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【本編】
純也[※R18]
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私は、誰かの気配を感じて目を開けた。
ぼんやりとした視界に見慣れたコウヤの顔が映る。
「コウヤ……?」
コウヤは、いつもの優しい笑顔で、私にそっと口付けを落とす。
そのままベッドの上で服を脱がされて、私はコウヤにされるがまま身体を預けた。
(……ああ、なんだ。
コウヤなら、ここにいるじゃない。
全部、悪い夢だったんだわ…………)
コウヤが私の全身を舐めて、愛撫し、私を快楽の海へと連れて行ってくれる。
ピンポーン…………
玄関からインターホンの音が聞こえる。
途端、私は夢から現実へと引き戻された。
ベッドには、私が一人で寝ていて、部屋には他に誰の姿もない。
(ああ、こっちが現実だったのか…………)
夢に見る程、私はコウヤが…………という考えをすぐに打ち消すと、重い体を引きずって玄関へと向かう。
何故だろう、頭がガンガンする。
「はい………」
何も考えられず、玄関を開けると、そこに立っていたのは、純也だった。
「え……純也? なんで……」
「………~っ!」
純也が何か慌てた様子で口を開けている。
何かを喋っているようだが、何故だか私の耳には、まるで入ってこない。
音声のない映画を見ているような気分だ。
(あ……だめ、目眩が………)
私は、自分の体から力が抜けて倒れるのを感じた。
純也が私を支えようと手を伸ばす映像を最後に、私の意識は途絶えた。
次に私が目を覚ますと、再びベッドの中にいた。
仰向けになって寝ていたようだ。
額に、貼った覚えのない冷えピタが貼られている。
(あれ、私どうしたんだっけ………)
何だか嫌な夢を見ていたような気がする。
「目が覚めたか?」
声がした方を向くと、そこに純也がいた。
そう言えば、夢に純也が出てきたような気がしたが、あれは夢ではなかったのか。
それとも、今見ているこれも夢なのだろうか。
「突然、倒れるんだもんな。びっくりしたよ。
何か食べられそうか?」
純也の声が思いの他優しいので、私は毒気を抜かれて、素直に首を横に振った。
「そうか。冷蔵庫に栄養ドリンクとゼリーと、何か食べられそうなものを買って入れておいたから、食べられそうになったら食べてくれ。
あと、ドラッグストアで風邪薬と解熱剤も買っておいた。ほら、とりあえず、これ飲めるか?」
純也が私の前に錠剤と水の入ったコップを差し出してくれる。
どうやら私は、熱を出して倒れたらしい。
私が身体を起こそうとするのを純也が手伝ってくれる。
病気のせいか、純也に身体を触られても嫌な気持ちにはならなかった。
薬を飲んで、再びベッドに横になる。
「ありがとう。
えっと……純也は、どうして、ここに……?」
「ああ……お前とちゃんと、話をしようと思って来たんだ。
……ほら、この前のことも、謝りたかったし……。
でも、そんな状態じゃあな。……またにするよ」
純也が気まずい顔で頭をかく。
付き合っていた頃にもよく目にした仕草で、一瞬、昔に戻ったような錯覚がした。
「えっと……一人で大丈夫か?」
倦怠感と頭痛は頭痛は続いていたが、解熱剤を飲んだので、すぐに熱は下がるだろう。
私が大丈夫と答えると、純也は、ゆっくり身体を休めろ、と言って部屋を出て行った。
ドアの向こうで玄関の扉が閉まる音が聞こえた。
(純也………)
少しずつ記憶が戻ってくる。
玄関先で気を失った私を純也がベッドまで運んでけれたのだろう。
弱っているせいか、余計に純也の優しさが身に染みる。
それでも、私は…………
(これが、コウヤだったら良かったのにって、思ってる………)
布団を引き上げて顔を覆うと、嗚咽を堪えた。
喉の奥から冷たい液体が込み上げてくるような感覚がして、私の目尻から涙が横に零れた。
(ああ、私………コウヤのことが、好きなんだわ)
コウヤが居なくなってから気付くなんて、私は、本当に大馬鹿者だ。
