マジで普通の異世界転生 〜転生モノの王道を外れたら即死w〜

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第一章 王道的転生

遠い星の歌

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 エルフのロン毛にリュートを押し付けられ、俺は思考停止して固まった。

「待ってください……うちの子はまだ喋ることすらできません!」

 代わりに反論してくれたのは母だった。ナイスだママン。もっと言ってやれ!

「ですが、これは世界神からの神託です」

 ロン毛のエルフは重々しい口調で言い返した。

「泉の前で演奏を終えた時、ファレシラ様のかすかな声が聞こえました……認めるのは悔しいのですが、偉大なる女神様が仰ったのです。わたしの歌では不十分だと。その子に神前で歌わせろと……」

 ええぇ……? 偉大()ってソレ、例のサイコパスだよね? 俺と両親に「黒豚を殺せなかったら皆殺し☆」と命じるし、クエストを達成しても特に報酬無しの邪神だよ?

 しかしエルフは真剣な顔でリュートのような六弦楽器を俺に押し付け……俺はうっかり楽器に触れてしまった。

 ゼロ歳児の爪楊枝みたいな指が弦に触れ、ポン……と柔らかい開放弦の音が響く。

(……ざけんな)

 俺はその音に抵抗しようとしたが、逆らうのは困難だった。

「そう言われましても、この子はまだ乳飲み子ですよ?」

 母が抗弁し、エルフが言い返す。

「神託です。あなたも冒険者なら、神々の言葉の重みは知っているでしょう?」
「言われなくても知ってるわ! だから私は……この子がしくじったらどうなるんです?」
「……わかりません」
「わからない!? それは……そんなのはあんまりです!」

 母はなにやら抵抗していたが——俺はしかし、「異世界の楽器」に好奇心を抑えられなくなっていた。

 俺はずっとそうだった。軽トラに撥ねられて死んで、女神にアホなお願いをしてしまったときだってそうだった。

 自分の好きなものが目の前にあって、それをしてもいいし、しなくても良いと言われたら、俺は「する」を選んでしまう。

「〈神託〉なんでしょ? 罰則もわからないのに、息子にそんなこと——」

 俺は母の言葉を無視してリュートのような六弦楽器をさらに奏でた。良い音だ——俺には絶対音感なんて上等なスキルは無いが、一番低い音を「ド」としたら、各弦は低いほうからド、ソ、レ、ラ、ミ、シに調弦されている。

(五度の楽器だ。ヴァイオリンとかチェロと同じ……)

 気がつくと楽器に向かって両手を伸ばし、抱きかかえていた。

 リュートのようなそれにはギターと同じフレットが刻まれていて、各フレットは1オクターブを半音ずつ分割している。その楽器は、例えばある音をファだとすれば、すぐ右の弦がドの音が鳴るようにできていて、そこまでわかれば初見の楽器でも演奏できそうな予感がした。

 ——なにを演奏してみせようか。

 演奏しないという選択肢は、すでに俺の中から消えていた。

(ここは地球じゃねえし、聞かせたい曲はいくらでも思いつくけど……俺はまだクソガキだし……)

 吟遊詩人の楽器に対し、ゼロ歳児の俺の手はまだ小さすぎた。左手で抑えられるフレットは1、2本が限度だし、まだおぼつかない右手にも複雑なストロークは無理だ。

 演奏の制限はきつかったが、今や言い争う母とエルフを数百人の村人オーディエンスが見守っていて……俺は否応もなく音楽をしていたころの自分を思い出した。

「……ッ、だぁーーーー!!」

 俺はむちゃくちゃに暴れて母の腕から逃げ出した。黒豚との格闘でレベル10になったゼロ歳児の両足はステータスに物を言わせて大地を捉え、

「——だ!(よこせ)」

 気持ちを込めて睨みつけるとエルフのアニキは俺にリュートを渡してくれた。

「カッシェ、だめ!」

 母親に反対されたが、親に言われて立ち止まるなんてロックじゃねえ!

