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クリスマスデート
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エール、お気に入り登録、しおりなどありがとうございます!
とても嬉しかったのでクリスマスの小話書きました!
楽しんで貰えたら嬉しいです。
────
それは冬の寒い日のこと。
「リシュアン様ー!」
かねてより交流のあった愛犬家の侯爵家へ遊びに来ているリシュアンとレヴィ。
レヴィが侯爵家の犬達と庭で走り回って遊んでいるのをリシュアンは暖かい部屋で温かい紅茶を飲みながら見守っていて、遠くで自分の名前を叫びながらぶんぶんと手を振るレヴィに笑顔で手を振り返した。
「ダルトンくんが来てくれるとウチの子達もとても嬉しそうです」
「こちらこそ、折角相談に乗ってもらったのに結局犬を飼うことが出来なくなって残念だったから……こうしてお邪魔させてもらって有難い」
「いやはや、残念ですなぁ……姫殿下が犬アレルギーだったとは」
「……そうだね」
勿論嘘である。
リシュアンは、相談に乗って貰ったのにいつまでたっても犬を飼わないのは怪しまれるだろうと思い『妹に犬アレルギーが発覚して飼えなくなった』という言い訳を侯爵にしていたのだった。
侯爵家の犬達に懐かれたレヴィは犬達の遊び相手として度々侯爵家に招かれており、来る度にああして犬達と走り回っている。
楽しそうなレヴィを見るとリシュアンとしても癒されるし、侯爵も楽しそうな犬達を見てニコニコと微笑んでいる。侯爵には伝えられないが、リシュアンは侯爵の事をこっそり愛犬家仲間だと思っていた。
「そういえばご存知ですか、殿下」
「ん?」
「この前家に来た商人の話では、北のノルランドでは今月の二十四日と二十五日には国をあげての『クリスマス』という行事が毎年行われるそうで」
「……ああ、神の誕生日と収穫を家族で集まって祝うんだったかな?」
「そうですそうです、それが最近では恋人同士でオシャレなレストランで食事をしたりプレゼントを贈り合うのが流行のようで、恋人達の一大イベントになっているそうですよ」
「へぇ」
「私も商人から妻へのプレゼントにと、それはもう熱心に宝石を勧められましたよ」
「そうなんだ、買ってあげたの?」
「ええ、日頃の感謝といいますか、この歳になるとプレゼントを贈るのも気恥しいもので……理由付けにもなりますし」
「ふふ、素敵じゃないか」
恋人たちの一大イベント。
そう聞くと興味が湧いてくる。
果たして自分とレヴィは恋人か、といわれたらどうなんだろう。という気がしないでもないが、リシュアンはレヴィを愛しているし、レヴィもリシュアンに毎日毎日好き好きと言ってくるのでその辺は大した問題では無いだろう。
リシュアンは侯爵からもう少し詳しく話を聞き、帰りの馬車でレヴィにその話を伝えた。
「……赤い服を着たおじいちゃんがプレゼントを?」
「そう、その一年いい子にしてたら朝起きたら枕元に置いてあるらしいよ。それかツリーっていう木の飾り付けの下に置いてあるらしい」
「……その夜の当番のやつは全員鍛え直しですね」
「え?」
「だってどんな手練かわかんないですけど、そんな簡単に侵入されて枕元にプレゼント?それがリシュアン様の寝室だって考えたら怖すぎますよ」
「……夢がないなぁ」
「そう言われたらそうなんですけど……」
リシュアンはレヴィの反応が意外であり、面白かった。リシュアンの想像の中のレヴィはもっとはしゃいだり『俺のとこにも来ますかね?いい子だねっていつもリシュアン様が言ってくださるので!!』ぐらいは言うと思っていた。
「ま、そのおじいちゃんが本当に存在してるなら俺のとこに来てないっていうのはおかしいです」
