霊能者クリフのドタバタ放浪記―ボーイズ・ラブ国家の真実―

西河蓮華

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その9 クリフ×ロック…!!?

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クリフは、実に幸せであった。

金髪美人の美しいイズラと恋仲になろうと、華々しい事を、よだれを沢山たらしながら妄想していたからである。

全くこの男……。女運が激最悪だというのに、おめでたい男だ。
 

「あの……クリフさん?さっきからよだれがすごいのですが、お腹すいてるんですか?」

デレ顔をして、よだれを垂れ流すクリフを見て、イズラは大変に不気味がっている。

これじゃあいけないな…!ロックが、行動に出ることにする。

「いえ。師匠は、ちょっと夢見タイムに入っているだけなんで、放っておいて大丈夫ですよ。」

ロックが言った。

「…?」

イズラは、不審そうな顔をしながらも、2人が今日泊まる宿へと、導いていったのだった。


宿での事である。

「ええぇぇぇ~~~~~!?イズラちゃんって、彼氏いるのぉぉぉぉぉ~~~~~~!?」

クリフの大声に、イズラは驚き、座った椅子から転げ落ちそうになる。

クリフの声は、下品で、そしてとてつもなく大きな声だった。


イズラは、奇しくも恋人がホモの”受♡”であり、それが許せない!のだ。

だが、何にもまして、男なんかに自分の恋人が取られたのが、許せない!そう思ったので自分が立ち上がった。

そして、イズラが中心となり、恋人、婚約者を男に取られた女たちで団体を組み、皆でクリフに依頼をした、というその一部始終を話し終えた所。


ロックは、何とも言えぬ渋い表情をしてイズラの話に聞き入っていた。

突如クリフは、女たちが、皆既婚者か、恋人がいる者ばかり、との事実を知り、あまりのショックに、棺桶に自ら閉じこもってしまった。

しかもその棺桶は、ドラキュラ映画の中に出て来るような、真っ黒くて不気味なもので、イズラは完全に引いていた。

「……んで、ロックさん?本当に、この棺桶に閉じこもっている男が、霊能者クリフさんなの?」

あまりにも情けないクリフの様子に、少し不安な表情をしてイズラが聞いてきた。
 
「はい。あんな変態の僕の師匠ですが、かなり優秀な霊能者なんです。だから、信頼してください!」

「…って、信頼してほしいって、真顔で言われても、……はっきし言って、状態が、これじゃあねぇ~……。」

イズラが、じと目で、クリフがこもっているドラキュラ式棺桶を見る。

イズラのじと目に、ロックは焦る。

「まあ……。こんなですが、無敵の霊能者、世界でトップの有名霊能者なんですよ!…変態ですが。」

ロックが、真剣な表情となり、イズラのその青い瞳を真っすぐに見つめながら、言葉を綴る。

 
しばらくロックは、真剣にイズラの瞳を、見つめていたのだった。

ロックのその澄んだ瞳の中からは、嘘偽りが感じられない。

イズラは、両腕を組み、しばらく考え込んでいたのだった。

 
しばらくすると、何かを割り切るかのように、今まで組んでいた両腕をほどく。
 
「分かったわ!はっきり言って、何だか頼りなげだけど、私たちが頼んだんだものね。だから、信頼して、任せてみる!」

イズラは、ついに覚悟を決めた。

イズラは続けて言った。
 
「ところで、今日はもう、夜遅いわ。明日、私の仲間たちを集めて、詳しい事を話すわ。だから、今日はもう眠って。」

その言葉は旅で疲れ果てているクリフとロックにとっては、申し分のない言葉なはずである。

だが、ロックにとっは、かなり陰鬱であった。

「眠ってって、僕と師匠、部屋は2人いっしょですか!?」

「えっ!?」

ロックのその言葉に、イズラの目が、驚きで丸くなる。

「ひ…ひょっとして、あんたたちも、男同士で、できてるんじゃあ……?」

「いや、断じて、それは違う!……んだけど、半分は当たってる、かな……?」

ロックは、イズラから目をそらす。

「じゃあやっぱ、あんたたち2人は、ホモホモだってことよね!?」

「へぇぇぇ~~~~~?そうなのかい?」

イズラが驚きに声を上げると、突如、扉を開けて、40代ほどのオバサンが入ってきた。
 
オバサンのその目は、好奇心でいっぱいだった。

その緑の瞳が、不気味なほどに、ギラギラと輝いている。
 
「いや、ちっ…違うんだっ!誤解だぁぁっ!!僕と師匠は、ホモホモじゃあありませんっ!!」

必死で否定するロックを、オバサンのギラギラと異様に輝く目と、驚きに目を丸くするイズラが見つめている。

「じゃあ、男同士なんだから、部屋は一緒で良いじゃないっ!?」

ハッキリしないロックに、イズラの目が怒りを帯びてくる。
 
一方オバサンは、ますます好奇な目で、ロックを見る。

ちなみに、オバサンの目は、異様にギラギラとしている。

「……色々と、複雑な事情があるんですっ!…だから、師匠とは別の部屋に……」

しどろもどろに言うロックに、短気なイズラの怒りが、頂点に達した。

まるで、イズラの頭が噴火して、炎が出たかのように、イズラは怒りを見せる。

「あんた!けっこう年いってるくせに、目の輝きは子供っぽいし、言ってる事も、ホモっぽいし、もう、知らない!とにかく、あたしは、今日も仕事で忙しかったから、疲れてるの!だから、明日、また来るから、じゃあねっ!」

そう言ってイズラとギラ目のオバサンは、この部屋に鍵までかけて出て行ってしまったのだ。

「2人のその愛ある夜を、お幸せに~~~♥あっ!この宿の壁、薄いんで、あんまり『声』あげると、迷惑になるから、はげむのはいいけども…ほどほどに・・・・・、ね♥!」

ちなみに出て行く時、オバサンはニヤリと不気味な笑みを浮かべながら、ギラ目で、出て行きしな、こう言って出ていった。

「ごっ……誤解ですよっ!待ってよ、イズラさ~ん……!!」

この部屋に、ロックの報われぬ声だけが、こだましたのであった。

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