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『プロローグ』
第二話 『あたしは、これからも陸を全力で愛して良いのよね?』
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莉子への愛を教室で叫んだその日。
授業終了後に僕は莉子の家へと寄ることにした。
学校で配布されたプリントを届けるためである。
昼間のこともあり、莉子の顔を見たかったというのもある。
莉子の家の前に到着し、しばし待つ。
……オカシイ。
莉子には既に家に寄る旨はメッセージで伝えてあった。
いつもなら、家の前に着くと同時に莉子が出迎えてくれるのに……。
体調がかなり悪いのかもしれない。
家のチャイムを鳴らすかメッセージを送るか、はたまた郵便ポストにプリントを入れておくだけにするか……。
そんなことを迷っていると、玄関の扉が開いた。
そして、ゆっくりと莉子が出てきた。
ルームウェアに大判のストールを羽織っている。
かなり赤い顔をしていて、熱がありそうだ。
「莉子!? 顔が赤いよ!! 大丈夫??」
「……う、うん。もう体調はほとんど良くなっているから」
顔を見る限り、良くなっているようにはあまり思えないのだけど……。
あまり長居すべきではないかもしれない。
「じゃあ、今日のプリントを渡しておくね」
「う、うん」
プリントを渡して、そこで僕は気付いた。
莉子が僕と目を合わせてくれないことに。
「……莉子?」
名前を呼んで、莉子の前髪を優しく持ち上げようとする。
「あ、あのっ――」
しかし、莉子は僕の手を逃れて玄関の奥へと下がってしまう。
…………え?
「ま、また明日ね。明日は学校行くから」
「あ、ああ……」
「あの、陸、ありがとう……」
そう言って扉を閉めてしまう莉子。
……何か避けられてないか?
僕はそのまましばらく立ち尽くした後、とぼとぼと帰路に着いたのだった。
◆ ◆ ◆
翌日、莉子とはいつも通りに学校への途中駅で待ち合わせをした。
莉子は先に待ち合わせ場所に来ていた。
まだ少し赤い顔をしながら、いつものようにイヤホンをし、なんだか今日はニコニコしている。
僕といるときはニコニコしていることも多いのだが、一人でニコニコは珍しいんじゃないだろうか。
何か良いことがあったのかもしれない。
近づいていくと、莉子がこちらに気付いた。
「あっ、陸、おはようー!」
「おはよう、莉―――ゴッ!?」
莉子は僕の姿を見るや否や、挨拶しながら突進し、そのままの勢いで胸に飛び込んできた。
胸が痛いぞ、物理的に。
「陸! 愛してる!!」
「んんっ?」
いきなりのことに頭が付いていかない。
こんな激しい朝の挨拶は初めてだ。
しばらくぎゅーっと抱き締められた後、そのままの体勢で莉子が顔を上げた。
前髪の隙間から、莉子の綺麗な瞳が見えていた。
「じゃあ、行こうか」
笑顔の莉子が言う。
ハテナマークで頭がいっぱいの僕は莉子に手を引かれていった。
◆ ◆ ◆
その日の授業終了後。
僕は莉子と一緒に下校していた。
ニコニコしている莉子に質問を投げかける。
「莉子、何か良いことでもあったの?」
「ん~、分かる?」
「だって、今日一日ずっとニコニコしていたよ?」
莉子は朝からずっと、一日中ニコニコしていたのだ。
授業中ですら、こっそりと片方のイヤホンを着用しながら、ニコニコしていた。
日頃はあまり愛想の良い方ではないので、さすがにおかしい。
「じゃあ、これを付けてみて」
小悪魔的微笑を浮かべる莉子が件のイヤホンを渡してくる。
僕はそのイヤホンを受け取ると、耳へと装着する。
誰かが何か叫んでいるようだ。
どこかで聞いたことがあるような……。
『……僕にとって最高の彼女は莉子以外あり得ない!』
それは、他ならぬ僕自身の声だった。
僕の声が莉子への愛を叫んでいた。
(……え!? 録音されてる!?)
