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その12 女たちの集まり

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しばらく歩くと、鼻をつく良い匂いに、クリフは野生イノシシのような目となり、よだれが出るのを抑える事ができなかった。

良い匂いが漂って来る方向を見ると、看板をかかげた建物がある。

その看板には食べ物の絵が描かれている。

その看板を見た途端、クリフは1人、大喜びしながら急ぎ足でその店へ入って行った。
 

イズラとロックが遅れて行き、店の扉を開けると、匂いがいきなり強くなったので、すぐにそこが食べ物屋さんである、という事が分かった。

3人が中へ入ると、店内には沢山の女の人が所せましと、ぎっしり座っている。


女性たちは、若い娘から中年の女性まで、様々だ。だが、皆女性である。

それを見るなり、クリフの気持ちは高ぶり、目が♡マークとなった。

「クリフさん、どうしたんですか?」

クリフを見るなり、イズラは、いかがわしげに尋ねた。

するとクリフは、何の恥じらいもなく言ったのだ。

「この中に、独女さんていないかなぁ~って♪♡!」

クリフの言葉に、イズラは、顔をしかめる。

「はぁ!?何を言ってるんですか?クリフさん!ここは、男を奪われた女の集まりで、1人身の女なんて、ただのもいませんっ!」

イズラのキツイ言葉に、しかしド変態度マックスのクリフは、諦めない。

「でも、ここに1人で来るのが不安だから付き添いで友達と来ていて、それでその友達が独身とかって娘、いないかな?」

そんな事を言うクリフに

「そんな人、1人もいません!皆、パートナーのいる女性だけです!」

と、イズラの言葉は、情け容赦がない。

ロックが、彼女の性格のキツさに驚きながらおろおろしていると、

「本当にこの人が、あの有名な霊能者のクリフさんなの!?イズラ、この人、偽物なんじゃあないの!?」

そういう声がどこからともなく聞こえてきた。

見ると、クリフと同じ赤毛の娘が仁王立ちとなり、ヘロヘロしているクリフの方をじっと睨みつけている。

「師匠はこんなんですが、れっきとした立派な霊能者で、腕は確かなんです!」

その女性にロックが言うと、

「あんた、師匠とか言っている人よりもずっと年上みたいだけど、何?人生の落伍者か何か?」

赤毛の少女がそう言った。

”ガーーーーーン!!”

その言葉にメンタルのもともと弱いロックは落ち込み、しばし石のように動けなくなる。

それからロックは部屋の隅へ行き、

「……どうせ僕なんて、人生の落伍者の、元引きこもりですよぉ~……。」

いじいじと、いじけている。
 
女たちを見ると、クリフやロックに対して、大きな不信感を抱いている。

その事が、彼女たちの表情から、容易に推測できる。

そこで今までヘロヘロしていたクリフも、やっと事の重大さに気づき、ヘロヘロ顔をやめ、まじめな表情をしたのだ。

だが、ロックは隅にこもり、1人いじいじとていたのだった。
 
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