57 / 60
57話
しおりを挟む
ハロルド王太子が起き上がってきた。
そう言えばロナウド副団長に引っ張られて飛んで行ったけど、大丈夫だったのかな。
「な……なぜだ、なぜだアトリア! 私は薬で操られていただけなのに、どうして君は私を受け入れないんだ!」
苦しそうにベッドに手を付きながら立ち上がったけど、なぜ? なぜって、言わないと分からない?
この際だからハッキリ言った方がいいのかな。
「なぜだと!? 貴様は愛する女を薬で操り、正気を奪い襲おうとしたのだぞ! そんな男を好きになる女など、どこの世界にいるというのだ!」
あ、うん、セルジュが代弁してくれた。
でもセルジュだけじゃ収まらなかった。
「ハロルド王太子、いえハロルド。薬で操られていたとはいえ、あなたは聖女様との婚約を破棄し国外追放しました。どうして受け入れられると御思いで?」
アルバート神官長の言う通り、あの時すでに、私の心はハロルド王太子……ハロルドから離れていた。
実は操られていました、って言われても無理。
「機会は有ったのかもしれません。しかし、あなたがアトリア聖女様に会いに来たのは薬を盛りに来た時のみ。本当にあなたは、アトリア聖女様を愛しておられるのですか?」
そう、ハロルドの洗脳を解いた時に謝られたけど、それ以降は会っていない。
メジェンヌ国王陛下は『私に執着している』と言っていたけど、その割に会いに来ていなかった。
でも今回の事でもわかるけど、ハロルドは私に執着している。それは間違いない。
どうして?
「帰ってくると思ってた……」
「え?」
「アトリアは僕を愛している、だから、操られていた事が分かれば、必ず戻ってくるんだ!」
なにを……言っているの?
帰ってくる? 追い出したのに? 追放されたのよ?
「私が間違ってましたと、許して下さいと頭を下げに来ると思っていた!」
意味が分からない。
普段からあまりしゃべらない人だったけど、こんなに分からない考えをしていたの?
どうして、私が頭を下げないといけないの?
「ああ、そうか分かったぞ。こいつは悲劇のヒロイン気取りなんだ。自分は操られて思ってもない事を言わされた、可愛そうな僕。でも操られていたから悪くない、きっと周りも僕をかわいそうに思って慰めてくれる、ってな」
「なるほど、自分は悪くない、操られていた間の事は全て無効だ。だから全部マーテリーの所為にして、周りは理解してくれるはず、そう考えたのですか」
「何というか、私は口数が少なく誤解されやすいですが、そんな考え方をした事はありません」
3人は理解できたみたい。
男同士だから? でも全然タイプは違うけど。
「ねぇ、私って元同じ国の人と話してるつもりだったけど、違う国の人、ううん、人と話してる気がしないの」
「俺は幼児と話してる気分だ」
「私は異文明人です」
「私は飼い猫と」
良かった、私が変なわけじゃなかった。
もうこれ以上は話すだけ無駄、ロナウド副団長がハロルドを縛り上げ、街に連れて行く事にした。
そう言えばロナウド副団長に引っ張られて飛んで行ったけど、大丈夫だったのかな。
「な……なぜだ、なぜだアトリア! 私は薬で操られていただけなのに、どうして君は私を受け入れないんだ!」
苦しそうにベッドに手を付きながら立ち上がったけど、なぜ? なぜって、言わないと分からない?
この際だからハッキリ言った方がいいのかな。
「なぜだと!? 貴様は愛する女を薬で操り、正気を奪い襲おうとしたのだぞ! そんな男を好きになる女など、どこの世界にいるというのだ!」
あ、うん、セルジュが代弁してくれた。
でもセルジュだけじゃ収まらなかった。
「ハロルド王太子、いえハロルド。薬で操られていたとはいえ、あなたは聖女様との婚約を破棄し国外追放しました。どうして受け入れられると御思いで?」
アルバート神官長の言う通り、あの時すでに、私の心はハロルド王太子……ハロルドから離れていた。
実は操られていました、って言われても無理。
「機会は有ったのかもしれません。しかし、あなたがアトリア聖女様に会いに来たのは薬を盛りに来た時のみ。本当にあなたは、アトリア聖女様を愛しておられるのですか?」
そう、ハロルドの洗脳を解いた時に謝られたけど、それ以降は会っていない。
メジェンヌ国王陛下は『私に執着している』と言っていたけど、その割に会いに来ていなかった。
でも今回の事でもわかるけど、ハロルドは私に執着している。それは間違いない。
どうして?
