33 / 35
33話
しおりを挟む
卒業式が終わり、私は学園の控室で待機していた。
えっと、どうしてここで待たされているのかはわかってる。
分かってるつもりだけど……私にできる事は数少ない。
「待たせて済まないねアシュリー」
「いえ、今回の事、妹のしたことは取り返しがつきません。何なりと罰をお受けします」
バート様が控室に入ってきた。
はぁ……せっかく宮殿の仕事に就けたのに首かしら……いい部屋も見つけたのに。
「いや、まあまずは座って話をしよう」
椅子を進められて、言われるままに座る。
あれ? バート様の表情、真剣な顔はしてるけど、どこか嬉しそう。
「今回の件だけど、君に罪が及ぶことは無いから安心して欲しい」
「え? でも王族への不敬は一家そろって罰せられるはずでは?」
「前にも言ったろう? あの家の君への仕打ちは全て調べてあって、しかも君は家を出て一人暮らしを始めるんだから、罪には問われない」
「そ、そう……ですか」
そういうモノだったかしら? 私の知る限りだと、そんな事で罪は無くならないはずだけど。
でも良いというのならありがたく受けておきましょう。
「それでね、アシュリー。君はウィルソン伯爵家を継ぐつもりは無いかい?」
「……え? それはどういう意味でしょうか。私は家を出るので、もう関係を断つつもりですが」
「今回の一連の出来事で、ウィルソン伯爵は追放処分が下ったんだ。もちろんジャネットもね。ただ伯爵の領地の事もあるし、空位になってしまうのはマズイ。だからアシュリーが引き継いでくれると嬉しいんだけど、ね」
追放……処分。
それはこの国で生きていけない事を意味する。
バート様にインクをかけただけでも大罪なのに、他にも色々とあったのかもしれない。
そうね……なぜかしら、少しホッとしている自分がいる。
「伯爵を継承したとして、私に務まるとお思いですか?」
「ああ、問題ないと思っている。望むなら宮殿での仕事をしながらでも構わないと思ってる」
宮殿の仕事をしながら伯爵の仕事を? 流石に考えてなかったわね、どっちかだと思ってた。
でも考えてみれば、伯爵のほとんどの仕事は代官が肩代わりしているし、私がする事といえば報告書を読む事や決済時に忙しいくらいかしら。
あ、ダメダメ、貴族が宮殿の下仕事なんて周りが許さない。
それに……。
「いえ、やはり伯爵を継ぐなら宮殿での仕事は行けません。ただ伯爵を継ぐにあたってお願いがあるのですが」
「なんだい?」
「ウィルソンと言う名を変えてもよろしいですか?」
「名を? そうだね……何とか通してみよう。しかし新しい名はどうするんだ?」
「以前から決めていた名があるんです。『ハミルトン』と」
「ハミルトン伯爵家か……良い名前だね」
「ありがとうございます。ハミルトン伯爵になれるのならば、爵位を継ごうと思います」
「分かった。無理にでも通して見せよう」
えっと、どうしてここで待たされているのかはわかってる。
分かってるつもりだけど……私にできる事は数少ない。
「待たせて済まないねアシュリー」
「いえ、今回の事、妹のしたことは取り返しがつきません。何なりと罰をお受けします」
バート様が控室に入ってきた。
はぁ……せっかく宮殿の仕事に就けたのに首かしら……いい部屋も見つけたのに。
「いや、まあまずは座って話をしよう」
椅子を進められて、言われるままに座る。
あれ? バート様の表情、真剣な顔はしてるけど、どこか嬉しそう。
「今回の件だけど、君に罪が及ぶことは無いから安心して欲しい」
「え? でも王族への不敬は一家そろって罰せられるはずでは?」
「前にも言ったろう? あの家の君への仕打ちは全て調べてあって、しかも君は家を出て一人暮らしを始めるんだから、罪には問われない」
「そ、そう……ですか」
そういうモノだったかしら? 私の知る限りだと、そんな事で罪は無くならないはずだけど。
でも良いというのならありがたく受けておきましょう。
「それでね、アシュリー。君はウィルソン伯爵家を継ぐつもりは無いかい?」
「……え? それはどういう意味でしょうか。私は家を出るので、もう関係を断つつもりですが」
「今回の一連の出来事で、ウィルソン伯爵は追放処分が下ったんだ。もちろんジャネットもね。ただ伯爵の領地の事もあるし、空位になってしまうのはマズイ。だからアシュリーが引き継いでくれると嬉しいんだけど、ね」
追放……処分。
それはこの国で生きていけない事を意味する。
バート様にインクをかけただけでも大罪なのに、他にも色々とあったのかもしれない。
そうね……なぜかしら、少しホッとしている自分がいる。
「伯爵を継承したとして、私に務まるとお思いですか?」
「ああ、問題ないと思っている。望むなら宮殿での仕事をしながらでも構わないと思ってる」
宮殿の仕事をしながら伯爵の仕事を? 流石に考えてなかったわね、どっちかだと思ってた。
でも考えてみれば、伯爵のほとんどの仕事は代官が肩代わりしているし、私がする事といえば報告書を読む事や決済時に忙しいくらいかしら。
あ、ダメダメ、貴族が宮殿の下仕事なんて周りが許さない。
それに……。
「いえ、やはり伯爵を継ぐなら宮殿での仕事は行けません。ただ伯爵を継ぐにあたってお願いがあるのですが」
「なんだい?」
「ウィルソンと言う名を変えてもよろしいですか?」
「名を? そうだね……何とか通してみよう。しかし新しい名はどうするんだ?」
「以前から決めていた名があるんです。『ハミルトン』と」
「ハミルトン伯爵家か……良い名前だね」
「ありがとうございます。ハミルトン伯爵になれるのならば、爵位を継ごうと思います」
「分かった。無理にでも通して見せよう」
115
お気に入りに追加
3,015
あなたにおすすめの小説
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中

妹の婚約者自慢がウザいので、私の婚約者を紹介したいと思います~妹はただ私から大切な人を奪っただけ~
マルローネ
恋愛
侯爵令嬢のアメリア・リンバークは妹のカリファに婚約者のラニッツ・ポドールイ公爵を奪われた。
だが、アメリアはその後に第一王子殿下のゼラスト・ファーブセンと婚約することになる。
しかし、その事実を知らなかったカリファはアメリアに対して、ラニッツを自慢するようになり──。

異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

妹に勝手に婚約者を交換されました。が、時が経った今、あの時交換になっていて良かったと思えています。
四季
恋愛
妹に勝手に婚約者を交換されました。が、時が経った今、あの時交換になっていて良かったと思えています。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる