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プロローグ

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お腹が空いているだろうと思い、私は、近所にあるコンビニでドッグフートを買って来た。
でも、犬は、鼻を鳴らして、食べようとしない。

「え~、せっかく買って来たのに……食欲がないのかしら」

見たところ外傷もなく、歩行にも問題はない。
とりあえず、お水だけは飲んでくれたので、少し安心する。

「それとも、ケチって、安いドッグフードにしたから?」

だとすると、口の肥えた犬だ。
首輪はしていないようだが、お金持ちの家で飼われていたのかもしれない。

最近は、マイクロチップを首の後ろに入れて、首輪をつけない飼い主も多いのだと、
職場の後輩が話していたのを思い出す。
もしそうなら、保健所に連れて行けば、調べてもらえるだろう。

「保健所かぁ……やっぱり連れて行かなきゃダメだよね。
 でも、もし飼い主が見つからなかったら……」

引き取り手のいない犬を保健所が面倒を見てくれる筈がない。
そうなった時のことを考えると、保健所へ連れて行くのは躊躇われた。

「でも、お前のこと探している人がいるかもしれないものね。
 やっぱり明日、連れて行こう」

犬が首を傾げて、私を見上げた。
黒と白の毛に、所々、赤茶色の斑模様が入り交じった不思議な毛色をしている。
鼻先の通った凛々しい顔。

「お前、イケメンねぇ。
 人間だったら、きっとモテモテよ」

薄緑色とも黄緑色とも見える円らな瞳が私をじっと見つめている。
まるで、私の言葉を理解しているかのようだ。

「それに……とっても綺麗で、澄んだ目をしているのね」

私は、犬の首筋を撫でてやった。
すると、犬は、嬉しかったのか、私の手の甲を舐めた。

ちょうどその時、電子レンジがチンと鳴った。
さっきコンビニで買ってきたカレーライスを温めていたのだ。

「あーもうお腹ぺこぺこ。
 さっさと食べて、早く寝よう~」

私は、電子レンジからカレーライスを取り出して、机の上に置いた。
蓋を開けると、スパイスのいい香りが私の食欲をそそる。

「あ、そう言えば、福神漬けがまだあったっけ」

私は、先日スーパーで買ったおいた福神漬けがまだ冷蔵庫に残っていたことを思い出し、冷蔵へ向かった。

そして、冷蔵庫から福神漬けを取って戻ってくると、
犬がカレーライスに顔を突っ込んでいた。

「きゃー!
 それは、食べちゃダメー!!」

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