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第1章 出会い

第5-2話

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いきなり低い声で凄まれ、トーマスは焦っていた。あまりの焦りに「俺」発言したベルティアの言葉には気づいてないようだ。

「ベルティア。許しておやり。トーマスは昔から、言葉が下手でね。全く悪気はないんだよ。」

少し困ったように、ミリア。

それから、急にミリアの顔が厳しくなった。

「それから、ベルティア!あんた、女の子で、せっかく可愛く生まれてきているんだから、汚い言葉、使っちゃだめよ!」

厳しい言葉が、ベルティアを貫く。

「分かったわ、ミリア。」

ベルティアは、ミリアの目を真っすぐに見つめた。それから、トーマスの方を向く。

「仕方ないわね。言葉が下手な人は、どの時代でもいるものだものね。」

ベルティアは、少しだけふてくされたような表情でトーマスを見る。そして、次に作り笑いを浮かべる。
 
その笑みを見て、トーマスも、やっとほっとした表情となる。

 
だが内心、ベルティアの心は、トーマスに関しては、穏やかではないのだった。
 
ミリアと結婚している。それだけで、悶々としたものがこみあげてくるのだった。が、彼女は、その煙のように湧き上がってくる心を、長年鍛えた忍耐力によって押し込めたのだった。



ベルティアは、夫のトーマスと共に寝室に消えていくミリアの姿を、切なそうな目で見送っていた。

今回こそ、幸せになろうと自分は自分なりに決心したのだ。

もう、ミリアに囚われることは、やめよう!自分にそう言い聞かせ、用意された客室へと、1人静かに歩いていったのだった。


翌日、昨日まで曲がっていたミリアの腰が、ピン!と伸びていた。

おまけに、トーマスも昨日よりも数倍元気そうだ。

尋ねてみると、昨日ミリアにあげた、あの小瓶の薬を2人でそれぞれ腰に塗ったのだという。

すると腰だけではなく、体全体が楽になり、心身共に癒されたのだという。


ベルティアは、ミリアが元気になってくれて、とても嬉しかった。が、その一方で複雑でもあった。

ミリアについては、とても良かったと心から思ったベルティアだった。

だが、何故トーマスまでもが、その薬を使ったのかと、不快な気分を抱かずにはいられなかった。

だが、変なトラブルを避けるため、言いたい言葉を必死でこらえた。そして、隣街のパン工場へ今日も働きに出る口下手な男トーマスを、ミリアと共に、2人で見送った。


その後、少しミリアと話しながらお菓子を食べていたら、今度は違う男がやってきたのだった。

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