 俺はリュートをお琴のように地面に置いた。できれば抱えて演奏したいが、ゼロ歳児の体格でそんなことは不可能だ。

 コードを抑えることすらできない。幼児の左手がネックを掴むのは不可能だし、左手で弦のうち一本をフレットに押し付けて音程を選び、右手でその弦を弾くので精一杯だ。


 それでも俺は演奏を始めた。


 選んだ曲はスタンド・●イ・ミー……前奏なら指一本で弾ける名曲に決めた。歌詞は英語になるが、どのみち俺はマトモに言葉をしゃべることができない。なら問題ない。

「♪ ッあうあっ、……あ・あー……♪」

 地球とおいほしでは有名なブルースを歌い始めると、それまで止めようとしていた母が沈黙し、ざわめいていた村人たちも黙ってくれた。

「♪ ぁぅあーあ・あーあ……♪」

 舌足らずな「あうあ」だけで地球の歌を歌い始めると、エルフの歌で淡く輝いていたファレシラの石像が光量を強くした。村人がざわめき、狐のババアが「奇跡じゃ」などとわめいたが、俺は気にしない。路上ライブの唯一のコツは、演奏を始めたら最後、照れずに最後までやり通すことだ。

 数小節ほど歌い上げると、戸惑い気味だが太鼓の音が聞こえてきた。

 和太鼓のような太鼓を挟んだ黒い狼の二人がリズムを刻み始める。たぶん——いや、間違いなくこの村にアフタービートは無いのだろう。弱拍をあえて強く打つリズムは西洋にも日本にも長く知られていなかったリズムだし、狼二人の戸惑った顔がそれを証明している。

 だけどドラムは素敵だね。バンドからずっと組んでたドラマーが抜け……直後の練習で、びっくりするほど音に厚みが消えた日を思い出してしまう。

「♪ あう・あーああ、あうあ、あーう・あーあ……♪」

 狼二人のドラムが加わると泉の邪神像はいよいよ光を強くした。目を悪くしそうなほど青白く輝き、村人たちが両手で目を覆う。

 しかし俺は演奏を止めるわけにはいかない。音楽とは、とめどない時間の流れの中にある芸術だ。演奏というものは、やり始めたら最後、曲が終わるまで止めてはいけない。

 そんな気概はドラムの狼たちも同じのようで、太鼓を挟む彼らは邪神像がどれだけ光ろうと演奏を止めなかった。

 俺はリュートをかき鳴らし、「あうあ」だけで遠い故郷のブルースを歌った。

「♪ あう・あーああ……」

 スタ●ド・バイ・ミーが終わりに差し掛かる。

「♪ あうあ……」

 曲の終わりを察し、狼たちは太鼓を叩くリズムを遅くしてくれた。

「♪ あーう・あぁ・あ……」

 琴のように構えたリュートでシメのアルペジオを鳴らし、俺は演奏を終えた。


  ◇


 演奏を終えると、まずは狐の老婆がひとり拍手を始め、遅れて村人たちが喝采を送ってくれた。隣でずっと「なにしてんのこの子」という顔をしていた母も、ハッとして拍手に参加してくれる。

「……見事じゃ! このような歌をわしは知らぬ。わしが思うに……」

 村長の狐がなにか言いかけたが、その続きは聞き取れなかった。

「「「 ああああ!? 」」」

 村人らが悲鳴を上げたが、気持ちはわかる。俺も「あうあー!?」と叫んでしまった。

 泉の女神像——女神・ファレシラの石像が、ぶっ壊れる直前の白熱電灯のように輝いたかと思うと、夜空の向こうからふわっと降り立つ「女」があり——俺は、数日ぶりに邪神を目の前にした。

