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その4 ド変態霊能者クリフ

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「うっひょぉぉぉぉ~!♡見える見える、よぉぉ~っく、見えるぞぉぉぉぉ~~~!やっぱりこの望遠鏡は、高かっただけあって、細部まで、見え見えだぁぁぁぁ~~♡♡♡!!!」

下品な声を聞いた時、ロックの口から、ため息が漏れた。

「師匠。また、女の子の着替え、覗いているんですか?」

ロックの方がクリフよりもかなり年上なのだが、それでもクリフは自分の霊能の師なので、36歳のおじさんだが、17歳の青年に敬語で話す。


クリフは今木に登り、一つの建物の部屋へと、望遠鏡を向けている。

「やっぱり女の子は良いなぁぁぁぁ~~~。オレも、何としても、可愛い娘をゲットするぞぉぉぉ~~~!」

そんな陽気な発言で浮かれているクリフに対し、ロックは、少しだけ冷めた口調で、木の上のクリフに言ったのだ。

「水をさすようですけど、師匠。確か、師匠の背後には水子霊が999体、女性の色情因縁霊が1000体以上連なって憑いているんで、女の子には、縁が無いはずじゃあ……?」
 
「え~い!それを言うなっ!オレの師匠にそう言われてるけども、たとえそうであろうとも、オレは、絶対に美人でかわいい女の子を恋人にする事、諦めてないぞっ!」

クリフなる男は、超ポジティブシンキングなのであった。

 
ロックは、少し不思議そうな表情で言う。
 
「その水子霊と女の色情因縁霊、師匠自らが取る事はできないんですか?」
 
「ああ、……それは無理だと言われてる。オレは、どうやら過去世で海賊だったらしく、沢山の女の子を犯し、沢山の悪事をはたらいたらしいんだ。そのバチが当たって、そいつらが憑いているらしいんだ。
 それで、今生は霊能者になって、人を救うようになっているらしい。…オレは、女運はまるっきりダメだが、ババ運と男運はとても良いって言われてる。まぁ、そんな運、いらねぇんだがなぁっ……。」

クリフが、少しため息まじりにそう言った。

そんな自らの師に、ロックが言葉を放つ。
 
「でも、師匠。ババ運が良いって、良いことじゃあないですかっ!?」
 
「何だとっ!?しわしわのバアさんにキスを求められたりする、その恐怖をお前は知らないから、そう言える!しわしわのバアさんとしかイチャイチャできないその不快さは、お前には分からんだろーがっ!」
 
「でも師匠。年上の女性は、それなりに沢山の経験をしてきて、色んな面で、支えになってくれる温かな存在ととらえると、素敵な事だと思うんですが。」
 
「何が素敵だっ!年上すぎるんだよっ!男運とババ運がかなり良く、女運は、ゲキ最悪…。だが、オレの師匠にそう言われてたって、オレは、絶対に若い女の子の恋人を何としても作ってみせるぞっ!」

そう勢い込んで言う師であるクリフに対し、ロックは、小さなため息をつき、仕方なさそうに言ったのだ。

「はいはい、……分かりましたよ。」


こうしてロックとクリフが実にくだらなすぎるやり取りをしていると、空から小さな白い存在が、こちらへ向かって飛んできた。
 
それは、みるみる大きくなり、ハトの姿となり、クリフの右肩にとまったのだった。

「うっひょぉぉぉ~~~♡ねぇちゃん、下着、刺激的すぎぃぃぃぃ~~~♡♡♡!」

クリフときたら、右肩に白いハトがとまっているにもかかわらず、ハトの存在を無視し、女の子の部屋をのぞくという動作を繰り返している。

 ”クルッーーー!”

 ”ドツン、ドツン、ドツンッ!”

ハトも無視され、頭にきたようである。クリフの首を思いっきり、そのくちばしで、ついばんだ。

「うわっ!痛ってぇぇぇ~~~!」

クリフは、今まで女の子を覗くことに夢中になり、鳥を無視していた。

何か鳥が右肩にとまっているのを分かっていたにもかかわらず、無視していたのだ。

だが、無視された鳥だって面白くない。

鳥は、いつまでも無視し続けるクリフに対し、敵意を向けた。

そこでやっと、クリフもハトに目を向ける。

クリフは、ナマハゲのようなおっかない顔で、鼻息荒く、右肩の白いハトを睨みつけた。

「こぉら~!オレ様の快楽タイムを邪魔すんじゃねぇぇぇぇ~~~~~!邪魔すっと、てめぇ~を、丸焼きにして食っちまうぞっ!」

クリフは、低い声で右肩にとまるハトに向けて、ドスをきかせた。

 ”クルックー!”

そのようなクリフの態度に、ハトは陰気な目つきで彼を睨みつけつつも、使命感を帯びた目で、自分の足についている小さな手紙を示す。

「ゲッ!こんな素敵なエロエロタイムの時に限って、仕事の依頼かよぉぉぉぉぉ~…!あ~あ、めんどくせぇなぁ~……。」

クリフはいかにも面倒くさそうな表情で、伝書バトについている、その手紙を取った。


そのようなクリフに対し、ロックは羨ましさの入り混じった輝きを宿す瞳にて彼を見つめ、言ったのだ。


「師匠!お金になるきちんとした仕事が来るって、めっちゃ、喜ばしい事じゃあないですか!」


「ああ。金になるのは良いんだが、このようなオレの大切な時間帯に来るのは、ちょっとな……。」

面倒そうに言いつつ、クリフは、その手紙を開きはじめた。


このように、普通に仕事が入ってきて、一人前の生活をしているクリフを羨ましそうに、ロックは、少しの間、見つめていた。

だが少しして、引きこもりの頃の体験をクリフに重ねて見ている自分が少し恥ずかしくなり、クリフから目をそらす。


ロックは、お金になる仕事を日本でこなそうと大変頑張ったのだが、ことごとくダメになっていた。

それを、いつもこの青年クリフは、難なくこなしている。

そのような姿を見て、時々、羨望の入り混じった悲しげな瞳でクリフを見つめることの多いロックなのだった。


しばしの間、ロックが自分の世界に浸っていると、

「おおっ!」

木の上のクリフが、いきなり声をあげる。

「この手紙、ピンク色で香水がつけてあって、差出人がイズラとなっているっ!これはこれは、若い女の子だっ!やっほっほ~~~♡!」

クリフの目が♡と化したその時だった!

 ”ドスンッ!”

「うぁあ、痛ってぇぇぇぇ~~~~~!」

クリフは、若い女の子からの依頼ということで、かなり興奮し、その興奮した勢いで、木からまっさかさまに落ちたのだ。

だが、このクリフという青年、かなりの変態体質なので、ケガなど全くしなかった。


クリフが木から落ちると、その衝撃で、深い穴が開いた。

その深い穴の中の奥底へ、彼の体は、落っこちてしまった。


「師匠、大丈夫ですかぁぁぁ~~~~~!」

ロックが、かなり深くあいた穴の奥底に向けて呼びかけた。


「ああ、大丈夫!これしきの事でへこたれてたんじゃあ、ギャルをゲットできねぇぜっ!今から上がってゆくぜぇぇぇぇ~~~~~!」

そう言うやいなや、変態のクリフは、自分の首をろくろっ首のように長く長く伸ばし、首だけ先に、上がってくる。

そして、伸ばしたらアゴを穴の入り口につっかけ、それから首を短くして体を引き上げ、この穴から脱出したのである。
 
その異様な光景に、もう慣れっこになっているロックは、表情一つ変えずに見ていたのであった。
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