貴方のお嫁さんにはなりません!!!このばかぁ

白藍たんぽっぽ

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俺が舞白さんを裏切った話

舞白さんと出逢って関係が終わるまで

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 舞白さんとの出逢いは高校時代まで遡る。舞白さんは俺と出会ったことを覚えて居ないだろう。俺に興味が無い両親だが名だたる経営者で国内外問わず活躍するやり手だった。当然、息子の俺もそれを求められるわけで
 そんな日々に嫌気が差した中学生の俺は親に対する反抗心から夜の街で喧嘩を買って、友達と深夜遅くまでだべって、楽しんでいた。


 親のコネとお金、俺の僅かな学力が重要視され都内でも有名な私立高校へ進学した。その入学式の日。授業がなくほんとに入学式だけでも面倒くさくて抜け出した。桜が舞い散るとはよく言ったもので、雪でも降るかのように風が吹けば散っていった。ほんとにたまたまだったのかは分からない。
 ただ、人気がない場所で桜の木と花びらに囲まれ木の根元で汚れることも気にせずに地面に座り優雅に読書をする美しい人がいた。その場所だけは神聖さに溢れていた。俺は久しく感じることもなかった、胸の高鳴り、好奇心に運命を感じた。
 なんて綺麗な人なんだろう。可愛い
 そう思って見つめていたら


「あの、何、てか誰」

「え?」


 気づかないうちに近づいていたらしい。目の前に美しい綺麗な顔がある。ただ、残念なのは警戒心がMAXで綺麗な紺色の瞳は細められているため、めいいっぱい堪能できないけれど
 それもいっかと俺はこれまでにうんざりするほど顔が良いと自覚してきたので美しい人の隣に遠慮なく座った


「え、なんで座るの」

「嫌だった?」


 皆が惚れ惚れすると評判の笑顔とともにそう言い放つ。嫌悪感を一つも隠そうとしないその姿勢が俺にとっては新鮮で面白かった。これまでの経験があったから、美しい人からの言葉に酷く驚いた。


「嫌に決まってる。読書の邪魔されて、誰も来なくていい所だったのに、、、、、」


 そう言って、一回も振り返らずに俺の元を美しい人は立ち去って行った。俺は何故かショックを受けて動けなかった。今ならただ、好きな子に嫌われたかもという恐怖とただ立ち去られたことに純粋にショックを受けたからと分かる。



 自称友達や俺によくしてやったという自称先輩に聞いて、後に美しい人が柊舞白ひいらぎましろさんと言うのだと知った。

 
「舞白さん」
 

 多分、いや絶対に舞白さんは俺のことを始めは嫌っていた。初めて会った時に舞白さんが読んでいたのは大好きなBL作家さんの久しぶりの新作だったらしく、面倒臭い学校の唯一の癒し時間を邪魔されたからだと知った。
 何故、それを知っているかと言うと俺が舞白さんに猛烈にアタックしてアピールして何とか晴れて恋人になったのだ。
 俺の第一印象が悪かったのと、舞白さんが人間嫌いや人間不信などなどで俺の舞白さんへの愛を認めてくれなかったから恋人になったのは舞白さんと出逢った年の冬のことだった。


 俺と舞白さんは互いに初めてで、何回か夜を共にした。俺は家が嫌だったので学校近くに部屋を借りていたので舞白さんを俺の家に呼んでいた。ご飯やお風呂も一緒、寝起きも毎夜毎朝隣にいた。舞白さんは毎日のように来ていたのでご両親は心配しないのか聞いたら、僕に親は居ないよと。
 何処か遠くの何かを見ていて、俺は舞白さんが消えてしまいそうだったから小さな身体を抱きしめた。今は俺がいるねって言ったらさっきの悲しそうな顔は嘘のように笑顔になった。

 
 
 そんな舞白さんとの幸せな日々は長くは続かなくて、気づいたら知らない病院のベットの上だった。医者が言うには不良に絡まれて頭を強く打ったらしい。外傷も特になかった。ただ、少しだけ記憶喪失になっていたのだ。両親は外面を気にして母親と名乗る者だけが面会に来た。
 その人に会って心の奥底からわく嫌悪感とああ、親だなという謎の納得感。結局思い出せないまま、身体は無事だったので家に帰った。もちろん一人暮らしの家に。両親は特に心配はしてなかった。
 学校に行っても特に苦労はなかった。元々人に興味が無いし、舞白さんに出逢うまで俺は周りの人間なんてどうでもよかったからだ。そんな俺のずぼらさや無関心のせいで舞白さんを傷つけた


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