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39話
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侯爵の屋敷に招かれ、私達4人は侯爵とマーテリーと共に、豪華な馬車に乗って移動した。
マーテリー……一言もしゃべらなかった。侯爵は饒舌だったけど。
「さあどうぞ! 我が家自慢のお茶をお出しします! 是非お飲みになってください!」
リビングルームに通され、ソファーに座るとすぐさま紅茶と茶菓子が並べられた。
随分と手際がいいけど、いつも用意してあるのかな?
「この紅茶は少々苦みがありますが、お菓子を食べると丁度よい美味しさになるのです!」
紅茶を飲んでほしいみたい。
へぇ、そんなに美味しいんだ。じゃあ一口……となるはずもなく、私達は部屋の人数を確認する。
私達4人以外は、侯爵とマーテリー、執事が1人とメイドが2人。
じゃあ私達以外をチョットだけ、支配の力を使用する。
「いただく前に、感謝の気持ちを込めて、祈りを捧げさせていただきます」
藍色の光が私の体から発せられ、その光は私たち以外を包み込む。
執事とメイドはゆっくりと床に倒れて眠りにつき、侯爵とマーテリーは虚ろな目をしている。
「支配下に入ったよ」
「よし、では早速聞こう。侯爵、この紅茶にツバルアンナの薬を入れたな?」
「はいって、いる」
やっぱり私達を洗脳するつもりだったんだ。
「ツバルアンナの薬を諸外国に使用するのは国王命令か?」
「はい、へいかが、セカイを、シハイする、ために、ひつようだ、から」
世界を支配? 随分と大きな話が出てきたわね。
「マーテリー、お前は侯爵の手足として、ヴァルプール国の王族にツバルアンナの薬を使用したな?」
「しま、した」
「アトリアを追放したのはなぜだ?」
「アトリア、は、カンが、いいし、かしこい。じゃま、だった」
勘が良いのかな、それに賢いなんて言われて事無い。
「聖女だという事は知らなかったのだな?」
「しらない」
単純にハロルド王太子をたらし込めるのに、私の存在が邪魔だったみたい。
それなら安心……安心はしないけど。
「私からもいくつか。侯爵、ツバルアンナの薬を使う相手国に、メジェンヌ国も入っていますか?」
「はいって、いる」
あ、やっぱり入ってるんだ。アルバート神官長はこういう所は抜かりない。
「世界を支配するために、すべての国にツバルアンナの薬を使用する予定ですか?」
「ひつよう、なら」
すべての国に……そんな大きな話だったんだ。
あれ? じゃあ近くに国はどうなってるの?
「隣接する国には、もう薬を使ってある、って事ですか?」
「となりの、くには、にしのたいこく、と、ひがしの、しょうこく1つ、いがいは、すべて」
「東の小国が遅れているのはどうしてでしょうか?」
「こうちゃを、のむ、ぶんかが、ない」
あ、ツバルアンナの薬って、紅茶として飲ませる以外には手が無いんだ。
そういえば聞いた事がある。お酒がお茶代わりの国だって。
……のんべえの国だけど、それが今回はいい方向に働いたみたい。
「それにしても、世界征服、ですか。そのような世迷言、いまだに考えている国があったのですね」
ロナウド副団長の意見ももっともで、この大陸は大きな川がいくつか流れていて、移動には大きな制限がかかる。
だから、支配するには手間がかかり過ぎるし、仮に支配したとして、川のせいで支配力が行き届かない。
反乱を起こされたら、それこそ連鎖して反乱がおこり、逆に窮地に追い込まれる。
だからこそのツバルアンナの薬だろうけど、国民の半数近くに使用しなきゃ意味がない。
そんなのはダメ。世界戦争が勃発しかねない。
これはもう……この国、ヴァリビネ国をどうにかしなきゃ収まらない。
マーテリー……一言もしゃべらなかった。侯爵は饒舌だったけど。
「さあどうぞ! 我が家自慢のお茶をお出しします! 是非お飲みになってください!」
リビングルームに通され、ソファーに座るとすぐさま紅茶と茶菓子が並べられた。
随分と手際がいいけど、いつも用意してあるのかな?
「この紅茶は少々苦みがありますが、お菓子を食べると丁度よい美味しさになるのです!」
紅茶を飲んでほしいみたい。
へぇ、そんなに美味しいんだ。じゃあ一口……となるはずもなく、私達は部屋の人数を確認する。
私達4人以外は、侯爵とマーテリー、執事が1人とメイドが2人。
じゃあ私達以外をチョットだけ、支配の力を使用する。
「いただく前に、感謝の気持ちを込めて、祈りを捧げさせていただきます」
藍色の光が私の体から発せられ、その光は私たち以外を包み込む。
執事とメイドはゆっくりと床に倒れて眠りにつき、侯爵とマーテリーは虚ろな目をしている。
「支配下に入ったよ」
「よし、では早速聞こう。侯爵、この紅茶にツバルアンナの薬を入れたな?」
「はいって、いる」
やっぱり私達を洗脳するつもりだったんだ。
「ツバルアンナの薬を諸外国に使用するのは国王命令か?」
「はい、へいかが、セカイを、シハイする、ために、ひつようだ、から」
世界を支配? 随分と大きな話が出てきたわね。
「マーテリー、お前は侯爵の手足として、ヴァルプール国の王族にツバルアンナの薬を使用したな?」
「しま、した」
「アトリアを追放したのはなぜだ?」
「アトリア、は、カンが、いいし、かしこい。じゃま、だった」
勘が良いのかな、それに賢いなんて言われて事無い。
「聖女だという事は知らなかったのだな?」
「しらない」
単純にハロルド王太子をたらし込めるのに、私の存在が邪魔だったみたい。
それなら安心……安心はしないけど。
「私からもいくつか。侯爵、ツバルアンナの薬を使う相手国に、メジェンヌ国も入っていますか?」
「はいって、いる」
あ、やっぱり入ってるんだ。アルバート神官長はこういう所は抜かりない。
「世界を支配するために、すべての国にツバルアンナの薬を使用する予定ですか?」
「ひつよう、なら」
すべての国に……そんな大きな話だったんだ。
あれ? じゃあ近くに国はどうなってるの?
「隣接する国には、もう薬を使ってある、って事ですか?」
「となりの、くには、にしのたいこく、と、ひがしの、しょうこく1つ、いがいは、すべて」
「東の小国が遅れているのはどうしてでしょうか?」
「こうちゃを、のむ、ぶんかが、ない」
あ、ツバルアンナの薬って、紅茶として飲ませる以外には手が無いんだ。
そういえば聞いた事がある。お酒がお茶代わりの国だって。
……のんべえの国だけど、それが今回はいい方向に働いたみたい。
「それにしても、世界征服、ですか。そのような世迷言、いまだに考えている国があったのですね」
ロナウド副団長の意見ももっともで、この大陸は大きな川がいくつか流れていて、移動には大きな制限がかかる。
だから、支配するには手間がかかり過ぎるし、仮に支配したとして、川のせいで支配力が行き届かない。
反乱を起こされたら、それこそ連鎖して反乱がおこり、逆に窮地に追い込まれる。
だからこそのツバルアンナの薬だろうけど、国民の半数近くに使用しなきゃ意味がない。
そんなのはダメ。世界戦争が勃発しかねない。
これはもう……この国、ヴァリビネ国をどうにかしなきゃ収まらない。
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