「帰ってくると思ってた……」
「え?」
「アトリアは僕を愛している、だから、操られていた事が分かれば、必ず戻ってくるんだ!」
なにを……言っているの?
帰ってくる? 追い出したのに? 追放されたのよ?
「私が間違ってましたと、許して下さいと頭を下げに来ると思っていた!」
意味が分からない。
普段からあまりしゃべらない人だったけど、こんなに分からない考えをしていたの?
どうして、私が頭を下げないといけないの?
「ああ、そうか分かったぞ。こいつは悲劇のヒロイン気取りなんだ。自分は操られて思ってもない事を言わされた、可愛そうな僕。でも操られていたから悪くない、きっと周りも僕をかわいそうに思って慰めてくれる、ってな」
「なるほど、自分は悪くない、操られていた間の事は全て無効だ。だから全部マーテリーの所為にして、周りは理解してくれるはず、そう考えたのですか」
「何というか、私は口数が少なく誤解されやすいですが、そんな考え方をした事はありません」
3人は理解できたみたい。
男同士だから? でも全然タイプは違うけど。
「ねぇ、私って元同じ国の人と話してるつもりだったけど、違う国の人、ううん、人と話してる気がしないの」
「俺は幼児と話してる気分だ」
「私は異文明人です」
「私は飼い猫と」
良かった、私が変なわけじゃなかった。
もうこれ以上は話すだけ無駄、ロナウド副団長がハロルドを縛り上げ、街に連れて行く事にした。
3
お気に入りに追加
4,910
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された私は、世間体が悪くなるからと家を追い出されました。そんな私を救ってくれたのは、隣国の王子様で、しかも初対面ではないようです。
冬吹せいら
恋愛
キャロ・ブリジットは、婚約者のライアン・オーゼフに、突如婚約を破棄された。
本来キャロの味方となって抗議するはずの父、カーセルは、婚約破棄をされた傷物令嬢に価値はないと冷たく言い放ち、キャロを家から追い出してしまう。
ありえないほど酷い仕打ちに、心を痛めていたキャロ。
隣国を訪れたところ、ひょんなことから、王子と顔を合わせることに。
「あの時のお礼を、今するべきだと。そう考えています」
どうやらキャロは、過去に王子を助けたことがあるらしく……?
男子から聖女と言われている同級生に彼氏を奪われた。その後、彼氏が・・・
ほったげな
恋愛
私には婚約もしている彼氏がいる。しかし、男子からは聖女と言われ、女子からは嫌われている同級生に彼氏と奪われてしまった。婚約破棄して、彼のことは忘れたのだが、彼氏の友人とばったり会ってしまう。その友人が話す彼氏の近況が衝撃的で……!?
愛しておりますわ、“婚約者”様[完]
ラララキヲ
恋愛
「リゼオン様、愛しておりますわ」
それはマリーナの口癖だった。
伯爵令嬢マリーナは婚約者である侯爵令息のリゼオンにいつも愛の言葉を伝える。
しかしリゼオンは伯爵家へと婿入りする事に最初から不満だった。だからマリーナなんかを愛していない。
リゼオンは学園で出会ったカレナ男爵令嬢と恋仲になり、自分に心酔しているマリーナを婚約破棄で脅してカレナを第2夫人として認めさせようと考えつく。
しかしその企みは婚約破棄をあっさりと受け入れたマリーナによって失敗に終わった。
焦ったリゼオンはマリーナに「俺を愛していると言っていただろう!?」と詰め寄るが……
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
不憫なままではいられない、聖女候補になったのでとりあえずがんばります!
