私の王子様~アイリス姫と8人の王子~【ルカ編】

風雅ありす

文字の大きさ
26 / 41
ルカ=セルビアン 編

白い謎の男<再来>

しおりを挟む
このままでは、ルカの体力が持たないのでは……と、私が不安に駆られた時、
ルカが夜盗たちにまで聞こえる声で、盛大な溜め息を吐いて見せた。

「……警告にも気づかない、か。あとで後悔するなよ」

そう言って、持っていた剣を握り直す。
夜盗の一人が嘲るように笑った。

「ふん、何のことだ。後悔するのは……お前の方だろっ!」

そう言って、男がルカ目掛けて迫りくると、頭上高くから長剣を振りかざした。
しかし、ルカは微動だにしない。

(危ないっ)

私は、思わず目を瞑った。
暗闇の中で、私の耳に、剣が弾かれる高い音と、男の悶絶するような声が聞こえた。

「ぐぅっ……!」

私は、驚いて目を開けた。
そこには、腹部から血を流して倒れている男と、それを青い顔で見つめる夜盗たちの顔があった。
倒れている男は、先程、ルカに向かって剣を向けていた男だ。
ルカは、血に塗れた剣を振って血を払うと、再び剣を構えた。

(ルカがやったの……?)

血を流して倒れている男は、微動だにしない。
死んでいるのだろうか。
私が茫然とそれを見ていたら、ルカがこちらを振り向かないまま言った。

「目を瞑っていろ。……すぐに終わる」

その言葉に逆上した夜盗たちは、闘志を再熱させると、一斉に剣を手にルカ目掛けて襲いかかった。
しかし、今度は、ルカの容赦ない反撃に、一人、また一人……と、血を流しながら倒れていく。

(……これで5人…………す、すごい。
 ルカが強いのは知ってたけど……
 こんなに間近で、それも実戦なんて、見た事なかったもの)

私は、ルカに目を瞑っていろと言われたことも忘れて、目の前に繰り広げられている光景から目が離せなかった。

ルカは、敵の攻撃を剣で受け流すと、今度は剣を払い落とすだけでなく、確実に相手の急所を狙って反撃を続けた。
暗い所為で、赤い筈の血飛沫が黒い何かの液体にしか見えず、不快感はあまり感じなかったが、
ルカの前に倒れる男たちの数が増えるに従い、
周囲に血の匂いが充満した。

(……8人……10人……12……)

私は、倒れていく男たちの数を数えることで、冷静さを保とうとした。

「くっそー……こいつ、何でこんなに強いんだ。
 こんな話、聞いてねぇぞ!」

ついには、20人以上はいた夜盗たちが、立っているのは、たった3人きりとなった。

(……本当に、すごい。
 この国で、剣でルカに適う人なんて、本当にいないんだわ)

私は、改めてルカのすごさを知った。
信じていなかったわけではないが、少しでも不安に思ってしまったことがルカに申し訳ない。

ルカは、真っ黒な液体に汚れた剣を自分のマントで拭うと、残った3人の夜盗へ剣先を向けた。

「お前らの敗因は、己の力量と、相手の力量を見極められなかったことだ」

夜盗たちは、その表情に明らかな恐怖の色を浮かべてルカを見ていた。
手には剣を持ち続けているが、無意識の恐怖から手が震え、逃げ腰になっている。

これなら勝てる、と私が確信した時、
ふと背後から近づく白い影に私は、気が付かなかった。
突然、背後から白い腕が伸びてきて、私の視界に入ったと思ったら、
気が付くと私は、何者かに羽交い絞めにされていた。

「……え、きゃっ!」

「アリス?」

ルカが私の声に振り返った。
慌てて私の方へ駆け寄ろうとしたが、
私の背後にいる人物の次の言葉で動きを止める。

「動くな。大事なお姫様の顔に傷が付いてもいいのか?」

その声に私は聞き覚えがあった。
昨夜、私を殺そうとしていた白い謎の男だ。

私の首筋に、ひんやりと冷たい金属が触れるのがわかった。
どうやら刃物を突き付けられているようだ。

「……る、ルカ」

「きさまっ……! アリスを離せ!」

ルカが鬼のような形相で私の背後にいる人物を睨みつける。
でも、私を人質に取られているので、動くことができない。

「このお姫様がそんなに大事か。
 ……なら、態度で示せ」

どういう意味かと私が目線を背後にやろうとすると、
白い男は、私を拘束している腕に力を入れて、無理やり私を前に向かせた。

「あんたは、よく見ているといい。
 あの男の忠誠心とやらが、どの程度のものなのか。
 そして……」

白い男が私の耳元で囁くのと同時に、
ルカの周りを、残った夜盗の3人が取り囲む。
先程までの劣勢を忘れて、勝ち誇ったような顔で剣を構えた。

「あんたのために、忠誠心を持った兵が一人、死ぬところを
 しっかり目に焼き付けておくんだ」

私は、耳から血の気が引いて行く音が聞こえた。

「ひ、卑怯者っ! ルカは……ルカは関係ないでしょう。
 私を連れて行きたいのなら、連れていけばいい!」

「アリス!」

ルカは、余計なことを言うな、とでも言うように、私に向かって無言で首を横に振る。

「剣を捨てろ」

白い男の言葉は、ルカへの死刑宣告のように聞こえた。
ルカは、持っていた剣を遠くへ投げ捨てる。

(どうしよう、このままじゃ……ルカが殺されちゃう)

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参
恋愛
ブラック企業から辺境伯夫人アナスタシアとして転生した私は、愛する完璧な夫マクナル様と溺愛の新婚生活を送っていた。私は前世の「合理的常識」と「科学知識」を駆使し、元公爵令嬢ローナのあらゆる悪意を打ち破り、彼女を辺境の落ちぶれた貴族の元へ追放した。 第一の試練を乗り越えた辺境伯領は、私の導入した投資戦略とシンプルな経営手法により、瞬く間に王国一の経済力を確立する。この成功は、王都の中央貴族、特に王弟公爵とその腹心である奸猾な財務大臣の強烈な嫉妬と警戒を引き寄せる。彼らは、辺境伯領の富を「危険な独立勢力」と見なし、マクナル様を王都へ召喚し、アナスタシアを孤立させる第二の試練を仕掛けてきた。 夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。 第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。 最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……

処理中です...