 村の広場の中央に、女神ファレシラが降臨した。

 光に包まれた邪悪な女神は黄緑の髪をなびかせ、古代ギリシャを思わせる純白のローブをはためかせ、偉そうに——それはもう偉そうに、俺たち村人へ告げた。

〈わたしの子らよ……わたしの星の、ウユギワ村の子どもたちよ……〉

 偉大なるソレ()は、髪とか純白のローブをはためかせながら空中に浮かび、伏し目がちに村民を見下ろして言った。

〈歌たるわたしは今日、この星でまことに新しい歌を聞いた……〉

「「「 ファッ……!? ファレシラ様ァーーーー!! 」」」

 邪神の言葉は村人たちに絶大な権力を発揮した。狐の村長はもちろんのこと、吟遊詩人も太鼓の狼2人も地面に額を擦り付け、他の村人も——父と母も、村人全員が、夜空に降臨したソレに土下座した。

 水戸黄門の印籠的光景の中、項垂れなかったのは俺だけだ。

 おいお前ら騙されるな。あの邪神は文字通り越後のちりめん問屋に過ぎないのだと叫びたかったが、乳児の俺は「あうあー」としか言えない。

〈……わたしの泉を汲みなさい〉

 邪神は偉そうに言った。

〈すでに汲んだ者は争うな。あなたがたの水瓶は霊薬に変わっている。まだ汲めなかった者も争うな。カオスシェイド()の歌を讃えて、村の子らすべてに恵みを与えましょう……今夜に限り、わたしはこの泉を「星辰の霊薬」に変える〉

 それだけ告げると光り輝く邪神はふっと姿を消し、村は再び夜の闇に包まれたのだが、

「「「 ……星辰の、霊薬……!? 」」」

 先ほどの混乱の比ではない奪い合いが発生した。エルフの兄貴がポーションを作った時とは比べ物にならない。

「落ち着くのじゃ! 落ち着け!」

 義足の村長さんが叫んでいたが、もはや誰一人聞いてねえ。

「聞いたじゃろ? ファレシラ様は村の全員に霊薬を賜ると言った! 奪うな、無駄じゃ! やめろ冒険者ども! 全員に薬が与えられたのじゃ!」

 村の全員が村長を無視した。それも仕方が無いだろう。義足の老婆は「落ち着け」と言いつつ他人を押しのけて泉の水を汲み、我先にと飲んでいた。なかなか良い性格をしたババアだね。

「お、おお……!?」

 泉を飲んだ老狐は狼狽した声を上げ、自分の左足に手を当てた。

 義足をつけていた左足の肉がボコボコと煮立ったように盛り上がり、瞬きする間に伸びて、狐の老婆は失ったはずの自分の足を再生させた。

「…………諦めていた、わしの、足が…………!?」
「「「 マジで星辰の霊薬だ! 」」」

 村長のソレが引き金を引いた。

 村人たちの狂乱はいよいよ止まらなくなったし——エッ、うちの親ですか?

〈——むくろ細剣術:流浪の剣閃——〉
〈——怪盗術:巾着切り——〉
〈——怪盗術:毒の息——〉

 躊躇いもなく奪い合いに参加してたよ☆

 母は乳幼児の俺を抱えたまま〈怪盗術〉とやらを発揮して泉の水を奪い、遠慮なく剣技を発動してきた双子の兄に毒霧を浴びせた。さっき鑑定を終えたばかりの服屋の女性はパルテとかいう自分の赤子を泉に放り投げて幼い蝙蝠の子に霊薬を飲ませようとしたし、ルガウという名だったか、狼の少年は母親に怒鳴られながらヨタヨタと歩いて水瓶に霊薬を汲んだ。

 村人たちは泉を争って乱闘を始め、そんな喧騒に一匹の子猫が目を覚ます。

「……にゃ?」
〈——豚氏とんし八極拳はっきょくけん冲捶ちゅうすい——〉

 神々にミケと命名された三毛猫の子猫は母猫ポコニャの腕の中で目を覚ますと体を青白く発光させ、俺の視界に「八極拳」というスキル表示が浮かんだ。子猫はわずかに肘を動かし——周囲にいた大人数人が吹き飛ばされて気絶する。