恥ずかしさの余り、僕はその場にしゃがみ込んで顔を両手で覆う。
莉子の顔を見ることができない。
顔が熱くなっているのが自分自身で分かる。
イヤホンからはエンドレスで愛の叫びが繰り返されている。
これを莉子は一日ずっと聞いていたのか……。
「あっ、昨日の態度は、もしかして……?」
「うん、……恥ずかしくて、陸と顔を合わせられなかったの」
「今朝のは?」
「陸の姿を見たら、今度は我慢できなくなっちゃって……。今も飛びつきたくてウズウズしているんだけど、これで我慢してあげる」
「……え?」
莉子が今度はゆっくりと僕を抱き締めてきた。
しゃがみ込んだままだったので、頭を抱えられる状態となった。
莉子の控えめな胸が顔に当たって心地良い。
そのままじっとしていると、莉子は話し始めた。
「最近、陸はクラスの人気者になって、凄く楽しそうにしていることが多くて……。なんだか、あたしから離れていってしまう気がしていたの」
莉子の胸からドクドクという心臓の鼓動が聞こえる。
「まあ、例え、陸があたしのことを嫌いになったとしても、あたしは陸を愛し続けるのだけども……」
「僕は莉子を嫌いになったりしない」と言おうとしたが、頭を強く抱き締められてムグムグ言うだけになってしまった。
「でも……、陸は、――あたしのことを最高の彼女だって」
莉子は泣いていた。
僕への拘束を解き、自身で涙を拭う。
「グスッ……、あ、あたしは、これからも陸を全力で愛して良いのよね?」
莉子の質問に僕は答える。
当然のことだとして答える。
「ああ、僕を全力で愛してほしい。僕はそれに全力で応え続けるよ」
今度は僕が莉子の涙を拭った。
莉子の綺麗な瞳には、僕の姿だけが映っていた。
そこへ……。
「おいおい、お二人さん、見せつけてくれるじゃない…………か!?」
空気を読まないヤンキー二人組が、登場と同時に困惑する。
既に後悔もしていることだろう。
莉子の姿を見たからだ。
両手に包丁を持ち、戦闘態勢の莉子の姿を。
(以前より遥かに、莉子の行動が早い!?)
僕は感心してしまった。
「……って、ダメだから、その包丁しまって!!」
慌てて莉子に後ろからしがみつく。
「大丈夫よ、あたしに任せて。あたしの愛がこんな奴らに負けるわけがないじゃない」
彼女がなんだか少し嬉しそうに見えたのは気のせいではないだろう。
僕の彼女は可愛い。
けれども、ヤンデレだ。
僕はそんな彼女を愛してやまない。
授業終了後に僕は莉子の家へと寄ることにした。
学校で配布されたプリントを届けるためである。
昼間のこともあり、莉子の顔を見たかったというのもある。
莉子の家の前に到着し、しばし待つ。
……オカシイ。
莉子には既に家に寄る旨はメッセージで伝えてあった。
いつもなら、家の前に着くと同時に莉子が出迎えてくれるのに……。
体調がかなり悪いのかもしれない。
家のチャイムを鳴らすかメッセージを送るか、はたまた郵便ポストにプリントを入れておくだけにするか……。
そんなことを迷っていると、玄関の扉が開いた。
そして、ゆっくりと莉子が出てきた。
ルームウェアに大判のストールを羽織っている。
かなり赤い顔をしていて、熱がありそうだ。
「莉子!? 顔が赤いよ!! 大丈夫??」
「……う、うん。もう体調はほとんど良くなっているから」
顔を見る限り、良くなっているようにはあまり思えないのだけど……。
あまり長居すべきではないかもしれない。
「じゃあ、今日のプリントを渡しておくね」
「う、うん」
プリントを渡して、そこで僕は気付いた。
莉子が僕と目を合わせてくれないことに。
「……莉子?」
名前を呼んで、莉子の前髪を優しく持ち上げようとする。
「あ、あのっ――」
しかし、莉子は僕の手を逃れて玄関の奥へと下がってしまう。
…………え?
「ま、また明日ね。明日は学校行くから」
「あ、ああ……」
「あの、陸、ありがとう……」
そう言って扉を閉めてしまう莉子。
……何か避けられてないか?
