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46話

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 ヴァリビネ国王は洗脳と言っても、ウソをつけない状態なだけで、自分の意思や意見は言える。
 だから色々な事を聞き放題だったけど……みんなで色々な事を聞いた結果、この国はもうダメだという結論が出てしまった。
  
 ヴァリビネが小さいのは過去に侵略されたからだ、とか、元の領土を奪い返し更なる拡大は当然の権利、とか、どうせ大国は悪い事をしている、とか、最も歴史あるヴァリビネの待遇が気に入らない、とか。

 ただのグチだったり、国の古さだったらヴァルプールとかメジェンヌの方が古いはずだし。

 今のヴァリビネ国の状態なら、無欠占領も可能だけど、筋は通しておかないといけない。
 でもそれはとてつもなく……簡単だった。

「どうせ近くの国々ではツバルアンナの薬の被害が出ているのだ、それを前面に押し出し、ツバルアンナの薬で洗脳された者をアトリアが治療し、ヴァリビネ国王の陰謀を説明したらそれで終わりだ」

 事実、それを各国に伝えると、お礼を言われるほどだ。
 もうね、ため息しか出ないよ。

 メジェンヌ国王陛下にもお伺いを立ててあるけど、好き勝手やったら後が大変になっちゃう。
 それどころかヴァリビネ国は私達4人で始末をつけろ、と言われてしまった。
 そんなぁ……。




 四苦八苦しながらも、本国から応援を呼んで何とかヴァリビネ国は安定した。
 ただ地理的に本国とは国を2つ、属国であるヴァルプールを考えなくても1国が間にあるため、扱いが難しいみたいだった。
 ただ、間の1国も小国で、メジェンヌと友好関係を築けないかと模索していたら、相手国から本国に使いが行ったらしく、平等に近い条件で友好を結べたとか。

 これで国を挟んだヴァリビネ国……ヴァリビネ州との往来は簡単になった。

 さて……私的にはここからが本題で、マーテリーとその侯爵の処分だ。
 3人はそろって『処刑』と言ったけど、確かにヴァルプール国を売った売国奴だし王家を洗脳してるし実害も出てるし……擁護できる要素が無い。

 本来ならば私を追放したヴァルプール国に委ねたいけど、今はメジェンヌの属国であり、ほとんどの権限はこちらにある。
 だから……一度ヴァルプールへ行き、マーテリーの一家とまとめて処分をくだす事にした。

 セルジュがヴェリビネ州の知事を任命し、兵力を置いたらすぐにヴァルプールへと向かう。
 そうそう、ツバルアンナの薬の解毒剤、あまり数は無いけど入手できたから、コレはレオン化学技術庁長官へのお土産にする事にした。

 ヴァルプールへ入り、まずやった事はヴァルプール国の王族の洗脳を解く事だった。

「ちっ、薬の効果が弱ってる時は大人しいから、俺のやりたい放題だったのに」

 と第6王子。
 そんな事を言っているけど、しっかりとやる事はやってくれていたみたい。
 王族がこんな状態なのに国内は安定しているから、第6王子は能力は高いんだろうけど……性格が……。

 まずはマーテリーとその家族を牢屋に入れて、王族の洗脳を解いた。

「まだ信じられない……アトリア、本当に済まなかった」

 ハロルド王太子が深々と頭を下げている。
 続いてヴァルプール国王や王妃様も、他の王子も謝罪を始めた。
 この人達は被害者だ……分かっているけど、まだ心が追いつかない。
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