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その5 オッパイ星人!?

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「ところで師匠。エフェレリアという街は、初めて行くのですが、どんな所なのでしょうか?」

ロックがカレーによく似た料理を口に含ませながら、隣で酒を飲むクリフに聞いた。

今、2人は、昼食をとっている。
 

飲食店内のカウンターにクリフとロックが腰かけ、旅の途中、束の間の休息の時を過ごしている。

「ああ。エフェレリアはな、オッパイ聖人で有名な都市なんだ。そんな場所でなぜ、問題が起こっているんだか……。」

クリフが少しだけけだるそうにそう言うと、ロックは目を丸く見開いた。
 
「お……オッパイ星人・・!?何ですか、それ!?ド変態ですか!?」

呆れるロックに、クリフは酒をガブガブ飲みつつ、言葉を綴る。

「違う!”聖人”だっ!聖なる”聖”に”人”と書く!お前の考えているように、”星”の”人”じゃないっ!つまりだな、マザー・テルサンという聖女で有名な街なんだ。」

「ハァ!?テルさん!?テルさんって、どこかのおばあさんの名前か何かですか?」

けげんな表情をして言うロックにクリフは頷く。

「ああ。バアさんはバアさんなんだが、……。」

クリフは、かったるそうに言いよどんだ。

「マザー・テレサなら、僕、知ってますが……。」

「マザー・テレサ!?誰だ、それは?」

「僕の世界での聖女です。」

ロックが懐かしい目をする。
 
一方クリフは、とてつもなく、けだるそうである。

「お前の世界の聖女はどうでもいい!とにかく王都エフェレリアは、テルサンで有名な所なんだ。
 マザー・テルサンという82歳の修道女のばあさんがいて、そのばあさんが、自分の乳で、原因不明の疫病で滅びゆかんとしているエフェレリアを1人で救った、という事で有名なんだ。」

クリフが、本当に仕方なさそうに言う。

ばっ…ばあさんが自分の乳で、人助け!?ロックはポカンとしてしまった。

「…82歳のおばあさんで、乳が出たんですか!?」

「ああ、そうだ。マザー・テルサンは、元々は、アルカタの都出身の修道女なんだ。マザー・テルサンがお祈りをしている時に、神から”乳でエフェレリアを救え”と啓示があった事は、有名な話だ。
 その話は、紙芝居にもなっていて、所々で語り継がれている。神の啓示があった後、テルサンはエフェレリアへ行き、乳で、エフェレリアを一人で救ったんだ。何でも、そのばあさんの乳を1口、口に含ませるだけで、疫病が治ったんだとよ。その乳を都中の疫病にかかった人全員に与えたそうだ。」

「それで?テルサンは、最後は、どうなったんですか?」

興味深げに目を丸くして聞くロックに、クリフは半ば仕方なさそうに答えた。

「最後は、乳を出し尽くして体がしなびて、ミイラになり、死んだ。そのテルサンのミイラは、今でもエフェレリアの霊廟に祭られていて、様々な人々が奇跡にあやかるために、エフェレリアへ訪れる。
 ……そんな聖都であるエフェレリアに、怪奇現象なんて似合わないんだがなぁ~……。」

クリフは頭をひねると、大きなムカデをそのまま燻製にしたものを、酒といっしょに飲み込んだ。 


それからしばらくして、2人はこの飲食店をあとにしたのであった。


しばらく2人は無言で歩いていた。

ロックは「沈黙」が怖くなった。そして、わざとらしく沈黙を破り、話し始める。

「僕の住んでいた世界では20歳にならないと、酒は飲んじゃあだめなのに、ここでは17歳の師匠でも酒を飲めるから不思議ですね。」

「ああ!?お前のいた世界って、んなに不自由だったのか!?妙な世界だな。」

ロックの言葉にクリフは、目を丸くする。

その後2人は、エフェレリアへ向け、歩を進めていったのであった。
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