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第2章 ダンジョン編

第13-2話

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武器も防具もなく、武装していないベルティア。
 
小さなか弱そうな体の、金髪の美少女。

青白いネガティブな気分にさせる吐息が、ベルティアの小さな体を、包み込んでゆく。

次の瞬間、ベルティアの体全体が金色に輝き、一瞬にして、吐息を消し去った。

間髪入れずに、ゲオンの元へ、自らの体から出現させた金色の光を送り込む。

「あれ?うわっ!何で俺、自分の喉を突き刺そうとしてるんだっ!?」

ゲオンが正気を取り戻した。驚きと恐れで、目が出目金のように、大きく見開かれている。

「気をつけて!あの亡霊から出ている音と吐き出す吐息は、心のトラウマを呼び込んだり、マイナスな心にさせたりするの!だから、常に強い心を持ち続けてっ!」

最後まで言葉を言い終わらぬうちに、ベルティアが、瞬時にしてそこを離れ、後方へ飛んだ。

亡霊の白い手が蛇のごとく伸び、彼女の体に触れんとしたからだ。

 
どうやら亡霊は、ベルティアを倒さねば、自分に勝機が無いと感づいたらしい。

必死になってベルティアの体を、追いかけまわしている。

ベルティアは、白蛇のように伸び、迫りくる亡霊の手を、風のようなスピードで、よけつづけている。

やがて、亡霊の口から青白い吐息が発せられ、ベルティアを包み込む。

が、先ほど同様、ベルティアの体が金色に輝き、吐息は一瞬でなくなっていく。

亡霊が吐息を吐き、ベルティアが消す。さらに彼女は、亡霊の蛇のようにうごめく両手を、風のような機敏な速さで、よけつづけていく。

その光景が、ダンジョンの一角で、次々と展開されていく。

「はっ……速いっ!!目で追えないっ!!」

ゲオンは、風のごとく機敏に動くベルティアと亡霊の姿を目の当たりにし、半ば口を開いて、ポカンとしていた。

「そろそろ、いこうかな!」

動き回りながらベルティアは呟き、

「ザラーム・アエテルタニスっ!」

呪文を詠唱した。

その瞬間、ベルティアの頭上に、漆黒の闇の玉が出現した。

闇の玉はベルティアの小さな体よりも、6倍ほども大きい。

ベルティアは、両手で頭上の漆黒の玉を掴む。

と、次の瞬間、瞬時にして、亡霊の体へと漆黒の大玉を、命中させる。

漆黒の大玉は、一瞬にして亡霊を飲み込んでいった。

次の瞬間、耳が痛くなるかのような、不可思議な静寂が支配する。

 
そこに、亡霊の姿は無かった。

実に一瞬の出来事なのだった。

が、ゲオンは、見落とさず、ずっと目を見開いていた。

「ベルティアちゃん!亡霊はどこへ行ったんだ?」

「永遠の『無』に落とし込んでやったわ。魂ごと消し去って完全に抹消したから、もう生まれ変わることもできないわね。」

ベルティアのその美しく形の良い顔に一瞬だが、冷酷さが現れた。

「それは、可哀そうすぎだっ!魔物だって、生まれ変わりしているのに、魂まで抹消してしまえば、もう生まれ変わることもできないっ!この世に存在することもできないっ!!」

ゲオンは、涙を流しはじめた。

「……。」

ベルティアの美しい2つのマリンブルーの瞳が、そんなゲオンを、半ば複雑そうに、半ば呆れを含んだ目で見ていたのだった。

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