 そんな乱闘の中、俺はひとり〈ホーム〉を念じていた。

 ——届いているとは思ったが、予想通りなのが悔しい。

 ホーム画面の〈手紙〉アプリには赤いバッジがついていて、開くと、邪神からのメッセージが表示された。メールを開いても時間は止まらなかった。

〈えっへっへー☆ 見てましたかカオス()さん♪ これこそが歌と星辰の女神たるわたしの威容……☆ ひと目見るなり村人たちがDO☆GE☆ZAしちゃうのが、超☆偉大なるファレシラ様の正体なのです♪〉

 ふざけろ邪神。おかげで両親が狂戦士だぜ? 父・ナンダカが細剣で村人を細切れにしてるし、母・ナサティヤは怪盗術とやらで他人が汲んだ水を奪ってるが。

〈まー、前置きはこのくらいにしましょう♪ オーク討伐はアクシノの手柄として、先ほどあなたが披露した歌は、わたしの枯れた心を癒やしてくれました。わたし、やっぱりカオスさん()を呼び出してよかった。この百年で一番の歌でしたよ☆〉

 急な称賛に俺は虚を突かれた。……なんなのこの感想文。嬉しいけど、だからこそ怖い。

〈あの裏切り者はケチンボで、滅多に歌を聞かせてくれませんでしたから〉

 女神はそんなわけのわからんメッセージを寄こし、その文の下には「NEXT」とあった。押してみる。

〈歌の女神として、カオスシェイド()に調速Lv3の加護スキルを与えましょう。〈修行アプリ〉が与えられるのはレベル3までのスキルですから、これでわたしとアクシノのスキルは修行アプリじゃ強化できなくなります。でも、そのぶんSPが2点もお得になりますよ♪〉

 文章を読んだ瞬間、脳内に叡智・アクシノの声が響く。

〈……だとさ。
 カオスシェイド()の調速スキルがLv3になりました。また、ウユギワ村を狂乱させる特異な歌を披露した功績を讃え、偉大なる歌の女神から7SPが与えられます〉

 母ナサティヤが怪盗の神ファイエモンの加護をフル活用して村人から星辰の霊薬を奪った。発揮したのは強盗系のスキルのようで、盗むと同時に対象へダメージを与えた。ドワーフを思わせるずんぐりとしたおっさんが白目を向いて気絶する。

「よっしゃ☆」

 怪盗の神に加護された母はドワーフから霊薬を奪うと血走った目で次のターゲットを探した。ファレシラの手紙にはまだ「NEXT」があり、俺は広場の混乱をよそに続きを読もうとして——後悔した。

〈というわけで勇者よ! 次のクエストだぞー♪〉

 一行目を見た瞬間に俺はスワイプしたが、それまで周囲から聞こえていた音が消えたのを感じて諦めた。メールアプリに戻る。

 再び時間が止まっていた。ステータス画面のMPが少しずつ減っている。悔しくて〈調速〉も発動した俺は、近くで壺を抱えたまま停止しているオッサンから霊薬を奪うのに成功したが……これがなんになる?

〈あら、あら……☆ そんなに怖がっちゃって♪〉

 仕方なく続きを読んでみると、邪神からの手紙は案の定うざかった。

〈安心してください☆〉

 ……ほほう、履いているのかい?

〈わたしは優しい女神様なので、カオス()に下す新たなクエストでは、無意味な脅迫はしませんよ♪ まぁしくじれば当然混沌さん()は抹殺ですけど、次の司令は、あなたの家族に類は及びません☆ そこはキチッと約束してあげます♪〉

 結局俺は死ぬのかよ! ——と思いつつ、俺はほっとしてしまった。失敗しても、今度は父や母は死なない……?

