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10話

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「ここに居るものすべてに告げる! 我がメジェンヌ国は、ヴァルプール国との全ての関係を断つ事を私、セルジャック・ド・ジャネットの名において宣言する!!」

 セルジュさんの言葉が会場に響き渡り、一瞬の静寂の後、3人以外が私とセルジュさんの元に集まりだした。
 各国の重鎮に次々に挨拶をされ、名前を覚えるのが得意な私でも、全員は覚えきれないほど。

 呆然とするハロルド王太子とマーテリー王太子妃、そしてお父さまは、会場の片隅に追いやられている。
 他にもいた貴族や王族は、すでに姿を消したみたい。
 これ以上の恥をかかされるのは御免なんだろう。

 私の小さな復讐心のために、この国の未来は閉ざされたといっていい。
 いえ、小さくはなかったかな。それに晴れ晴れはればれしている。

 ただセルジュさんやメジェンヌ国の人には、迷惑をかけてしまった事を後悔していた。





「ん? 別に迷惑でも何でもないぞ」

 帰りの馬車の中で、申し訳なく思って頭を下げると、とてもかる~い口調で言われた。
 
「え? で、でも、国の方針とか政治的なやり取りとか、色々ありませんか?」

「あんな小さな国1つ、メジェンヌという国には何の影響もないな」

 あ、あれぇ? 国と国って、もっとこう……色々あるんじゃないの?

「ひょっとして暗い顔をしていたのは、その事を気にしていたのか?」

「えーっと、はい。国王陛下にもご迷惑をおかけしてしまうなと」

「はっはっは、まっ………………たく、気にする必要は無い。むしろあの王太子が愚か者で感謝しているくらいだ。アトリアという愛すべき女を、私とめぐり合せてくれたのだからな」

 確かにセルジュさんと知り合えたのは嬉しい事だ。聖女としての活動も楽しい。
 次期国王のセルジュさんが良いといって、私も感謝している……考える必要なんてなかった。

「じゃあ私は聖女として、メジェンヌ国に精いっぱい奉仕するね」

「ああそうしてくれ。いや、国の為ではなく、俺のために、な」

 今の言葉は聞こえないふりをした。
 セルジュさんはガンガン言い寄ってくるけど、でもやっぱり心のどこかで怖がってる。
 直前で捨てられるんじゃないかって。

 当分は1人でいいな。

 


 国に帰ってからは今まで通りにお勤めを……出来なかった。
 毎日朝から晩まで国外の偉い方々が面会に来て、朝の祈り以外は自分の時間がない。
 祈りが自分の時間かどうかはさておいて。

 そうなると当然出てくるのが、婚姻関連の話。
 聖女はメジェンヌ国に所属しているけど、必ず国内の人と結婚するわけではなく、一応恋愛の自由はあるみたい。
 だからこそ自国に取り込もうとする話が多いわけで……でも大体はその場にいる誰か、大体は神官長さんが断ってくれている。
 セルジュさんがいればセルジュさん。

「まったく、聖女様もハッキリと言えばよいのです。今はそういった話を受け付けていないと」

「いつも有難うございますアルバート神官長。言ってはいるんです。でも聞いてくれなくて」

「それならばいっそのこと結婚しますか? 私と」

 ……ん?
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