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「ここに居るものすべてに告げる! 我がメジェンヌ国は、ヴァルプール国との全ての関係を断つ事を私、セルジャック・ド・ジャネットの名において宣言する!!」
セルジュさんの言葉が会場に響き渡り、一瞬の静寂の後、3人以外が私とセルジュさんの元に集まりだした。
各国の重鎮に次々に挨拶をされ、名前を覚えるのが得意な私でも、全員は覚えきれないほど。
呆然とするハロルド王太子とマーテリー王太子妃、そしてお父さまは、会場の片隅に追いやられている。
他にもいた貴族や王族は、すでに姿を消したみたい。
これ以上の恥をかかされるのは御免なんだろう。
私の小さな復讐心のために、この国の未来は閉ざされたといっていい。
いえ、小さくはなかったかな。それに晴れ晴れしている。
ただセルジュさんやメジェンヌ国の人には、迷惑をかけてしまった事を後悔していた。
「ん? 別に迷惑でも何でもないぞ」
帰りの馬車の中で、申し訳なく思って頭を下げると、とてもかる~い口調で言われた。
「え? で、でも、国の方針とか政治的なやり取りとか、色々ありませんか?」
「あんな小さな国1つ、メジェンヌという国には何の影響もないな」
あ、あれぇ? 国と国って、もっとこう……色々あるんじゃないの?
「ひょっとして暗い顔をしていたのは、その事を気にしていたのか?」
「えーっと、はい。国王陛下にもご迷惑をおかけしてしまうなと」
「はっはっは、まっ………………たく、気にする必要は無い。むしろあの王太子が愚か者で感謝しているくらいだ。アトリアという愛すべき女を、私とめぐり合せてくれたのだからな」
確かにセルジュさんと知り合えたのは嬉しい事だ。聖女としての活動も楽しい。
次期国王のセルジュさんが良いといって、私も感謝している……考える必要なんてなかった。
「じゃあ私は聖女として、メジェンヌ国に精いっぱい奉仕するね」
「ああそうしてくれ。いや、国の為ではなく、俺のために、な」
今の言葉は聞こえないふりをした。
セルジュさんはガンガン言い寄ってくるけど、でもやっぱり心のどこかで怖がってる。
直前で捨てられるんじゃないかって。
当分は1人でいいな。
国に帰ってからは今まで通りにお勤めを……出来なかった。
毎日朝から晩まで国外の偉い方々が面会に来て、朝の祈り以外は自分の時間がない。
祈りが自分の時間かどうかはさておいて。
そうなると当然出てくるのが、婚姻関連の話。
聖女はメジェンヌ国に所属しているけど、必ず国内の人と結婚するわけではなく、一応恋愛の自由はあるみたい。
だからこそ自国に取り込もうとする話が多いわけで……でも大体はその場にいる誰か、大体は神官長さんが断ってくれている。
セルジュさんがいればセルジュさん。
「まったく、聖女様もハッキリと言えばよいのです。今はそういった話を受け付けていないと」
「いつも有難うございますアルバート神官長。言ってはいるんです。でも聞いてくれなくて」
「それならばいっそのこと結婚しますか? 私と」
……ん?
セルジュさんの言葉が会場に響き渡り、一瞬の静寂の後、3人以外が私とセルジュさんの元に集まりだした。
各国の重鎮に次々に挨拶をされ、名前を覚えるのが得意な私でも、全員は覚えきれないほど。
呆然とするハロルド王太子とマーテリー王太子妃、そしてお父さまは、会場の片隅に追いやられている。
他にもいた貴族や王族は、すでに姿を消したみたい。
これ以上の恥をかかされるのは御免なんだろう。
私の小さな復讐心のために、この国の未来は閉ざされたといっていい。
いえ、小さくはなかったかな。それに晴れ晴れしている。
ただセルジュさんやメジェンヌ国の人には、迷惑をかけてしまった事を後悔していた。
「ん? 別に迷惑でも何でもないぞ」
帰りの馬車の中で、申し訳なく思って頭を下げると、とてもかる~い口調で言われた。
「え? で、でも、国の方針とか政治的なやり取りとか、色々ありませんか?」
「あんな小さな国1つ、メジェンヌという国には何の影響もないな」
あ、あれぇ? 国と国って、もっとこう……色々あるんじゃないの?
「ひょっとして暗い顔をしていたのは、その事を気にしていたのか?」
「えーっと、はい。国王陛下にもご迷惑をおかけしてしまうなと」
「はっはっは、まっ………………たく、気にする必要は無い。むしろあの王太子が愚か者で感謝しているくらいだ。アトリアという愛すべき女を、私とめぐり合せてくれたのだからな」
確かにセルジュさんと知り合えたのは嬉しい事だ。聖女としての活動も楽しい。
次期国王のセルジュさんが良いといって、私も感謝している……考える必要なんてなかった。
「じゃあ私は聖女として、メジェンヌ国に精いっぱい奉仕するね」
「ああそうしてくれ。いや、国の為ではなく、俺のために、な」
今の言葉は聞こえないふりをした。
セルジュさんはガンガン言い寄ってくるけど、でもやっぱり心のどこかで怖がってる。
直前で捨てられるんじゃないかって。
当分は1人でいいな。
国に帰ってからは今まで通りにお勤めを……出来なかった。
毎日朝から晩まで国外の偉い方々が面会に来て、朝の祈り以外は自分の時間がない。
祈りが自分の時間かどうかはさておいて。
そうなると当然出てくるのが、婚姻関連の話。
聖女はメジェンヌ国に所属しているけど、必ず国内の人と結婚するわけではなく、一応恋愛の自由はあるみたい。
だからこそ自国に取り込もうとする話が多いわけで……でも大体はその場にいる誰か、大体は神官長さんが断ってくれている。
セルジュさんがいればセルジュさん。
「まったく、聖女様もハッキリと言えばよいのです。今はそういった話を受け付けていないと」
「いつも有難うございますアルバート神官長。言ってはいるんです。でも聞いてくれなくて」
「それならばいっそのこと結婚しますか? 私と」
……ん?
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