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リアード=レジェンス 編
住宅街の天使
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これからどうしようかと考えた時、
私の耳に、子供たちの賑やかな笑い声が聞こえてきた。
(今の時間帯だと、住宅街へ行けば、ちょうど子供達が遊んでる時間ね。
みんなと会うのも久しぶりだし、一緒に遊んでこようかしら♪)
そう思って、住宅街へ足を運んでみたが、
子供たちの姿はなく、辺りはしんと静まり返っている。
(なんだか妙に静かね。
いつもなら子供達が道端で遊んでいるのに……)
その時ふいに、今日が何の日だったかを思い出した。
(そう言えば……今日は、私の誕生日だったわ。
この日だけは、お城の外に出た事がなかったから分からなかったけど、
私の誕生日を祝って、商店街に市が立つって、前に侍女たちが話してたっけ。
珍しい物がたくさん露店に並んで、大道芸人も来るとか……みんな、そっちへ遊びに出掛けているのかしら)
しばらくその辺りを歩いて回ってみたが、子供の姿どころか、話し声も聞こえない。
そろそろ諦めて、どこか他の場所へ行こう……と、私が思った時だった。
「ねぇ、そこの綺麗なお姉さん」
「……え?」
突然、背後から声を掛けられた。
驚いて振り向いた先には、一人の少年が立っていた。
(……天使、さま……?)
あまりの可愛さに、思わず感嘆の溜め息が出る。
先程まで誰もいなかった筈の場所に忽然と姿を現した少年。
それは、まるで天使が空から舞い降りてきたかのようだ。
「……お姉さんって、私のことかしら?」
辺りに私以外誰もいないのを確認してから尋ねると、
天使は、うん、と可愛らしく頷いた。
「ちょっと聞きたい事があるんだけど、いい?」
天使が首を少し傾げながら訊ねた。
その高くて甘い声は、砂糖菓子のようだ。
「いいわよ、私で解る事なら。
それで……何を聞きたいの?」
「この近くにね、エルマーニュ=コンフェスっていう貴族がいると思うんだけど……
僕、彼の家を探してるんだ。お姉さん、知ってたら教えてくれない?」
「エルマー……?
……えっと、もう一度言ってもらえる?」
「エルマーニュ=コンフェス。
この辺りに住んでるって聞いたんだけど……」
「エルマーニュ=コンフェス……?
うーん、どこかで聞いた事があるような……」
私が必死に思い出そうとするのを、
天使がじっと見つめて待っている。
「あっ、確か……この近くに大きな屋敷があったわ。
たぶんそこに住んでる人の事じゃないかしら」
「お姉さん知ってるの?」
「ええ。
良かったら、そこまで案内しましょうか?」
「本当? 嬉しいなぁ♪
そうしてもらえると、すごく助かるよ」
天使の満面の笑顔に、私は、見事にノックアウトされた。
「実はね、僕、道に迷っちゃって……
道を聞こうにも誰もいないし、すごく心細かったんだ」
天使は、不安げな表情をして見せたが、すぐにぱっと顔を輝かせて私を見つめた。
「でも、お姉さんが優しい人で良かった~。
案内までしてもらえるなんて思ってなかったからさ。
ありがとね、お姉さん♪」
(うっ……こ、この子……可愛い過ぎるっ!!)
こうして私は、天使のように可愛い少年と住宅街を歩きだした。
私の耳に、子供たちの賑やかな笑い声が聞こえてきた。
(今の時間帯だと、住宅街へ行けば、ちょうど子供達が遊んでる時間ね。
みんなと会うのも久しぶりだし、一緒に遊んでこようかしら♪)
そう思って、住宅街へ足を運んでみたが、
子供たちの姿はなく、辺りはしんと静まり返っている。
(なんだか妙に静かね。
いつもなら子供達が道端で遊んでいるのに……)
その時ふいに、今日が何の日だったかを思い出した。
(そう言えば……今日は、私の誕生日だったわ。
この日だけは、お城の外に出た事がなかったから分からなかったけど、
私の誕生日を祝って、商店街に市が立つって、前に侍女たちが話してたっけ。
珍しい物がたくさん露店に並んで、大道芸人も来るとか……みんな、そっちへ遊びに出掛けているのかしら)
しばらくその辺りを歩いて回ってみたが、子供の姿どころか、話し声も聞こえない。
そろそろ諦めて、どこか他の場所へ行こう……と、私が思った時だった。
「ねぇ、そこの綺麗なお姉さん」
「……え?」
突然、背後から声を掛けられた。
驚いて振り向いた先には、一人の少年が立っていた。
(……天使、さま……?)
あまりの可愛さに、思わず感嘆の溜め息が出る。
先程まで誰もいなかった筈の場所に忽然と姿を現した少年。
それは、まるで天使が空から舞い降りてきたかのようだ。
「……お姉さんって、私のことかしら?」
辺りに私以外誰もいないのを確認してから尋ねると、
天使は、うん、と可愛らしく頷いた。
「ちょっと聞きたい事があるんだけど、いい?」
天使が首を少し傾げながら訊ねた。
その高くて甘い声は、砂糖菓子のようだ。
「いいわよ、私で解る事なら。
それで……何を聞きたいの?」
「この近くにね、エルマーニュ=コンフェスっていう貴族がいると思うんだけど……
僕、彼の家を探してるんだ。お姉さん、知ってたら教えてくれない?」
「エルマー……?
……えっと、もう一度言ってもらえる?」
「エルマーニュ=コンフェス。
この辺りに住んでるって聞いたんだけど……」
「エルマーニュ=コンフェス……?
うーん、どこかで聞いた事があるような……」
私が必死に思い出そうとするのを、
天使がじっと見つめて待っている。
「あっ、確か……この近くに大きな屋敷があったわ。
たぶんそこに住んでる人の事じゃないかしら」
「お姉さん知ってるの?」
「ええ。
良かったら、そこまで案内しましょうか?」
「本当? 嬉しいなぁ♪
そうしてもらえると、すごく助かるよ」
天使の満面の笑顔に、私は、見事にノックアウトされた。
「実はね、僕、道に迷っちゃって……
道を聞こうにも誰もいないし、すごく心細かったんだ」
天使は、不安げな表情をして見せたが、すぐにぱっと顔を輝かせて私を見つめた。
「でも、お姉さんが優しい人で良かった~。
案内までしてもらえるなんて思ってなかったからさ。
ありがとね、お姉さん♪」
(うっ……こ、この子……可愛い過ぎるっ!!)
こうして私は、天使のように可愛い少年と住宅街を歩きだした。
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