今更、もう遅い。
コウヤはもう、居なくなってしまったというのに――――。
ぼんやりとした視界に見慣れたコウヤの顔が映る。
「コウヤ……?」
コウヤは、いつもの優しい笑顔で、私にそっと口付けを落とす。
そのままベッドの上で服を脱がされて、私はコウヤにされるがまま身体を預けた。
(……ああ、なんだ。
コウヤなら、ここにいるじゃない。
全部、悪い夢だったんだわ…………)
コウヤが私の全身を舐めて、愛撫し、私を快楽の海へと連れて行ってくれる。
ピンポーン…………
玄関からインターホンの音が聞こえる。
途端、私は夢から現実へと引き戻された。
ベッドには、私が一人で寝ていて、部屋には他に誰の姿もない。
(ああ、こっちが現実だったのか…………)
夢に見る程、私はコウヤが…………という考えをすぐに打ち消すと、重い体を引きずって玄関へと向かう。
何故だろう、頭がガンガンする。
「はい………」
何も考えられず、玄関を開けると、そこに立っていたのは、純也だった。
「え……純也? なんで……」
「………~っ!」
純也が何か慌てた様子で口を開けている。
何かを喋っているようだが、何故だか私の耳には、まるで入ってこない。
音声のない映画を見ているような気分だ。
(あ……だめ、目眩が………)
私は、自分の体から力が抜けて倒れるのを感じた。
純也が私を支えようと手を伸ばす映像を最後に、私の意識は途絶えた。
次に私が目を覚ますと、再びベッドの中にいた。
仰向けになって寝ていたようだ。
額に、貼った覚えのない冷えピタが貼られている。
(あれ、私どうしたんだっけ………)
何だか嫌な夢を見ていたような気がする。
「目が覚めたか?」
声がした方を向くと、そこに純也がいた。
そう言えば、夢に純也が出てきたような気がしたが、あれは夢ではなかったのか。
それとも、今見ているこれも夢なのだろうか。
「突然、倒れるんだもんな。びっくりしたよ。
何か食べられそうか?」
純也の声が思いの他優しいので、私は毒気を抜かれて、素直に首を横に振った。
「そうか。冷蔵庫に栄養ドリンクとゼリーと、何か食べられそうなものを買って入れておいたから、食べられそうになったら食べてくれ。
あと、ドラッグストアで風邪薬と解熱剤も買っておいた。ほら、とりあえず、これ飲めるか?」
純也が私の前に錠剤と水の入ったコップを差し出してくれる。
どうやら私は、熱を出して倒れたらしい。
私が身体を起こそうとするのを純也が手伝ってくれる。
病気のせいか、純也に身体を触られても嫌な気持ちにはならなかった。
薬を飲んで、再びベッドに横になる。
「ありがとう。
えっと……純也は、どうして、ここに……?」
「ああ……お前とちゃんと、話をしようと思って来たんだ。
……ほら、この前のことも、謝りたかったし……。
でも、そんな状態じゃあな。……またにするよ」
純也が気まずい顔で頭をかく。
付き合っていた頃にもよく目にした仕草で、一瞬、昔に戻ったような錯覚がした。
「えっと……一人で大丈夫か?」
倦怠感と頭痛は頭痛は続いていたが、解熱剤を飲んだので、すぐに熱は下がるだろう。
私が大丈夫と答えると、純也は、ゆっくり身体を休めろ、と言って部屋を出て行った。
ドアの向こうで玄関の扉が閉まる音が聞こえた。
(純也………)
少しずつ記憶が戻ってくる。
玄関先で気を失った私を純也がベッドまで運んでけれたのだろう。
弱っているせいか、余計に純也の優しさが身に染みる。
それでも、私は…………
(これが、コウヤだったら良かったのにって、思ってる………)
布団を引き上げて顔を覆うと、嗚咽を堪えた。
喉の奥から冷たい液体が込み上げてくるような感覚がして、私の目尻から涙が横に零れた。
(ああ、私………コウヤのことが、好きなんだわ)
コウヤが居なくなってから気付くなんて、私は、本当に大馬鹿者だ。
今更、もう遅い。
コウヤはもう、居なくなってしまったというのに――――。
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