おじさまと私

コーヒー

秀次に言われて梨子は間抜けな声で言った。
「コーヒーは嫌いかな？」
「えっ！あ、飲みます…」
ふと、梨子はアトマイザーのことを思い出した。そうすると、気が済まなくなってきた。
「長門さん、アトマイザーのお礼をさせてください！」
「お礼だなんて…」
「なんだか気が済まなくて」
「ありがとう。お礼を受け取りますね」
梨子は秀次の行きつけである喫茶店に向かった。路地裏の喫茶店だ。
秀次がドアを開ける。
店に入るとマスターがカウンター席で新聞を広げていた。
秀次がマスターに声をかけた。
「マスター、テーブル席に2人」
「秀次さん、デートかい？」
マスターは新聞に目を落としたまま、ぶっきらぼうに言った。
「そうだよ。マスター」
「はいはい」
梨子はその言葉に顔を赤らめた。
秀次は店の奥のテーブル席に梨子を案内した。
席に着いた梨子は秀次の顔が見れなかった。
気持ちが高ぶっていた。
秀次と居たいと思った。それは恋とか愛とかそういう類のものに違いなかった。
梨子の心は秀次に傾いている。