僕はそのまましばらく立ち尽くした後、とぼとぼと帰路に着いたのだった。
◆ ◆ ◆
翌日、莉子とはいつも通りに学校への途中駅で待ち合わせをした。
莉子は先に待ち合わせ場所に来ていた。
まだ少し赤い顔をしながら、いつものようにイヤホンをし、なんだか今日はニコニコしている。
僕といるときはニコニコしていることも多いのだが、一人でニコニコは珍しいんじゃないだろうか。
何か良いことがあったのかもしれない。
近づいていくと、莉子がこちらに気付いた。
「あっ、陸、おはようー!」
「おはよう、莉―――ゴッ!?」
莉子は僕の姿を見るや否や、挨拶しながら突進し、そのままの勢いで胸に飛び込んできた。
胸が痛いぞ、物理的に。
「陸! 愛してる!!」
「んんっ?」
いきなりのことに頭が付いていかない。
こんな激しい朝の挨拶は初めてだ。
しばらくぎゅーっと抱き締められた後、そのままの体勢で莉子が顔を上げた。
前髪の隙間から、莉子の綺麗な瞳が見えていた。
「じゃあ、行こうか」
笑顔の莉子が言う。
ハテナマークで頭がいっぱいの僕は莉子に手を引かれていった。
◆ ◆ ◆
その日の授業終了後。
僕は莉子と一緒に下校していた。
ニコニコしている莉子に質問を投げかける。
「莉子、何か良いことでもあったの?」
「ん~、分かる?」
「だって、今日一日ずっとニコニコしていたよ?」
莉子は朝からずっと、一日中ニコニコしていたのだ。
授業中ですら、こっそりと片方のイヤホンを着用しながら、ニコニコしていた。
日頃はあまり愛想の良い方ではないので、さすがにおかしい。
「じゃあ、これを付けてみて」
小悪魔的微笑を浮かべる莉子が件のイヤホンを渡してくる。
僕はそのイヤホンを受け取ると、耳へと装着する。
誰かが何か叫んでいるようだ。
どこかで聞いたことがあるような……。
『……僕にとって最高の彼女は莉子以外あり得ない!』
それは、他ならぬ僕自身の声だった。
僕の声が莉子への愛を叫んでいた。
(……え!? 録音されてる!?)
恥ずかしさの余り、僕はその場にしゃがみ込んで顔を両手で覆う。
莉子の顔を見ることができない。
顔が熱くなっているのが自分自身で分かる。
イヤホンからはエンドレスで愛の叫びが繰り返されている。
これを莉子は一日ずっと聞いていたのか……。
「あっ、昨日の態度は、もしかして……?」
「うん、……恥ずかしくて、陸と顔を合わせられなかったの」
「今朝のは?」
「陸の姿を見たら、今度は我慢できなくなっちゃって……。今も飛びつきたくてウズウズしているんだけど、これで我慢してあげる」
「……え?」
莉子が今度はゆっくりと僕を抱き締めてきた。
しゃがみ込んだままだったので、頭を抱えられる状態となった。
莉子の控えめな胸が顔に当たって心地良い。
そのままじっとしていると、莉子は話し始めた。
「最近、陸はクラスの人気者になって、凄く楽しそうにしていることが多くて……。なんだか、あたしから離れていってしまう気がしていたの」
莉子の胸からドクドクという心臓の鼓動が聞こえる。
「まあ、例え、陸があたしのことを嫌いになったとしても、あたしは陸を愛し続けるのだけども……」
「僕は莉子を嫌いになったりしない」と言おうとしたが、頭を強く抱き締められてムグムグ言うだけになってしまった。
「でも……、陸は、――あたしのことを最高の彼女だって」
莉子は泣いていた。
僕への拘束を解き、自身で涙を拭う。
「グスッ……、あ、あたしは、これからも陸を全力で愛して良いのよね?」
莉子の質問に僕は答える。
当然のことだとして答える。
「ああ、僕を全力で愛してほしい。僕はそれに全力で応え続けるよ」
今度は僕が莉子の涙を拭った。
莉子の綺麗な瞳には、僕の姿だけが映っていた。
そこへ……。
「おいおい、お二人さん、見せつけてくれるじゃない…………か!?」
空気を読まないヤンキー二人組が、登場と同時に困惑する。
既に後悔もしていることだろう。
莉子の姿を見たからだ。
両手に包丁を持ち、戦闘態勢の莉子の姿を。
(以前より遥かに、莉子の行動が早い!?)
僕は感心してしまった。
「……って、ダメだから、その包丁しまって!!」
慌てて莉子に後ろからしがみつく。
「大丈夫よ、あたしに任せて。あたしの愛がこんな奴らに負けるわけがないじゃない」
彼女がなんだか少し嬉しそうに見えたのは気のせいではないだろう。
僕の彼女は可愛い。
けれども、ヤンデレだ。
僕はそんな彼女を愛してやまない。
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