貴方の犬にしてください

えびまる

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皇子様の犬について

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「俺、気付いちゃったんです」
「なにに?」

 翌朝レヴィは、騎士服に着替えながらしかめっ面でリシュアンの目の前に立った。
 リシュアンは本当は護衛騎士なんて役職は無いということがついにバレたのかとドキドキしつつも、ロイヤルスマイルを浮かべる。

「俺には休めって言うけど、リシュアン様こそ丸一日の休みなんて滅多にないって!」
「………………あぁ」
「『今日は急ぎのものはないよ』とか『今日は早く終われそうだよ』とか仰ることはあっても、朝から夜までゆっくりする事なんてないじゃないですか!」
「それ、俺のモノマネ?……でも、まぁ、そうだねぇ。家が職場なんだし、俺は皇族だしねぇ」
「だめです!そんなの!」

 ぷんぷんとレヴィは怒っているが、物心ついてからずっとこんな感じの生活のリシュアンはあまりピンと来なかった。

「休み……ねぇ……」
「リシュアン様が休まないんだったら俺も休みませんからね!もう決まりました!」
「それとこれとは別というか」
「別じゃありません!」

 んー、と困った顔をするリシュアンとぷんぷんのレヴィの睨み合いはしばらく続いたが、そのうちレヴィの目がうるうるし出すのを見てリシュアンはしまった、と思った。
 この顔は色んな意味で苦手だ。

「俺はリシュアン様が心配なのに……リシュアン様が倒れちゃったりしたら生きて行けません……」

 そんな大袈裟な……と思ったが、あの祭壇を見てしまった後では大袈裟でも無いような気になっていた。
 確かにそうだ。かわいい犬が病気になったりしたら飼い主だって辛い。逆もまた然りなのだろう。

「わかった……月に一度ぐらいは丸一日休むよ」
「週に一回!!」
「えぇ?」
「リシュアン様、元々そんなに仕事溜めないでしょ!」
「でも次から次に溜まっていくから……」
「週に一回ぐらい休んだってそんなに変わりません!誰かは絶対いるんだし、緊急なら呼びに来ます!」
「……たし、かに?そう?なの?かな……」
「そうです!!んでリシュアン様がお休みの日は俺もおやすみです!!だから365日リシュアン様に張り付きます!!」

 結局言いたかったのは最後の一言なのだろう、レヴィは怒ったふりをしつつ、少しニヤニヤしそうになっていた。

「…………」
「だめ……ですか?」

 何も言ってくれないリシュアンに、レヴィは調子に乗り過ぎたかな……とどんどん不安になっていく。
 目にどんどん涙を溜めて、もう少しで溢れる……!という所でリシュアンは口を開いた。

「……わかった。週に一回ね。調整してみる」
「やぁぁったああ!!!リシュアン様大好きっ!好き好き!さすがご主人様!だぁいすき!!」

 リシュアンは渋々、といった感じだったが、飛びかからんばかりの勢いで喜ぶレヴィを見ていたら、まぁがんばればいいか……という気持ちになっていた。
 その場でぴょんぴょんしていたレヴィは、我慢出来なかったのかぎゅうっとリシュアンに抱きついて顔中にキスをしだした。

 その後『お休みの日にリシュアン様としたいことリスト』と文字がびっしり書かれた紙をレヴィから提出されたリシュアンが、感動で泣きそうになるのを見たレヴィが泣き出すのが五時間後の話。

 皇子様の犬は、365日皇子様と一緒にいられるのが幸せで、皇子様もそんな犬の事が愛しくて仕方がないのでした。

 
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