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30話
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マーテリー王太子妃が見つかったのは、留学に行っていた国・ヴァリビネ。
ヴァリビネの国で、貴族たちが好んで集まる装飾店で見かけたそうだ。
その時一緒に居たのが、ヴァリビネでも有数の貴族だった。
恐らくはツバルアンナの薬を持っていそうな貴族と共に行動しているという事は、やはり薬をヴァルプールで使用したと考えてしまう。
被害を広げないためにも、早く薬を見つけないといけない。
「マーテリー王太子妃には数名の密偵を付ける。絶対に逃がすわけにはいかないからな」
「それにしても、一体いつヴァルプールを脱出したのでしょうか。我がメジェンヌが加勢した時は居たのですよね?」
「間違いなく。私も騎士団副団長として王族に会っています」
「じゃあどうやって?」
4人で頭を悩ませている。
ヴァルプールが他国に攻められた時、メジェンヌはヴァルプールに加勢した。
その時には国にいたみたいだから、国を出たのはその後になる。
でもメジェンヌの騎士団が駐留しているし、出入国は厳しく管理されているはずだ。
「あれ? マーテリー王太子妃が見つかったんだから、連れて帰る事はできないの?」
「残念ながら無理だ。ヴァルプールが属国になった後ならいざ知らず、いつ国を出たかも分からない王族を、無理に連れ戻す事は難しい」
「でもほら、上の国からのお達しってことで」
「ヴァルプール王家が言えば出来るかもしれないが、今のヴァルプール王家はまともじゃない。メジェンヌからの命令を出す事は出来るが、ヴァリビネ国が拒否したらそれまでだ」
基本的に自国の、しかも貴族の客人扱いされている人物を、他国に差し出す事はしない。
やっぱり別の理由、ツバルアンナの薬を見つけて、その悪事を暴くしかないみたい。
「しかし行方不明だった王太子妃が見つかった事で、ヴァリビネ国との繋がりが確実となり、運が良ければ芋づる式にツバルアンナの薬の関係者が出てくるかもしれません」
「うむ。ロナウド副団長、返った早々で済まんが、もう一度マーテリー王太子妃の実家を調べてくれ。あの一家にはもっと裏がありそうだ」
「了解いたしました。必ずや朗報を持ち帰ります」
「レオン長官、薬が入手出来たら、我が国でも解毒剤は製造可能ですか?」
「可能だろう。私を誰だと思っている」
「アトリア、アル、お前たちは聖女の力で、ツバルアンナの薬の効果を弱められないか試すんだ」
「わかった!」
「やってみよう」
セルジュの指示の元、一斉に行動を開始した。
私とアルバート神官長は神殿に戻ってきた。
「聖女様、聖女の力というのは祝福や治癒以外にもあると、過去の記録には残っています。しかし、どれも抽象的で効果がハッキリとしません」
その記録は見た事がある。
祝福・治癒・加護・破壊・成長・支配・威圧。7つの力が記録には残っているけど、祝福・治癒・加護以外はあまり使った記録がなく、ハッキリとは分からない。
「破壊は……その名の通りなのかな。成長は? 植物の成長? 生き物も? 支配と威圧って何に使うんだろう」
「成長を試してみましょう。不明な中では一番危険がなさそうです」
「そうですね。えっと……あ、あれがいいかな」
窓際に置かれた植木鉢を見つけ、テーブルの上に持ってきた。
まだ花が咲き切ってないから、成長したら花が咲くのかな?
手をかざして祈りを捧げる……あれ? 成長させようとしてるのに、祈りはいつものでいいのかな。
でもそういえば、治癒も祝福も、神様への祈りは一緒でよかったし……あ!
「花が……咲いて……枯れましたね」
「あ、あれ?」
花が勢いよく咲いたと思ったら、凄い勢いで枯れてしまった。
成長……?
ヴァリビネの国で、貴族たちが好んで集まる装飾店で見かけたそうだ。
その時一緒に居たのが、ヴァリビネでも有数の貴族だった。
恐らくはツバルアンナの薬を持っていそうな貴族と共に行動しているという事は、やはり薬をヴァルプールで使用したと考えてしまう。
被害を広げないためにも、早く薬を見つけないといけない。
「マーテリー王太子妃には数名の密偵を付ける。絶対に逃がすわけにはいかないからな」
「それにしても、一体いつヴァルプールを脱出したのでしょうか。我がメジェンヌが加勢した時は居たのですよね?」
「間違いなく。私も騎士団副団長として王族に会っています」
「じゃあどうやって?」
4人で頭を悩ませている。
ヴァルプールが他国に攻められた時、メジェンヌはヴァルプールに加勢した。
その時には国にいたみたいだから、国を出たのはその後になる。
でもメジェンヌの騎士団が駐留しているし、出入国は厳しく管理されているはずだ。
「あれ? マーテリー王太子妃が見つかったんだから、連れて帰る事はできないの?」
「残念ながら無理だ。ヴァルプールが属国になった後ならいざ知らず、いつ国を出たかも分からない王族を、無理に連れ戻す事は難しい」
「でもほら、上の国からのお達しってことで」
「ヴァルプール王家が言えば出来るかもしれないが、今のヴァルプール王家はまともじゃない。メジェンヌからの命令を出す事は出来るが、ヴァリビネ国が拒否したらそれまでだ」
基本的に自国の、しかも貴族の客人扱いされている人物を、他国に差し出す事はしない。
やっぱり別の理由、ツバルアンナの薬を見つけて、その悪事を暴くしかないみたい。
「しかし行方不明だった王太子妃が見つかった事で、ヴァリビネ国との繋がりが確実となり、運が良ければ芋づる式にツバルアンナの薬の関係者が出てくるかもしれません」
「うむ。ロナウド副団長、返った早々で済まんが、もう一度マーテリー王太子妃の実家を調べてくれ。あの一家にはもっと裏がありそうだ」
「了解いたしました。必ずや朗報を持ち帰ります」
「レオン長官、薬が入手出来たら、我が国でも解毒剤は製造可能ですか?」
「可能だろう。私を誰だと思っている」
「アトリア、アル、お前たちは聖女の力で、ツバルアンナの薬の効果を弱められないか試すんだ」
「わかった!」
「やってみよう」
セルジュの指示の元、一斉に行動を開始した。
私とアルバート神官長は神殿に戻ってきた。
「聖女様、聖女の力というのは祝福や治癒以外にもあると、過去の記録には残っています。しかし、どれも抽象的で効果がハッキリとしません」
その記録は見た事がある。
祝福・治癒・加護・破壊・成長・支配・威圧。7つの力が記録には残っているけど、祝福・治癒・加護以外はあまり使った記録がなく、ハッキリとは分からない。
「破壊は……その名の通りなのかな。成長は? 植物の成長? 生き物も? 支配と威圧って何に使うんだろう」
「成長を試してみましょう。不明な中では一番危険がなさそうです」
「そうですね。えっと……あ、あれがいいかな」
窓際に置かれた植木鉢を見つけ、テーブルの上に持ってきた。
まだ花が咲き切ってないから、成長したら花が咲くのかな?
手をかざして祈りを捧げる……あれ? 成長させようとしてるのに、祈りはいつものでいいのかな。
でもそういえば、治癒も祝福も、神様への祈りは一緒でよかったし……あ!
「花が……咲いて……枯れましたね」
「あ、あれ?」
花が勢いよく咲いたと思ったら、凄い勢いで枯れてしまった。
成長……?
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