「なんで?」
「だっていつもリシュアン様は俺のこといい子って褒めてくれるので。そんないい子の俺のとこに来てないんなら他の奴のとこに来るわけないですよ」
言った。
想像よりはクールだったが、想像のレヴィと似た様な事を言った。謎の自信に満ち溢れた顔が先程の公爵家で見たフリスビーを上手くキャッチ出来た犬と同じ顔に見えた。
「そうだね、レヴィはいい子だもんね」
「そうです、俺はいい子です。リシュアン様が言うんだから俺はいい子です。そんな俺のところに来ないのはおかしい」
「う、うん」
最近感じていたが、レヴィはこういう所がある。
リシュアンに少し盲目的なのだ。少し……結構……とても?リシュアンが白を黒だと言えばきっと黒にしてしまうし、少しでも嫌いな人間が出てこようものならすぐ様喉に噛み付きそうな危なさである。
なのでリシュアンは、ある意味純粋なレヴィをあまりそういう皇族や貴族特有のドロドロした席には連れて行かない。そういうのも上手く立ち回り、操作してこその皇族だし、なんか、ややこしい。レヴィがいたら絶対ややこしくなりそう、いや、なる。
だがそれと同時に酷く安心してしまう。
レヴィは良くも悪くもリシュアンが全てでいてくれるのだ。そんなレヴィに恥ずかしくないような人間でありたい。
「じゃあ、クリスマスデートも出来ないね」
「え!?」
「え?好きじゃないんでしょう?イベント事」
「それとこれとは別です!!寝室に見知らぬ老人が侵入してくるのと、リシュアン様とデートしないのは別の問題です!やだ!します!クリスマスデート!!」
「そうなの?」
「そうです!しましょう!クリスマスデート!」
「ふーん、わかった、じゃあしようか」
「……!!やった!!!!リシュアン様大好き!」
さっきまで少しムスッとしていたのに、今は鼻歌でも歌い出しそうなぐらいニコニコするレヴィを見て、飼い主バカのリシュアンもつられてニコニコしてしまうのだった。
とても嬉しかったのでクリスマスの小話書きました!
楽しんで貰えたら嬉しいです。
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それは冬の寒い日のこと。
「リシュアン様ー!」
かねてより交流のあった愛犬家の侯爵家へ遊びに来ているリシュアンとレヴィ。
レヴィが侯爵家の犬達と庭で走り回って遊んでいるのをリシュアンは暖かい部屋で温かい紅茶を飲みながら見守っていて、遠くで自分の名前を叫びながらぶんぶんと手を振るレヴィに笑顔で手を振り返した。
「ダルトンくんが来てくれるとウチの子達もとても嬉しそうです」
「こちらこそ、折角相談に乗ってもらったのに結局犬を飼うことが出来なくなって残念だったから……こうしてお邪魔させてもらって有難い」
「いやはや、残念ですなぁ……姫殿下が犬アレルギーだったとは」
「……そうだね」
勿論嘘である。
リシュアンは、相談に乗って貰ったのにいつまでたっても犬を飼わないのは怪しまれるだろうと思い『妹に犬アレルギーが発覚して飼えなくなった』という言い訳を侯爵にしていたのだった。
侯爵家の犬達に懐かれたレヴィは犬達の遊び相手として度々侯爵家に招かれており、来る度にああして犬達と走り回っている。
楽しそうなレヴィを見るとリシュアンとしても癒されるし、侯爵も楽しそうな犬達を見てニコニコと微笑んでいる。侯爵には伝えられないが、リシュアンは侯爵の事をこっそり愛犬家仲間だと思っていた。
「そういえばご存知ですか、殿下」
「ん?」
「この前家に来た商人の話では、北のノルランドでは今月の二十四日と二十五日には国をあげての『クリスマス』という行事が毎年行われるそうで」
「……ああ、神の誕生日と収穫を家族で集まって祝うんだったかな?」
