【完結】私よりも妹が大事なんですか？～捨てる親あれば拾う王子あり～

３１話 ジャネット視点８

　学園を退学……それはつまり、私の貴族生命が絶たれたといっていい。
　疑似社交界である学園での不祥事は、そのまま社交界に適応される。

　ずっと部屋に引きこもって思案を巡らせたけど、起死回生の手立てが思いつかない。
　どうしてこんな事に……どうしてみんな私をイジメたがるのかしら。

　気が付いたらお姉ちゃんの卒業式の日だった。
　キレイなドレスを着て、馬車に乗り込むのが見える。
　ドレス……いたずらするのをすっかり忘れていたわね。

　何とかして式をぶち壊さないと……そうだわ！

　何とか両親を説得して、退学させられた学園に入り込んだ。
　知り合いに顔を見られると騒がれるから、薄手のコートのフードを深くかぶろう。

　学園では卒業式を控えた生徒と両親で溢れかえっている。
　こんな沢山の目の前でお姉ちゃんに恥をかかせてやれるなんて、滅多にない機会だわ。
　保護者部屋に入って式の様子を見てるけど、フン、なんで泣いてる人が居るの？　バッカじゃない？

　そして遂に待っていた時が来た。
　お姉ちゃんとバート様が卒業生代表の挨拶を始めた。
　私は静かに部屋を出ると、飾られている花束を手にして花束を渡す役の近くで待機する。

　何も知らないで、のんきなお姉ちゃんね。

　挨拶が終わって壇上から降りて来る。
　花束を渡す生徒が歩きだしたから、私も後に付いて行く。
　
　立ち止まった。いまよ！

「食らいなさい！」

　私は手にしたインクの瓶をお姉ちゃんに投げつけた。
　そのキレイなドレスを真っ黒にしてやるわ！　ついでに昔みたいに醜い顔におなりなさい！

　誰かが邪魔をして、インクはドレスにはあまりかからなかったけど、顔にはインクが付いてたわ。
　ははっ！　昔みたいに右半分がアザみたいになったわね！
　清々したわ！　1人だけ良い思いをしようなんて思うからいけないのよ！

　その瞬間、私は床に叩き伏せられた。

「痛い！　なによ！　何をするのよ！」

　スーツを着た大人達にのしかかられて、私は会場の外に連れて行かれた。

「なによ！　何をするの！？　私は伯爵の娘よ！　こんな事をしていいと思っているの！？」

「黙れ不届き者が！　貴様は何をしたか分かっているのか！！！」

「お姉ちゃんにインクをかけただけじゃない！　何がいけないのよ！」

「お前はバート様にインクをかけたんだ！　この非国民めが！」

　バート様にインクを……誰が？　え？　私！？
　そういえば誰かが邪魔をしたけど、まさかアレがバート様だったの！？！？
　
「ふ、不可抗力よ！　私はお姉ちゃんにインクをかけたかっただけ！　バート様が邪魔をするのがいけないんじゃない！」

「やかましい！！！」

　私は殴られて意識を失った。