行き先は任せるわ」
よっし、姉ちゃんからの全面同意も得たし、次はエントランスに行きますよっと!
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない
めがねあざらし
BL
「神嫁は……お前です」
村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。
戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。
穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。
夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
『イケメンイスラエル大使館員と古代ユダヤの「アーク探し」の5日間の某国特殊部隊相手の大激戦!なっちゃん恋愛小説シリーズ第1弾!』
あらお☆ひろ
キャラ文芸
「なつ&陽菜コンビ」にニコニコ商店街・ニコニコプロレスのメンバーが再集結の第1弾!
もちろん、「なっちゃん」の恋愛小説シリーズ第1弾でもあります!
ニコニコ商店街・ニコニコポロレスのメンバーが再集結。
稀世・三郎夫婦に3歳になったひまわりに直とまりあ。
もちろん夏子&陽菜のコンビも健在。
今作の主人公は「夏子」?
淡路島イザナギ神社で知り合ったイケメン大使館員の「MK」も加わり10人の旅が始まる。
ホテルの庭で偶然拾った二つの「古代ユダヤ支族の紋章の入った指輪」をきっかけに、古来ユダヤの巫女と化した夏子は「部屋荒らし」、「ひったくり」そして「追跡」と謎の外人に追われる!
古代ユダヤの支族が日本に持ち込んだとされる「ソロモンの秘宝」と「アーク(聖櫃)」に入れられた「三種の神器」の隠し場所を夏子のお告げと客観的歴史事実を基に淡路、徳島、京都、長野、能登、伊勢とアークの追跡が始まる。
もちろん最後はお決まりの「ドンパチ」の格闘戦!
アークと夏子とMKの恋の行方をお時間のある人はゆるーく一緒に見守ってあげてください!
では、よろひこー (⋈◍>◡<◍)。✧♡!
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ハレマ・ハレオは、ハーレまない!~億り人になった俺に美少女達が寄ってくる?だが俺は絶対にハーレムなんて作らない~
長月 鳥
キャラ文芸
W高校1年生の晴間晴雄(ハレマハレオ)は、宝くじの当選で億り人となった。
だが、彼は喜ばない。
それは「日本にも一夫多妻制があればいいのになぁ」が口癖だった父親の存在が起因する。
株で儲け、一代で財を成した父親の晴間舘雄(ハレマダテオ)は、金と女に溺れた。特に女性関係は酷く、あらゆる国と地域に100名以上の愛人が居たと見られる。
以前は、ごく平凡で慎ましく幸せな3人家族だった……だが、大金を手にした父親は、都心に豪邸を構えると、金遣いが荒くなり態度も大きく変わり、妻のカエデに手を上げるようになった。いつしか住み家は、人目も憚らず愛人を何人も連れ込むハーレムと化し酒池肉林が繰り返された。やがて妻を追い出し、親権を手にしておきながら、一人息子のハレオまでも安アパートへと追いやった。
ハレオは、憎しみを抱きつつも父親からの家賃や生活面での援助を受け続けた。義務教育が終わるその日まで。
そして、高校入学のその日、父親は他界した。
死因は【腹上死】。
死因だけでも親族を騒然とさせたが、それだけでは無かった。
借金こそ無かったものの、父親ダテオの資産は0、一文無し。
愛人達に、その全てを注ぎ込み、果てたのだ。
それを聞いたハレオは誓う。
「金は人をダメにする、女は男をダメにする」
「金も女も信用しない、父親みたいになってたまるか」
「俺は絶対にハーレムなんて作らない、俺は絶対ハーレまない!!」
最後の誓いの意味は分からないが……。
この日より、ハレオと金、そして女達との戦いが始まった。
そんな思いとは裏腹に、ハレオの周りには、幼馴染やクラスの人気者、アイドルや複数の妹達が現れる。
果たして彼女たちの目的は、ハレオの当選金か、はたまた真実の愛か。
お金と女、数多の煩悩に翻弄されるハレマハレオの高校生活が、今、始まる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる