上 下
41 / 60

41話

しおりを挟む
「宣戦布告、だと? 何の権限があってそんなたわ言をいっている。王太子ごときが国家間の大事を決められると思っているのか!」

「決められるとも。今の私はメジェンヌ国の全権大使、メジェンヌ国王より戦争の許可ももらってある」

 確かの戦争をしても構わないって言われてるけど、何も本当に戦争する事ないじゃない!
 なんとかセルジュに落ち着いてもらって、ヴァリビネ国の国王にも落ち着いてもらわないと。

「落ち着いてくださいセルジャック王太子、ヴァリビネ国王。我々がここに来たのは、あなた方が使っている薬、ツバルアンナの薬を全て破棄してもらうためです。製造方法も含めて、ね」

 そ、そうそう! やっぱりアルバート神官長は冷静だ!

「そ、その様な薬は知らん!」

 頑なに否定するヴァリビネ国王。でも証言は取れてるし、これ以上隠しても意味が無いんだけどな。
 どうやったら薬を破棄してくれるんだろう。

「しらを切るのであれば、国中を蹂躙じゅうりんして探すしかありませんね」

 ロ、ロナウド副団長!? 騎士たる者はもっと落ち着いてください!
 でも、このまま喋ってくれなかったらどうしよう……最終手段?

「蹂躙だと……お前たちは我が国を侵略しようというのか! そんな事は許されんぞ!」

「だったら破棄してくれ。ツバルアンナの薬を」

「その様な薬は知らぬと言っている!」

「はぁ、まだ気が付かないのか? 侯爵とマーテリーの口からどうやって聞き出したかを」

「拷問でもしたのであろう。他国を侵略しようとする国だ、貴族を拷問するぐらい平気であろうな!」

 う~ん、この国王様、薬がありますって言ってるような物なんだけど、興奮状態だから気が付いてないみたい。
 侯爵とマーテリーから聞き出した方法、聖女の支配の力だけど、それを使えば簡単に、ついでに無効化できるんだけど、出来れば人非道な薬であることを認めて、しっかりと罪を償ってほしいんだけどな。

「聖女の力には色々あってな、聞かれたことを素直にペラペラ喋ってくれるモノがあるのさ」

「そ、その様な非道な力! 聖女がその様な力を持っているはずがない! お前たちも薬を使って洗脳しているのだな!」

 えー……どの口が言いますか。
 非道な力なのは認めるけど、それを使いたく無いから必死に説得してるのに。

「聖女の力は各国にも伝わっているはずだ。その力の内の一つさ。さあ、どうする?」

 顔を痙攣させながら黙り込んだ。このまま素直に認めてくれると良いんだけど。

「わ、分かった。薬はここにある、手を出してくれ」

 ほ、ついに観念してくれた。よかった、戦争なんてしたく無いもんね。
 懐に手を入れて、薬を出そうとしている。
 セルジュはソレを受け取るため手を差し出す。

 懐から手を出したヴァリビネ国王、その手には薬……ううん、ナイフが握られていた。

「貴様の様な小童に、ワシの野望を邪魔させてたまるかーーーー!!!!」

 ヴァリビネ国王はセルジュの手を引っ張り、態勢を崩したセルジュの胸にナイフを突き立てた。
 服に血がにじみ出し、ナイフを伝って血がしたたり落ちる。

 え? なに、何が起こったの? セルジュ? どうして血が流れているの? セルジュ……。

「セルジュー!」

 私の体から目を潰すほど明るい七色の光が発せられ、力が暴走を始めた。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

国外追放を受けた聖女ですが、戻ってくるよう懇願されるけどイケメンの国王陛下に愛されてるので拒否します!!

真時ぴえこ
恋愛
「ルーミア、そなたとの婚約は破棄する!出ていけっ今すぐにだ!」  皇太子アレン殿下はそうおっしゃられました。  ならよいでしょう、聖女を捨てるというなら「どうなっても」知りませんからね??  国外追放を受けた聖女の私、ルーミアはイケメンでちょっとツンデレな国王陛下に愛されちゃう・・・♡

私、女王にならなくてもいいの?

gacchi
恋愛
他国との戦争が続く中、女王になるために頑張っていたシルヴィア。16歳になる直前に父親である国王に告げられます。「お前の結婚相手が決まったよ。」「王配を決めたのですか?」「お前は女王にならないよ。」え?じゃあ、停戦のための政略結婚?え?どうしてあなたが結婚相手なの?5/9完結しました。ありがとうございました。

役立たずの私はいなくなります。どうぞお幸せに

Na20
恋愛
夫にも息子にも義母にも役立たずと言われる私。 それなら私はいなくなってもいいですよね? どうぞみなさんお幸せに。

【完結】捨てられた聖女は王子の愛鳥を無自覚な聖なる力で助けました〜ごはんを貰ったら聖なる力が覚醒。私を捨てた方は聖女の仕組みを知らないようで

よどら文鳥
恋愛
 ルリナは物心からついたころから公爵邸の庭、主にゴミ捨て場で生活させられていた。  ルリナを産んだと同時に公爵夫人は息絶えてしまったため、公爵は別の女と再婚した。  再婚相手との間に産まれたシャインを公爵令嬢の長女にしたかったがため、公爵はルリナのことが邪魔で追放させたかったのだ。  そのために姑息な手段を使ってルリナをハメていた。  だが、ルリナには聖女としての力が眠っている可能性があった。  その可能性のためにかろうじて生かしていたが、十四歳になっても聖女の力を確認できず。  ついに公爵家から追放させる最終段階に入った。  それは交流会でルリナが大恥をかいて貴族界からもルリナは貴族として人としてダメ人間だと思わせること。  公爵の思惑通りに進んだかのように見えたが、ルリナは交流会の途中で庭にある森の中へ逃げてから自体が変わる。  気絶していた白文鳥を発見。  ルリナが白文鳥を心配していたところにニルワーム第三王子がやってきて……。

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

無能だと言われ続けた聖女は、自らを封印することにしました

天宮有
恋愛
国を守る聖女として城に住んでいた私フィーレは、元平民ということもあり蔑まれていた。 伝統だから城に置いているだけだと、国が平和になったことで国王や王子は私の存在が不愉快らしい。 無能だと何度も言われ続けて……私は本当に不必要なのではないかと思い始める。 そうだ――自らを封印することで、数年ぐらい眠ろう。 無能と蔑まれ、不必要と言われた私は私を封印すると、国に異変が起きようとしていた。

ご要望通り幸せになりますね!

風見ゆうみ
恋愛
ロトス国の公爵令嬢である、レイア・プラウにはマシュー・ロマウ公爵令息という婚約者がいた。 従姉妹である第一王女のセレン様は他国の王太子であるディル殿下の元に嫁ぐ事になっていたけれど、ディル殿下は噂では仮面で顔を隠さないといけないほど醜い顔の上に訳ありの生い立ちの為、セレン様は私からマシュー様を奪い取り、私をディル殿下のところへ嫁がせようとする。 「僕はセレン様を幸せにする。君はディル殿下と幸せに」 「レイア、私はマシュー様と幸せになるから、あなたもディル殿下と幸せになってね」 マシュー様の腕の中で微笑むセレン様を見て心に決めた。 ええ、そうさせていただきます。 ご要望通りに、ディル殿下と幸せになってみせますね! ところでセレン様…、ディル殿下って、実はあなたが一目惚れした方と同一人物ってわかっておられますか? ※7/11日完結予定です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるく、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観や話の流れとなっていますのでご了承ください。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

処理中です...