「そうですそうです、それが最近では恋人同士でオシャレなレストランで食事をしたりプレゼントを贈り合うのが流行のようで、恋人達の一大イベントになっているそうですよ」
「へぇ」
「私も商人から妻へのプレゼントにと、それはもう熱心に宝石を勧められましたよ」
「そうなんだ、買ってあげたの?」
「ええ、日頃の感謝といいますか、この歳になるとプレゼントを贈るのも気恥しいもので……理由付けにもなりますし」
「ふふ、素敵じゃないか」
恋人たちの一大イベント。
そう聞くと興味が湧いてくる。
果たして自分とレヴィは恋人か、といわれたらどうなんだろう。という気がしないでもないが、リシュアンはレヴィを愛しているし、レヴィもリシュアンに毎日毎日好き好きと言ってくるのでその辺は大した問題では無いだろう。
リシュアンは侯爵からもう少し詳しく話を聞き、帰りの馬車でレヴィにその話を伝えた。
「……赤い服を着たおじいちゃんがプレゼントを?」
「そう、その一年いい子にしてたら朝起きたら枕元に置いてあるらしいよ。それかツリーっていう木の飾り付けの下に置いてあるらしい」
「……その夜の当番のやつは全員鍛え直しですね」
「え?」
「だってどんな手練かわかんないですけど、そんな簡単に侵入されて枕元にプレゼント?それがリシュアン様の寝室だって考えたら怖すぎますよ」
「……夢がないなぁ」
「そう言われたらそうなんですけど……」
リシュアンはレヴィの反応が意外であり、面白かった。リシュアンの想像の中のレヴィはもっとはしゃいだり『俺のとこにも来ますかね?いい子だねっていつもリシュアン様が言ってくださるので!!』ぐらいは言うと思っていた。
「ま、そのおじいちゃんが本当に存在してるなら俺のとこに来てないっていうのはおかしいです」
「なんで?」
「だっていつもリシュアン様は俺のこといい子って褒めてくれるので。そんないい子の俺のとこに来てないんなら他の奴のとこに来るわけないですよ」
言った。
想像よりはクールだったが、想像のレヴィと似た様な事を言った。謎の自信に満ち溢れた顔が先程の公爵家で見たフリスビーを上手くキャッチ出来た犬と同じ顔に見えた。
「そうだね、レヴィはいい子だもんね」
「そうです、俺はいい子です。リシュアン様が言うんだから俺はいい子です。そんな俺のところに来ないのはおかしい」
「う、うん」
最近感じていたが、レヴィはこういう所がある。
リシュアンに少し盲目的なのだ。少し……結構……とても?リシュアンが白を黒だと言えばきっと黒にしてしまうし、少しでも嫌いな人間が出てこようものならすぐ様喉に噛み付きそうな危なさである。
なのでリシュアンは、ある意味純粋なレヴィをあまりそういう皇族や貴族特有のドロドロした席には連れて行かない。そういうのも上手く立ち回り、操作してこその皇族だし、なんか、ややこしい。レヴィがいたら絶対ややこしくなりそう、いや、なる。
だがそれと同時に酷く安心してしまう。
レヴィは良くも悪くもリシュアンが全てでいてくれるのだ。そんなレヴィに恥ずかしくないような人間でありたい。
「じゃあ、クリスマスデートも出来ないね」
「え!?」
「え?好きじゃないんでしょう?イベント事」
「それとこれとは別です!!寝室に見知らぬ老人が侵入してくるのと、リシュアン様とデートしないのは別の問題です!やだ!します!クリスマスデート!!」
「そうなの?」
「そうです!しましょう!クリスマスデート!」
「ふーん、わかった、じゃあしようか」
「……!!やった!!!!リシュアン様大好き!」
さっきまで少しムスッとしていたのに、今は鼻歌でも歌い出しそうなぐらいニコニコするレヴィを見て、飼い主バカのリシュアンもつられてニコニコしてしまうのだった。
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