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3(sideひな)
しおりを挟む部屋に戻っていっぱい泣いた後、少しスッキリした俺はあーくんから自立することに決めた。
悲しいけど仕方ない、これもあーくんの幸せのためなんだって何回も自分に言い聞かせる。
最近あーくんは、部屋に戻ってくるのが遅いのもよかった。自分に言い訳する時間が取れたし。
今日、あーくんに「もう1人で大丈夫だからね」って言わなくちゃ。その為にいつもはあーくんがしてくれる晩御飯の用意を自分で頑張った。
スマホで簡単なレシピを調べて、あーくんの分も作った。親子丼とお味噌汁。意外とやれば出来るもんなんだなって思ったら少し誇らしかった。
帰ってきたあーくんは、目玉が落ちそうなぐらい目を見開いて驚いた。
「え!?これひなが作ってくれたの?」
「うん、そだよー、俺やれば出来たみたい!」
「すごいよ、ひな!ありがとう、嬉しい」
「あーくんがいつも作ってくれるからね、そのお礼だよ」
「そっかぁ、えー、嬉しいな」
にこにことホントに嬉しそうで、そそくさとスマホで親子丼の写真をパシャパシャ撮るあーくんを見てたら、さっきした決心がぐらぐらしてしまう。「ひなー、あー、かわいい!大好きひな、かわいい」ってついでに俺も入れてめちゃくちゃ撮るあーくんの蕩けそうな顔を見ると俺までにこにこしちゃった。
いっぱい頑張ったから、よしよししてコアラもして欲しい。でもダメだ、自立するって決めたんだし!
「あーくん、冷めちゃうはやくたべよ」
あーくんは美味しい美味しいって言って食べてくれて、2人で食器洗って、あーくんがミルクティーを入れてくれた。あーくんはコーヒー。大人だなぁ。
よし、言うぞ。
あれだけ決心したのに、いざあーくんを目の前にすると言いにくくなって、正面のあーくんを見れなかった。
「あーくん、あのね」
「うん」
「俺、あーくんから自立しようと思って」
「…………え?」
「いつまでも甘えてたら、あーくんに迷惑だなって思って」
マグカップを持つ手が、どうしてもモジモジしてしまう。
「俺がやりたくてしてる事なんだから、迷惑だなんて少しも思ったことないよ?」
「う、うん。でもね、あーくんもそのうち恋人とか作るでしょう?でも俺がベタベタしてたらそれも難しいのかなって……思って」
「……え?」
「あーくんは見た目も中身も最高だから、俺がいなかったらすぐに恋人出来るだろうし」
「……ひなは、俺のこともういらないの?」
「え?」
顔を上げてあーくんを見ると、あーくんは大粒の涙をボロボロと流して泣いていた。
「あーくん?」
あーくんが泣くのなんて、何年ぶりに見たのだろう。眉毛もぐっと下がって、瞬きの度に涙がボロボロと落ちていく。
「……やだ、捨てないで、ひな。嫌なとこあったんなら直すし、俺頑張るから、ね?嫌いにならないで?俺のこと捨てないでっ……」
俺の手を縋り付くようにギュッと握って、やだやだと言うあーくんに胸が痛くなった。
「あーくん?捨てるとか捨てないとかじゃないよ?だって、あーくんに恋人が出来ても、結婚しても、俺たちは大切な幼なじみでしょう?」
「……え?」
「え?」
大切な幼なじみでもなかった?
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