 メールを読み進めた俺は邪神に裏切られた。

〈あえて脅迫しなくても、混沌の影()がしくじれば、家族はみんな死んじゃいますから☆〉

 邪神のメールは「死の宣告」をしているというのに♪や☆が散りばめられていて、明るかった。

〈カオスシェイド(笑)よ。あなたに新たなクエストを課します。拒否することは許しませんし、あなたはそれをしなくてはいけない。

 今日から8歳の誕生日を迎えるまでに、ウユギワ村のダンジョンを攻略し、その最下層に潜むボスを撃破しなさい。

 トドメをあなたが刺す必要はありません。ですが、あなたは戦わなくてはいけない。

 拒否したいです? それならそれで構いませんよ。

 8歳になるその日までに撃破できなかった場合、あのダンジョンはスタンピードを引き起こし、迷宮から溢れ出た魔物は最寄りの村を壊滅させるでしょう。つまり、あなたの新しい故郷たるウユギワ村は滅びます。
 その時、あなたの勇敢な父ナンダカや母ナサティナは冒険者として魔物の群れに立ち向かうでしょうが……勝てません。ほぼ間違いなく戦死するでしょう。

 わたしの言葉を疑うのなら叡智アクシノに「鑑定」を願ってみなさい。アクシノもわたしと同じ神託をするはずです。

 仮にアクシノすら信用できないなら……その時は仕方ありません。これからの七年を自堕落に生きたら良いです。カオスさん()は8歳の誕生日にお線香を上げ、両親や村の友達の死に泣きながら迎えることになるでしょう。

 ——どうですニート? 悲劇を食い止めたいですか? 家族や仲間を助けたいです?

 それなら努々ゆめゆめ鍛錬することです♪ なにせ時間は7年もある☆

「ゼロ歳児にしてスキルを磨き始め、そしていくらか歳を取り——ついにその時ッ♪ 鍛え抜かれたスキルを披露して無双する……☆」

 ——いかにもテンプレ的でしょう?


 今回は期限まで7年もの時間があるのだし、とっとと了承ボタンを押しなさい。

 あなたの歌はとても楽しかったので、今なら追加のSPを差し上げましょう☆ 大事に使うことです♪


 ……なんの因果かわたしの土地に生まれ変わったカオス()さんが、この星での新たな人生を楽しめますように……♪〉


 メールの末尾には「クエスト了承」のボタンがあり、例によって「拒否する」というボタンは無かった。俺に拒否権は無いらしい。

 静止した時間の中で俺は1分ほど考え、他に答えが無いと諦める。


〈——ウユギワ村のカオスシェイドは、星と歌声の女神との間に新たな契約を結びました〉


 叡智アクシノの声と同時にステータス欄のSPが1だけ増えた。女神が言葉を続ける。

〈おいカオス、我らにはヒトの時間感覚はわからんが、警告してやる。8歳なんて——7年なんてあっという間だぞ?〉
(……知ってるよ)

 叡智の助言が脳内に響き、俺は素直に受け止めた。ていうか、「時間の速さ」は叡智より俺の方がよく知ってるんじゃないかな。

 俺は地球でクソみたいなニートだった。あえて言うなら時間を浪費することこそ仕事で、たった10年を3回繰り返すと30歳になる——そんな当たり前の事実に驚く程度に「時間」を浪費することが得意だった。そんな自分に吐き気を覚えていた。ずっと生き直したいと思ってた。

 ——知ってるよ、邪悪な女神ども。

 俺は、少なくとも若い両親やポコニャさんより「時間の価値」を知ってる。

 
「——ええい! いい加減に沈まれ、村の者!!」


 邪神の霊薬で片足を再生させたババアが叫んだが、俺は無視して〈修行アプリ〉を開いた。黒豚戦でレベルが9に増えたのもあり、〈鍛冶〉とか〈印地いんじ〉とか、新しいゲームが修行アプリの画面に並んでる。

 老いた狐のババアが言った。

「みんな霊薬は得たじゃろう? 酒も充分に飲んだじゃろ!? ~~~~祭りは終わりじゃ! みな、家に帰って寝ろいっ……!」

 婆さんには悪いが、ゼロ歳児はまだ眠れそうになかった。




——————————

作中の曲は有名ですが、ご存知なければこちらのYoutubeを参考にしてください:

https://www.youtube.com/watch?v=_frwpbDedn4

※外部サイトへのURLにはなりますが、リンク先は筆者と完全に無関係であり、利益を得ません。上記のアドレスは文字表現のみでは限界のある「音」を紹介するためだけに記したもので、規約違反にはならないはずだと考えています(問題があれば撤去します)。
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