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本編
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しおりを挟むさて明日から週末だ!という金曜日の夜。
ふとベッドが揺れたような気がして目を覚ますと、視界いっぱいに同室の男の顔が広がっていた。
これ、押し倒されて……?
「……君のザーメンを僕のおまんこの中いっぱいにして孕ませて欲しい」
「はい?」
「……すまない、分かりにくかっただろうか……僕は話すのが得意ではないから」
「いや、そういう事じゃなくて……」
「では、聞こえづらかったか……君の、おちんぽを、僕の、おまんこに、入れて、いっぱい突いて、ザーメンで、僕の雄子宮を、ぱんぱんにしてほしい、僕の、おまんこを、君の、形にして、わからせてほしい」
「ちょ……っと、床に正座しようか」
「……?」
わからせるってなに?
――――
ルセルトリ王立学園三年、ニコラス・ノーランドは、きょとんとした顔のまま正座でこちらを見上げてくる、三年間学園寮で同室の男ルーカス・ブラックモアを見つめていた。
とりあえず座らせたはいいものの、何から話せば……
ルセルトリ王立学園は、ルセルトリ王国の貴族ならば誰もが通ったことのあるであろう、王国建国当時に作られた学園で、貴族令息、令嬢、才ある平民などが通う学園だった。
ニコラス自身は伯爵家の跡取りとして日々勤しんでいる。本人は机に向かうより剣を振るう方が得意なのだが、何事もやっておいて損は無いと前向きに学園生活を楽しんでいた。
そして、目の前のルーカスはブラックモア公爵家次男。
魔術に関して右に出る者はいないと言われている程の実力で、一般的な人間が扱えるのが一つの属性だけなのに対して、ルーカスは光以外の全属性が扱えるという。
腰まで伸びた漆黒の髪は魔力量が多い証で、魔術を使用する時にキラキラと煌めく金色の瞳はニコラスも気に入っていた。
公爵家という身分と、無表情で寡黙なため近寄り難いらしく、あまり誰かといる所は見たことがない。
しかも影で『魔王様』と呼ばれている。
結構かわいいのになぁ、とニコラスは思っている。
「あー、どうしてそういう事になったのか教えてくれる?」
「悩んでいた僕に第二王子殿下がアドバイスを下さって、僕なりに勉強した」
「勉強?」
「あぁ、この図書館で借りた『幼妻♂は発情期?!大好きな旦那様と妊娠確定!?イチャイチャらぶはめセックス』という書物で」
「学園の図書館に置いたらダメなやつ……!」
「これではダメだっただろうか……だが、何度も読み返してもう覚えてしまっている……やはりその横にあった『未亡人レイラは義兄の性奴隷』の方がよかっただろうか……それとも『サキュバスのお仕事♡特別編白濁汁まみれパーティ』……?」
「いや、俺はいちゃらぶ派だけど……て違う!なんで官能小説しばり?もっとあっただろ!?てか有害図書ありすぎ!図書委員仕事しろや」
「はぁ」とため息をついたニコラスは、わかりにくくおどおどとしているルーカスを見ると、硬い床は可哀想だな、という気になってベッドに座らせてあげることにした。
「ルーカス、悩みがあったのか?」
「……あぁ」
「俺に言ってくれたらよかったのに……全然気づかなかった。ごめん……」
「いや、何故だか君には言ってはいけないという感じがしたから……」
「え?俺の事で悩んでたの?」
「そう、だ」
「……なんかした?」
「……」
隣に座り顔を覗き込むと、金色の瞳はゆらゆらと揺れ、唇は普段よりも更に真横に結ばれていた。
「ルーカス……」
「……君が、なにかした……というよりは、僕が……」
「うん」
「……」
普段口数が多くない分、考えが口から出ないのか、何回も口を開いたり閉じたりを繰り返す。
ニコラスは、そんなルーカスの背中を優しく摩り、急かすことなくじっと待った。
「僕、がおかしいんだ……君を前にすると、心拍数が上がって胸が苦しくなって、何時もより更に上手く話せなくなる。君が察してくれるのをいいことに、甘えてしまっていた」
「う、ん……?」
「君がこの部屋に帰ってくると嬉しくて、逆に僕が帰ってきた時に、おかえりと出迎えてくれるのも嬉しくて。もう外に出なければいいのにと思ったり、君に笑顔で話しかけられるともう死んでも良いとさえ思ったり……」
「……」
「君に気軽に話しかける奴らが羨ましくて、殺してしまいたくなる……つまり、君の事になると僕は感情がコントロール出来なくなるんだ……こんな事は今までなくておかしい、と思って」
「……それ、で、第二王子殿下に相談を?」
「殿下は従兄弟で、兄と仲がいい。先日実家に帰った時にたまたまいらしていたんだ。小さい頃から僕の事も可愛がってくれていたから、僕の様子がおかしいのに気付いたんだと思う。家族には話しづらいだろうから……と」
「……殿下が家にたまたまいるなんて、さすが公爵家だな」
「僕が君を閉じ込めてしまいたい、足の腱を切ってしまったらどうだろうか、と話すと、切ってしまう前にロマンス小説などで学んでみたらどうか、と仰って下さって」
「……殿下、ナイスすぎる……でも、そっか」
いつもと変わらない表情なのに、その口から飛び出す言葉がいちいち少し怖い。
アシストしてくれた殿下には感謝しかなくて、一生誠心誠意お仕えしようと決めた。伯爵家では大した事は出来ないけども。
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