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22話
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「ワシはこたびの騒動の責任を取って、玉座を譲ろうと思う」
陛下のこの発言は、謁見の間をひっくり返すほどの騒動になった。
それはそうよね、陛下は名君と呼ばれていい存在だし、騒動の責任って言っても、自分が居ない所で貴族が勝手に私達を追放しただけだ。
あ、それを騒動っていうのかな。宝石の不正は……監視体制の不備?
でも、そんな事で一々責任を取ってたら、国王がコロコロ変わる事になっちゃう。
周りの人も同じ考えみたいで、考え直す様に懇願する人がほとんどだ。
「静まれ。すでに決めた事なのだ。ワシの跡取りも既に決めてある」
その言葉を聞いて、すでにくつがえす気が無い事が分かり、新たな王を迎えるために気を切り替えた。
でも……新たな王なんて決まってる。第一王子であるハインツ様だ。
ハインツ様は臣民からの信も厚く、すでに政治的な活動も行っている。
他国もハインツ様を次期国王と見ていて、それこそ数多くの縁談が持ち込まれていたはずだ。
そっか、国王になられたら、今までみたいに気軽にお茶に誘われる事も、無くなっちゃうんだな。
それに……私の夢は儚く消えてしまうのね。
マイヤー家の役目は魔の森の監視。そのため森の近くにいないといけない。
だから国王となったハインツ様と結ばれる事は……ない。
ハインツ様は覚悟を決めたようで、玉座に向けて歩き出す。
ああ、せめて魔族が襲って来ないよう、全身全霊を持って国を護って見せます。
「ハインツよ、今まで王太子としての責務、ご苦労だったな。そして―――」
聞きたくない。聞いたら決まっちゃうから。
「そしてこれからも、王族として国を盛り上げてくれ」
「はっ、これからも国を……え?」
「「「「「え?」」」」」
謁見の間にいた全員が『え?』と声を上げた。
き、聞き間違えたかな、耳は詰まって無いはずだけど。ひ、ひょっとしたら陛下が言い間違えたのかも?
「あの父上? 新国王を指名するのでは……?」
「残念ですが、継承権を持つのは兄上だけではないのですよ」
第2王子だ。そういえば呼ばれてたけど、事情をご存じなのかな。
「兄上は生真面目過ぎます。もう少し余裕を持たなければ」
第3王子もだ。私達のいない場所で、何か話合いがあったの?
「ハインツよ、お前の功績は非常に評価しておる。その功績に報いるにはどうしたらいいか、それが1番の悩みじゃった。だからワシは決心した。お前には伴侶を決める自由をやろうとな」
伴侶? お嫁さん? それがどうして功績に報いる事になるの?
「よってハインツの王位継承権を一時的に剥奪する! さあハインツよ、今のうちに伴侶を決めてしまわぬと、王位継承権が戻り、第一王子のお前が王位を継いでしまうぞ?」
どういう意味? 今のうちに決めるって、伴侶を? もう決まった人が居るの!?
隣ではお父さまもお母さまも笑ってる。2人だけじゃない、謁見の間にいる人たちも声を殺して笑ってる。
分かって無いのは私だけ????
「父上……ありがとうございます」
ハインツ様は陛下に頭を下げて、決まった人の所へと歩いて行く。
ああ、なんだ、夢はやっぱり夢なんだな。それはそうよね、たかが元男爵家の娘だもの、釣り合う訳ないわよね。
「ジェニファー」
名前を呼ばれて顔を上げると、ハインツ様が目の前に立っていた。
……え?
「ハ、ハインツ様?」
ハインツ様が私の前で片膝をつき、私の手を取った。
「ジェニファー、私と生涯を共にしてくれないか?」
ハインツ様と……生涯を共に……? それって、私を伴侶として、生涯を共に……け、結婚してくれって事!?
え、ええ!? ああ、う、うお? わたわた、私ィ!?
そんなの……そんなの!
「ふ、フツツカモノですが、よろしくおねがいします!」
なんだかカタコトだったけど、慌てて頭を下げてお願いした。
こ、これでいいんだっけ? えっと、け、結婚!?!?!?
「ありがとうジェニファー。やっと、私の夢がかなったよ」
「夢だなんてとんでもない! 私なんてハインツ様に一目ぼれしてて、お城に来る一番の目的はハインツ様にお会いする事だったんですから!」
「なんだジェニファーもだったのか。私も一目惚れだったよ」
そう言ってハインツ様は……私を抱きしめてくれた。
う、うう、うわぁ~ん、嬉しいよ~。私は人目もはばからず、声を出して泣いた。
その後の事は覚えてないけど、ハインツ様は魔の森から守護する役目であるマイヤーの家に入るため、王族ではあるけど王位継承権は無くなり、王位は第2王子が継いだ。
数日が過ぎて、やっと私は落ち着いた。
落ち着いて出てきたのが結婚式の日程だった。
王族が結婚するという事で、諸外国にも案内を出さないといけないけど、問題は魔族がまだ暴れている事だ。
この国は大丈夫だけど、魔族の群れは外国ではまだ暴れている。それが解決するまでは、とても祝福ムードにはなってくれない。
「私とハインツ様の邪魔をするなんて許せない!」
そう言って私は家を飛び出して、1人で魔族退治に向かおうとしたけど、お父さまとお母さま、そしてハインツ様も付いてきた。
こ、これって新婚旅行!?
