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最終話 結婚

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「聞いても良い?」

「何なりと」

 今日はアルバート神官長とのデートだ。
 デートと言っても、朝昼晩の食事を2人きりで取るという、なんとも大人しい物だ。

「どうして日替わりデートなんてルールが出来たの?」

「羨ましかったからです、ロナウド副団長が。だから説得して、日替わりデートで妥協してもらいました」

 昼食を取りながら疑問をぶつけたけど……最近のアルは感情を隠す事が無くなってきた。
 もぅ、ストレートに言ってくるもんだから、いつも私は顔を赤らめてる。

「最近のアルはセルジュ並に気持ちを隠さなくなったから、私はいつもドギマギしちゃうのよ?」

「ドギマギ? ドキドキではありませんか?」

「そ、それは、ドキドキしてるけど」

「ふふ、良い傾向です」

「もぅ! アルのイジワル!」

 最近はみんなと下らない話をしている。
 ロナウド副団長ともセルジュとも、本当に日常のありふれた会話が楽しい。
 ちなみに私がみんなの事を愛称で呼んでいるのは、みんなにお願いされたからだ。
 
 アルバート神官長はアル、ロナウド副団長はローと呼んでいる。
 セルジャック王太子は前からセルジュだったけど、それが羨ましいから、と。
 じゃあ私の愛称は? と思ったけど、何故か呼び方は変えてくれなかった。
 
 最近はメジェンヌ国王によく言われることがある。

「そろそろ身を固めてはいかがかな?」

 その言葉があちこちに広まり、今では街中で噂になっている。
 聖女様が結婚するそうだ、と。
 私としてはまだ結婚するつもりは無いけど、周りの期待は日に日に強くなっていく。

 そろそろ……かなぁ。

 ちなみに聖女と言っても結婚できるし子供も産める。
 昔はダメだったみたいけど、流石に時代遅れだからと撤廃されたとか。
 でも子連れで聖女を務められるのかしら。

 そんな噂が流れるものだから、私を見るたびに挙動不審になる人が3人ほどいる。
 セルジュ、アル、ローだ。
 もちろんこの3人から選ぶつもりだけど、3人とも自分が選ばれようと必死だし、ダメだった時はどうしようかと毎晩悩んでいるらしい。

 半年後。
 私は意を決し、3人を自室に呼び出した。
 部屋に入ってきた3人は正装で、みんな花束を手にしている。

「アトリア、俺と結婚してくれ」

「聖女様、私を選んでくれると信じています」

「アトリア聖女様は私が守ります」

 みんなが片膝をついて、花束を私に差し出す。
 セルジュは赤い花、アルは青い花、ローは黄色い花。
 どの花を選んでも幸せになれるのは分かってる。
 みんな平等に接してるつもりだったけど、どこで差が付いちゃったのかな。

 私は、一つの花束をうけとりこう言うの。

「私を、幸せにしてください」
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感想 73

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みんなの感想(73件)

卯月茉莉
2021.10.15 卯月茉莉

こんにちは
だいぶ前に読んだんで誰を選んだのかなと気になっていました。勝手に推理しました。主人公のアトリアの名前が星の名前と同じで誕生星の日にちが12月5日でそれでは12月5日の花は南天やドラセラで南天の花は白ですがご存じのとうり赤い実です。そして花言葉が「私の愛は増すばかり」12月5日は赤いバラも誕生花みたいなので赤い花のセルジュと勝手に思ってます。作者がキーワードとして読者の方に推理させてくださったにせよ、偶然だとしても素敵な小説でした。ありがとうごさいます。花言葉も素敵な言葉だったのでHappy endで良かった良かったと勝手に納得してます。

解除
ゆきた
2021.08.02 ゆきた

最終的に三人の誰かとくっつくにしても
逆ハーレム の表記が欲しかった、、、

解除
tom
2021.01.28 tom

だ、誰を選んだんだ!
追放聖女からリンクを辿って来ましたが、こちらも容赦の無い人死にが出てますねw

解除

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