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婚約のご挨拶に行く話
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しおりを挟むさて、邪魔者はいなくなった。とばかりに膝の上でご機嫌なルーカスの頭を撫でながらニコラスはふと口にした。
「……心の準備する前に来ちゃったな」
「ああ、伝達魔法を飛ばした。だがまさかあんなに早く来るとは思わなかった」
「お兄さん、いつもあんな感じ?」
「……過保護で厳格で口うるさい……だがあんなにレイ兄様に甘えているとは知らなかった」
「そうなのか?」
「僕は部屋にいる事が多く、歳も下だ。たまに遊んでくれる事はあっても、二人でいる所をずっと見てきた訳では無い。まあ、あの二人は幼い頃から二人でいるしああやってお互い支え合っているのだろう」
そうルーカスに言われて、ニコラスは自分に置き換えてみたものの幼なじみだといえどあんな感じになるのかは疑問だった。
近所の子ども達と遊んだり時には殴り合いの喧嘩になったり。女の子には手を出した事はないけど。
……だが義兄達の薮は下手につつかない方がいい。出てくるのが蛇で済まなさそうだから。
ルーカスはいそいそと向きを変えて、何かを思案しているニコラスの顔を見た。
襟足が少し長めで首筋に流れている榛色の髪、いつも真っ直ぐ前を向いている黄緑のペリドットの様な瞳。その上にある髪と同じ榛色のキリッとした眉。
誰にでも優しくて、面倒見がよく、人当たりもいい。
そんなニコラスがセックスの時には少し意地悪になるのを知っているのは、自分しかいない。
でもやっぱり優しくて、子宮を勝手に作るほど一方的な思いを持ったルーカスの体をとても心配してくれた。
心と体を通わせた今、前よりどんどん好きになっている。暖かくて切なくて、色々なものがどんどん溢れてくる。
「苦しい」
「え?胸か?どうした、大丈夫か?」
眉を八の字に下げながら背中を摩ってくれる。
そんなニコラスにぎゅうっと抱きついて「君が好き過ぎて胸が苦しい」と言った。
ニコラスは少し笑ってぎゅうっと抱き締め返してくれる。本当は一つだったのに、間違えて分裂して生まれてしまったんじゃないか、と思えるほど体がフィットした。これが正しい形で、これこそが幸せの形なんじゃないか、と思った。
「こっちむいて」
その声に再びニコラスの顔を見ると、唇が重なった。
角度を変え、優しく唇を何度も食まれると、ぬるんと舌が入ってきた。
昨日から何度もキスをして、バレてしまった敏感な部分をねぶられる。最後に舌を甘噛みされ、ぴくんと腰が跳ねてしまった。
「はは、とろとろでかわいい」
「ん♡」
やっぱりニコラスが好きだなと思った。
――――
その夜、ニコラスの出した手紙の返事がすぐさま返ってきた。『明日にでもタウンハウスに帰ってこい』という内容で、家族が色めき立っている様がありありと想像出来た。
面倒くささが凄いが、嫌なことはさっさと済ますに限る。
「ルゥ、明日時間ある?」
「ある」
「ほんとかよ」
「君より優先すべき事なんてなにもない」
「あ、ありがとう。明日良かったら一緒に実家に行って欲しい」
「……!もちろん!ニコの御家族に気に入って貰えるよう、努力する」
「………………うん」
とてつもなく不安でとてつもなく緊張してきた。
ルーカスが昼間のようにペラペラ話し出したらややこしくなる事間違いなしだ。
「……明日なんだけど、説明は俺に任せてくれるか?ルゥは隣で黙って俺の手を握ってて欲しい……不安だから(色々と)」
「君もそんな事があるのか……わかった。僕で良ければ支えになるよ」
「う、うん……ありがとうな」
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