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その18 シスターバアさん登場!

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「テルサン!大体の事は、理解した。が、なぜ、よりにもよって、ヤロー同士をくっつけまくったりしてるんだ!?純粋にセックスの楽しみを得たいなら、男女のカップルでも良いんじゃあねぇか!?」

クリフの言葉に、テルサンの幻影は、涙を流しつつ答えて言った。
 
「……我も清らかな教えを得て、生前をずっと過ごしていたシスターだ。プライドというものがある!それゆえ、男同士にしたのだ。男同士なら子供ができない関係なんで、神も我を許してくれると、そう思うてな。」

テルサンの身勝手な言葉に、クリフの中から、怒りが突き上げてくる。
 
「男同士、女同士って関係ねぇーだろ!?今、おめぇのせいで、都中の、特に女の子たちが泣かされてるんだ!お前は聖人だが、悪い事をした!その事実は、確かなんだぜっ!」

クリフは突き刺すような強い言葉で、テルサンの幻影に向かって声を荒げた。

聖人として祀られているマザー・テルサン。

だが、今は聖女というよりも、性的な念に囚われすぎた悪霊そのものだ。
 
「確かに我のしている事は、良からぬことと心得ておる!……だが、我のミイラに詣でる人々の願いも、非常によこしまで勝手すぎる!!時には誰かを呪い殺したいだとか、トイレで用を足しているのをのぞきたいだとか、犯罪が成功するように、だとか……!人とは、何と邪な部分を沢山持っているものよ!そのような邪な願いを聞き続けるうちに、我は自分ができなかった事もやろうと、そう決心したのだ!」

テルサンの霊は、悔しそうに顔を歪める。
 
「だからって、女の子たちを苦しめるのは、聖人として、あるまじき事だっ!!」

テルサンの霊に対し、クリフの口調は、情け容赦ない。

すると、
「霊能者のクリフさん、ちょっと待って下され!」

後ろの方から、いきなりしゃがれた声が聞こえてきた。
 
「誰だ!?」

驚いてクリフとロックが後ろを振り返ると、そこには、かなり年老いたバアさんの修道女が立っていた。
 
「わしは、マザー・テルサンの霊廟があるこの土地にある修道院のシスターじゃ。さっきから聞いていたが、あんたは、女性の気持ちを全く分かっとらんな。」

静かにそう言ったシスターの顔には、年齢を感じさせるシワが沢山存在した。

年月を沢山生き抜いてきた人生経験豊かな、シワシワのばあさんのシスターだ。
 
そのシスターのバアさんが、いきなり、ポッ♡と顔を赤くする。
 
「霊能者さん。あんたはまだ若いから分からぬとは思うが、どのような女でも、例えそれがシスターだとしても、一度は素敵な男性と一夜を共にしてみたいと夢見るものなのさ。」

クリフにそう言うと、シワシワのバアさんは、テルサンの方向を見て言った。

「我らが崇めしマザー・テルサン様、何も自分が契りを交わしたい、というような事を、恥ずかしがらんでください。わしにだって、日ごろシスターとして生きている時でも、男の人と素敵な一夜を過ごしてみたい、そのような煩悩は潜んでおります。だって……」

いきなりババァのその目が、夢見るシンデレラの様な輝きを帯びた。ババァのそのシワシワの顔が、ほんのり赤く染まっている。
 
「私たちって、聖女とか、シスターとかでもあるけど、その前に、生物学的に女じゃあないですか。だからテルサン様、女性としてのあなたの苦しみ、私にも分かります。」

バアさんは頬を赤らめ、しばし感慨にふけっていたのだった。

って、バアさん、乙女顔してるみたいだが、どうも「乙女」ってよりかは、発情期のメスの宇宙人みたいなんだよな!何だか様になってなく、むしろ、キモイわっ!ロックが心の中で、ツッコミを入れる。


しばらくして、バアさんが、急に真面目な表情になると、幻影へ向け、言葉を発する。

「どうでしょう!ここは、思い切って性願望を満たしてみては?そうすると、あなた様の苦しみも取り除かれますぞ。」

「……でも、体の無い身の我がどうやって……!?」

ナイス・バディーのテルサンの幻影は、戸惑いの表情を浮かべ、バアさんを見た。
 
「なに。簡単な事ですじゃ。あなたが女性の体に乗り移り、男性とのセックスを体験すれば良い。そうすれば、あなたの苦しみも治まる事でしょう。」

「でも……そんな事してくれる女の人っているのでしょうか?」

マザー・テルサンは、困惑を隠しきれない。
 
するとバアさんが、とんでもない事を言いだしたのだ。
 
「テルサン様が、わしのこの体に乗り移り、性的な快楽を体験してはどうでしょうか?わしはもう十分に、シスターとしての役割を全うしてきました。だから、わしが媒体となりましょう。わしが媒体となり、男と契りを交わした後には、わしは普通のばあさんとして生きてゆく。」
 
「……!!!」

そのようなバアさんの申し出に、テルサンは顔を覆って泣き出したのであった。
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