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第1章 出会い

第4話

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「ミリア。私、もう旅立つね。」

ベルティアは、夕暮れ時の美しい光の中、ミリアの店兼住宅を出てゆこうとしていた。

実に楽しい有意義な時間を過ごせた。そう、彼女は、心の中で想い、旅立つその前に、もう一度だけ、ミリアの、その年季の入った顔を見つめる。

ベルティアの、彼女を見つめるその目は、深い優しさに包まれていた。


気づくともう、夜の帳がおろされるその瞬間が近い時刻だった。

 ミリアは思う。もうすぐ、夜の帳がおりてしまう。いくら強いといえども、12歳ほどの繊細で綺麗な美少女には、危険な時間帯だ。先ほど「14歳」などと言っていたが、どう見ても12歳ほどにしか見えない。
 そんな少女を夜の闇の中に置き去りになんてできない。これは、絶対に泊まっていってもらわないと!

「ダメだよ!こんな時間に女の子を1人、放り出すわけにはいかないよっ!」

ミリアのその家事労働で太くなったのであろう中年の右腕が、ガッシリと繊細な少女の右腕を掴む。

「ミリア。やっぱ、とっても優しいんだね。」

また、訳の分からぬことを言うベルティアの右手を、しかしミリアは放さない。

世話になるのは悪いと言い、ベルティアは、この場を去ろうとしている。

そんなベルティアを、ミリアは、時間をかけて説得していく。


ベルティアは、遂に観念し、ミリアの家にとどまることとなった。

「少しだけ…。少しだけならいいわよね。」

また、訳の分からないことを呟き、続いてミリアに笑顔を向けると、

「分かったわ、ミリア。今夜はあなたの好意に甘えることにする。美味しい料理を作って私にご馳走してね。」

優しく微笑んだ。

ベルティアは、悲しみを押し殺しての笑顔を浮かべている。精一杯悲しみを見せぬように、ほほ笑んでいる。

鋭い占い師のミリアには、それが分かってしまい、胸が痛んだ。

 ベルティアは、何かしらの深い悲しみを抱え、隠し持っている。その悲しみを、少しでも和らげ、彼女が幸せな気分になってくれたら。
 何を悲しんでいるのか、想像ができない。でも……。
 せめて今夜は、美味しい料理を作ってあげて、もてなそう!ベルティアが、小さな幸せに触れる時間を作ろう!ミリアは、そう決心したのだった。

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