上 下
2 / 35

2話

しおりを挟む
「ジャネットがどうしてここに……?」

 妹が学園に通うのは来月に入ってからのはず。
 それが制服を着て庭を、あ、今バラ園に入ったわね。
 どういう事? どうしてジャネットが学園に居るのかしら???

 私はジャネットに見つからないように窓の横に隠れ、少しだけ顔を出して外を見る。
 どうやら一人で来たらしく、バラ園でバラの香りをかいでいる。
 ……悔しいけどサマになるわね。

「おい、ただでさえ怪しい女が、そんな事をしていると増々怪しくなるぞ?」

 後ろから声をかけられて、ビクっとして振り返る。
 そこには一人の男性が立っていた。

「バート……様」

 バート・G・ストリングフィールド。
 この国の第2王子だ。
 この方は誰もが見とれるほどの美形で、少し薄めの金髪がとても美しい。
 でもなぜか、私には突っかかって来る。

「何をコソコソ見ているんだ? ああ、あれはお前の妹じゃないか」

「はい。入学式は来月なのですが、なぜ妹がいるのかと思って見ておりました」

「ふぅ~ん」

 そんな気のない返事をすると、私の顔の横に手を付き体重をかけて窓の外を見る。
 あの、毎度毎度思うんだけど、距離近くありませんか?
 一応こう見えても婚約者がいるから、王子とはいえ、あまり近すぎるのはどうかと思うのですよ。

「お前の妹はどこか気に食わない。お前と似てないのにな」

「それは申し訳ございません。可愛げのない顔で」

 顔で、に反応したのか、バート様は私の顔を間近で見始める。
 だから距離!

「似てるけど……違うよな……」

「え? なにがですか?」

 ボソリと何かを呟いたけど、何が似てるのかしら。

「何でもない。お前は学園の成績だけは良いからな、俺の次に、だが」

「ほ、ほ、ほ。バート様の次というだけで恐れ多いですわね」

 バート様は学年トップ、私は2番目だ。
 学園という憩いの場で学ぶのはとても楽しい事だもの、成績も良くなるってものだわ。
 でもそれもあと一ヶ月で終わり……ジャネットが入ってきたら、きっとあの子は私をダシにして人気者になるんだわ。

 そうならないために、私は友人作りや色々な行事に積極的に参加して、先生や生徒たちの評価を得てきた。
 だから家ほどは酷くならないと思うんだけど……!?

「え? どうしてエリックがいるの?」

 バラ園でたわむれているジャネットの横に、エリックがいる。
 エリック……私の婚約者だ。
 もちろんジャネットとは面識もあるし、何度も双方の家に言っているから、仲が悪いわけじゃないけど。

 なにかしら、嫌な予感がするわ。
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。 ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。

結婚式の夜、夫が別の女性と駆け落ちをしました。ありがとうございます。

黒田悠月
恋愛
結婚式の夜、夫が別の女性と駆け落ちをしました。 とっても嬉しいです。ありがとうございます!

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い

猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」 「婚約破棄…ですか」 「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」 「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」 「はぁ…」 なんと返したら良いのか。 私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。 そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。 理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。 もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。 それを律儀に信じてしまったというわけだ。 金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

無能と呼ばれ、婚約破棄されたのでこの国を出ていこうと思います

由香
恋愛
家族に無能と呼ばれ、しまいには妹に婚約者をとられ、婚約破棄された… 私はその時、決意した。 もう我慢できないので国を出ていこうと思います! ━━実は無能ではなく、国にとっては欠かせない存在だったノエル ノエルを失った国はこれから一体どうなっていくのでしょう… 少し変更しました。

お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~

柚木ゆず
恋愛
 今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。  お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?  ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――

処理中です...