「ジェニファー、今回は兜はかぶらないで、素顔で戦おう」
「え? どうしてですか?」
「キミの顔を見ていたいからね」
お母さまにお願いしてお化粧をしてもらった。
そして一ヶ月ほどかけて魔族を討伐し、私達は各国で英雄として扱われていた。
陛下のこの発言は、謁見の間をひっくり返すほどの騒動になった。
それはそうよね、陛下は名君と呼ばれていい存在だし、騒動の責任って言っても、自分が居ない所で貴族が勝手に私達を追放しただけだ。
あ、それを騒動っていうのかな。宝石の不正は……監視体制の不備?
でも、そんな事で一々責任を取ってたら、国王がコロコロ変わる事になっちゃう。
周りの人も同じ考えみたいで、考え直す様に懇願する人がほとんどだ。
「静まれ。すでに決めた事なのだ。ワシの跡取りも既に決めてある」
その言葉を聞いて、すでにくつがえす気が無い事が分かり、新たな王を迎えるために気を切り替えた。
でも……新たな王なんて決まってる。第一王子であるハインツ様だ。
ハインツ様は臣民からの信も厚く、すでに政治的な活動も行っている。
他国もハインツ様を次期国王と見ていて、それこそ数多くの縁談が持ち込まれていたはずだ。
そっか、国王になられたら、今までみたいに気軽にお茶に誘われる事も、無くなっちゃうんだな。
それに……私の夢は儚く消えてしまうのね。
マイヤー家の役目は魔の森の監視。そのため森の近くにいないといけない。
だから国王となったハインツ様と結ばれる事は……ない。
ハインツ様は覚悟を決めたようで、玉座に向けて歩き出す。
ああ、せめて魔族が襲って来ないよう、全身全霊を持って国を護って見せます。
「ハインツよ、今まで王太子としての責務、ご苦労だったな。そして―――」
聞きたくない。聞いたら決まっちゃうから。
「そしてこれからも、王族として国を盛り上げてくれ」
「はっ、これからも国を……え?」
「「「「「え?」」」」」
謁見の間にいた全員が『え?』と声を上げた。
き、聞き間違えたかな、耳は詰まって無いはずだけど。ひ、ひょっとしたら陛下が言い間違えたのかも?
「あの父上? 新国王を指名するのでは……?」
「残念ですが、継承権を持つのは兄上だけではないのですよ」
第2王子だ。そういえば呼ばれてたけど、事情をご存じなのかな。
「兄上は生真面目過ぎます。もう少し余裕を持たなければ」
第3王子もだ。私達のいない場所で、何か話合いがあったの?
「ハインツよ、お前の功績は非常に評価しておる。その功績に報いるにはどうしたらいいか、それが1番の悩みじゃった。だからワシは決心した。お前には伴侶を決める自由をやろうとな」
伴侶? お嫁さん? それがどうして功績に報いる事になるの?
「よってハインツの王位継承権を一時的に剥奪する! さあハインツよ、今のうちに伴侶を決めてしまわぬと、王位継承権が戻り、第一王子のお前が王位を継いでしまうぞ?」
どういう意味? 今のうちに決めるって、伴侶を? もう決まった人が居るの!?
隣ではお父さまもお母さまも笑ってる。2人だけじゃない、謁見の間にいる人たちも声を殺して笑ってる。
分かって無いのは私だけ????
「父上……ありがとうございます」
ハインツ様は陛下に頭を下げて、決まった人の所へと歩いて行く。
ああ、なんだ、夢はやっぱり夢なんだな。それはそうよね、たかが元男爵家の娘だもの、釣り合う訳ないわよね。
「ジェニファー」
名前を呼ばれて顔を上げると、ハインツ様が目の前に立っていた。
……え?
「ハ、ハインツ様?」
ハインツ様が私の前で片膝をつき、私の手を取った。
「ジェニファー、私と生涯を共にしてくれないか?」
ハインツ様と……生涯を共に……? それって、私を伴侶として、生涯を共に……け、結婚してくれって事!?
え、ええ!? ああ、う、うお? わたわた、私ィ!?
そんなの……そんなの!
「ふ、フツツカモノですが、よろしくおねがいします!」
なんだかカタコトだったけど、慌てて頭を下げてお願いした。
こ、これでいいんだっけ? えっと、け、結婚!?!?!?
「ありがとうジェニファー。やっと、私の夢がかなったよ」
「夢だなんてとんでもない! 私なんてハインツ様に一目ぼれしてて、お城に来る一番の目的はハインツ様にお会いする事だったんですから!」
「なんだジェニファーもだったのか。私も一目惚れだったよ」
そう言ってハインツ様は……私を抱きしめてくれた。
う、うう、うわぁ~ん、嬉しいよ~。私は人目もはばからず、声を出して泣いた。
その後の事は覚えてないけど、ハインツ様は魔の森から守護する役目であるマイヤーの家に入るため、王族ではあるけど王位継承権は無くなり、王位は第2王子が継いだ。
数日が過ぎて、やっと私は落ち着いた。
落ち着いて出てきたのが結婚式の日程だった。
王族が結婚するという事で、諸外国にも案内を出さないといけないけど、問題は魔族がまだ暴れている事だ。
この国は大丈夫だけど、魔族の群れは外国ではまだ暴れている。それが解決するまでは、とても祝福ムードにはなってくれない。
「私とハインツ様の邪魔をするなんて許せない!」
そう言って私は家を飛び出して、1人で魔族退治に向かおうとしたけど、お父さまとお母さま、そしてハインツ様も付いてきた。
こ、これって新婚旅行!?
「ジェニファー、今回は兜はかぶらないで、素顔で戦おう」
「え? どうしてですか?」
「キミの顔を見ていたいからね」
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