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貴方の帰りをどれだけ待ち望んでいたのか
まだ起きてくれないの?
しおりを挟むあの後、執事さんがベッドを用意してくれた。いつの間にかそこにあった。雫は執事さんは仕事が出来る頼れる人だ、なんて言っていたのを泣いた目を擦りながら思い出す。
せっかく用意してくれたベッドを使う気にもなれずに、ずっと雫の存在を確かめるように傍に居続けた。不安で仕方なかった、何もする気になれなかった。そんな中、執事さんが買って来てくれたご飯も喉を通らなかった。
それでも疲労はくるものでいつの間にか寝てしまったらしい。窓の外は真っ暗で長い時間が経っていることを知らせた。執事さんの好意を無駄にするのは申し訳ないので雫を見ながら頑張ってお腹にいれた。ベッドも使わないと失礼だな、なんて思って入ったけど全然寝れない。それどころか恐くて震えが止まらなかった。だから、すぐに抜け出して雫のベッドの隣へと急いで来た。
夢だったら良かったのに。雫は元気に家に帰ってきて僕を沢山、甘やかしてくれるんだ。大好きって言ってくれて、僕もそれに応えるんだ。一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂も入ろう。入るの嫌がらないからさぁ、一緒に、洗いっこ、とかしたい。一緒に寝て、今日あったこと、話すんだ。
いつもみたいに、、、、、、、、
「しずくぅ、、、、ひっく、、、、うぅ、、、、っ」
静かに呼ぶ声にやっぱりいつもの声は聞こえてこなかった。
あの日から何回も太陽は登って沈んで、夜は過ぎても雫は目を覚まさない。何も出来ない自分が悔しい。初めの一週間くらいは雫の傍を離れずじっとしていたけど、学生の時よりは僕も成長したみたいだ。いや社会人として仕事しないといけないから、無理やり身体を動かしてるだけだけど。
執事さんに頼んで仕事道具を取ってきて貰った。だって僕、家の場所知らないし、雫から離れたくない。大人にもなって情けないとは思う。でも、思い出してすぐにこんな事になるなんて思わないし、精神が記憶にある学生の頃に引っ張られてるのかも。
休憩やご飯を食べる時は雫の顔を見ながら過ごした。もちろん包帯で顔を見えてなかったけど意識が戻ってないだけでも体は回復へと進んでいるので包帯はとれた。顔は見る限り怪我のあとも残ってなさそうで安心する。体の方はまだ包帯が取れていない。腕も足も折れてるのですぐには取れない。
「いつ、目を覚ますの?、、、、、早くしないと春が終わっちゃうよ、、、、、、、、」
―――――目を覚ませば、そこは知らない天井で起き上がろうとした時に痛みが走り何があったかを思い出す。そして、舞白さんが家で寂しく待っていることも思い出した。あぁ!?舞白さん!あぁ、どうしよ、心配してる絶対に!
何とか身体を動かすも起きれない。なんなら、お腹のあたりが重い。そう思って視線を向ければ、、、、
「舞白さん、、、、っ?!」
愛しの舞白さんがいるではないか?!どうしてここにいるんだ?部屋の外には舞白さんだけでは出れないはず、どうやって
人の気配を感じ、あぁ貴方が、と納得する。この人ならやりそうだな~
「お坊ちゃま、ご体調は如何ですか?」
「、、、、、あぁ、大丈夫だよ」
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