吉野屋
恋愛
母が亡くなり、伯父に厄介者扱いされた挙句、従兄弟のせいで池に落ちて死にかけたが、
潜在していた加護の力が目覚め、神殿の池に引き寄せられた。
美貌の大神官に池から救われ、聖女候補として生活する事になる。
母の天然加減を引き継いだ主人公の新しい人生の物語。
(完結済み。皆様、いつも読んでいただいてありがとうございます。とても励みになります)
【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります
Rohdea
恋愛
───出来損ないでお荷物なだけの王女め!
“聖女”に選ばれなかった私はそう罵られて捨てられた。
グォンドラ王国は神に護られた国。
そんな“神の声”を聞ける人間は聖女と呼ばれ、聖女は代々王家の王女が儀式を経て神に選ばれて来た。
そして今代、王家には可愛げの無い姉王女と誰からも愛される妹王女の二人が誕生していた……
グォンドラ王国の第一王女、リディエンヌは18歳の誕生日を向かえた後、
儀式に挑むが神の声を聞く事が出来なかった事で冷遇されるようになる。
そして2年後、妹の第二王女、マリアーナが“神の声”を聞いた事で聖女となる。
聖女となったマリアーナは、まず、リディエンヌの婚約者を奪い、リディエンヌの居場所をどんどん奪っていく……
そして、とうとうリディエンヌは“出来損ないでお荷物な王女”と蔑まれたあげく、不要な王女として捨てられてしまう。
そんな捨てられた先の国で、リディエンヌを拾ってくれたのは、
通称・氷の貴公子様と呼ばれるくらい、人には冷たい男、ダグラス。
二人の出会いはあまり良いものではなかったけれど───
一方、リディエンヌを捨てたグォンドラ王国は、何故か謎の天変地異が起き、国が崩壊寸前となっていた……
追記:
あと少しで完結予定ですが、
長くなったので、短編⇒長編に変更しました。(2022.11.6)
〖完結〗役立たずの聖女なので、あなた達を救うつもりはありません。
藍川みいな
恋愛
ある日私は、銀貨一枚でスコフィールド伯爵に買われた。母は私を、喜んで売り飛ばした。
伯爵は私を養子にし、仕えている公爵のご子息の治療をするように命じた。私には不思議な力があり、それは聖女の力だった。
セイバン公爵家のご子息であるオルガ様は、魔物に負わされた傷がもとでずっと寝たきり。
そんなオルガ様の傷の治療をしたことで、セイバン公爵に息子と結婚して欲しいと言われ、私は婚約者となったのだが……オルガ様は、他の令嬢に心を奪われ、婚約破棄をされてしまった。彼の傷は、完治していないのに……
婚約破棄をされた私は、役立たずだと言われ、スコフィールド伯爵に邸を追い出される。
そんな私を、必要だと言ってくれる方に出会い、聖女の力がどんどん強くなって行く。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
悪役令嬢と呼ばれて追放されましたが、先祖返りの精霊種だったので、神殿で崇められる立場になりました。母国は加護を失いましたが仕方ないですね。
蒼衣翼
恋愛
古くから続く名家の娘、アレリは、古い盟約に従って、王太子の妻となるさだめだった。
しかし、古臭い伝統に反発した王太子によって、ありもしない罪をでっち上げられた挙げ句、国外追放となってしまう。
自分の意思とは関係ないところで、運命を翻弄されたアレリは、憧れだった精霊信仰がさかんな国を目指すことに。
そこで、自然のエネルギーそのものである精霊と語り合うことの出来るアレリは、神殿で聖女と崇められ、優しい青年と巡り合った。
一方、古い盟約を破った故国は、精霊の加護を失い、衰退していくのだった。
※カクヨムさまにも掲載しています。
婚約者の愛した人が聖女ではないと、私は知っています
天宮有
恋愛
私アイラは、3人いる聖女候補の1人だった。
数ヶ月後の儀式を経て聖女が決まるようで、婚約者ルグドは聖女候補のシェムが好きになったと話す。
シェムは間違いなく自分が聖女になると確信して、ルグドも同じ考えのようだ。
そして数日後、儀式の前に私は「アイラ様が聖女です」と報告を受けていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる