【完結】男爵令嬢が気にくわないので追放したら、魔族に侵略されました

如月ぐるぐる

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21話

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 ◆王城・客室 ジェニファー辺境伯令嬢◆

 上級魔族がどこかへ行き、シャンク公爵の爵位が剥奪されて数日が過ぎた。
 シャンク公爵は逃亡の危険があるとかで、今は一家そろって牢屋に入っている。
 あ、公爵じゃなくなったんだった、シャンク一家、ね。

 私は今、相も変わらずお姫様みたいな扱いを受けている。
 ううっ! 緊張する! だってこのドレスは動きにくいし、キラキラの髪飾りは運動したら落ちちゃうし、剣を振ろうとしたら服にアチコチが引っ張られる。
 こんなので、辺境伯の娘なんてやっていけるのかな。

 ドアがノックされた。

「ジェニファー、父上がお呼びだ。謁見の間に来てくれないか」

 ハインツ様だ! 

「はーい! いま行きます」

 お、おしとやかにぃ~おしとやかにぃ~……。
 転んだ。だってこのドレス、足元が見えないんだもん! スカートをこんなに膨らませる必要ないじゃない!

「大丈夫かいジェニファー。開けるよ?」

 扉がゆっくりと開いたから、慌てて起き上がろうとして、また転んだ。

「怪我はないかい? さあ、お手をどうぞ」

 ハインツ様が手を差し伸べてくれた。
 手を取ってゆっくり立ち上がると、腰に手を回して私をエスコートしてくれた。

「さあお嬢様、謁見の間へ参りましょうか」

 ひ、ひゃぁ~、近い近い! あ……男の人の匂いだ。
 お父さまとは違う、男性の匂い。ずっと嗅いでたい。

 ワザとゆっくり歩いて、時間をかけて謁見の間に来た。
 くぅ、もっと一緒に歩いてたかったのに!

 中に入ると陛下が玉座に座り、その前には……!

「お父さま! お母さま! 帰ってらしたんですか!?」

 謁見の間の玉座の前に、お父さまとお母さまが立っていた。

 いつ帰ってきたんだろう。今? 帰ってきたから私を呼びに来たのかな。

「ついさっき帰ってきたところだ。それにしても……随分と可愛い恰好じゃないか」

「あらあら、まるでお姫様みたいだわ」

 ドレス姿の私を可愛いって……お姫様見たいって……エヘヘ。

「さて、もう少しで全員揃うだろうから、もう少し待っていてくれ」

 陛下がお父さまと談笑を始めた。全員揃う? 他にも来るの?




 翌日の朝から、私はお姫様ドレスで謁見の間にいる。

 謁見の間には国中の貴族や各騎士団長・兵士長が集まっていて、謁見の間は人で一杯!
 いかにも重大発表をしますよ! って雰囲気。

 昨日はお父さまとお母さまが戻って来てから、王族全員と3大公爵が集まって話をした。

 いいのかな、いいのかな本当に!

 私は緊張して、頭がまともに動いてくれない。

「良く集まってくれた。今日は皆に重大な事を伝えなくてはならん」

 大体の人は予想が付いてるみたいだけど、3分の1位はざわついてる。

「静粛に。まずは追放されていたマイヤー元男爵だが、マイヤー辺境伯として、わが国で魔の森の守護を担ってもらう事にした」

 これは皆分かってたみたいで、拍手で迎えられた。

 お父さまが玉座の前に立ち辺境伯を授与され、続いて私の名前が呼ばれる。

 そして……私個人に、男爵が授与された。

 なんでも国を護った功労者という事で……あわわわ、女なのに男爵とはこれいかに!

 一応、女男爵と呼ばれるみたい。

 拍手が沸き起る。あ、えっと私も拍手しなきゃ! って私が拍手されてるのか。

 会釈をして、ガッチガチに固まった体を必死に動かして元の場所に戻る。

 はー緊張した! これで私の今日の役目は終わり! 終了!

「では次。マイヤー辺境伯を追放し、国家事業である宝石の採掘で不正を働いた者がいる」

 謁見の間の扉が開き、シャンク元公爵と、ローラ嬢、シャンク元公爵夫人が連れて来られた。
 それに続いて20名近い元貴族が入ってくる。
 それぞれが1枚の木の板で、首と両手首が固定されている。

「シャンク元公爵とその取り巻き共じゃ。余からはすでに追放を言い渡してあるが、追放された本人であるマイヤー辺境伯にも相談してな、さらなる厳罰を下す事にした」

 みんながざわめき始める。一家追放は家財全てを没収された上、乞食みたいなボロ布1枚で放り出されるから、事実上の死刑に当たるもの。
 これよりも重い罰となると1つしかない。

「シャンク一家には地下炭鉱での強制労働を命ずる」

 謁見の間が静まり返る。

 地下炭鉱。仕事としては普通にあるけれど、強制労働の、犯罪者が送られる炭鉱は、1年生きていられれば良い方で、最後は苦しみ抜いて病死すると言われている。

 いわゆる『殺してくれ』となるらしい。

 でも殺さない。働かされて働かされて、病死するしかない。

「お待ちください陛下! 地下炭鉱は、地下炭鉱だけはお許しください! それならば天使を、神聖騎士団となって国のために働きとうございます!」

 シャンク元公爵が膝をついて懇願すると、他の元貴族達も同じく膝をついて懇願を始める。

 心を入れ替えます、悪気はありませんでした、最後のチャンスをください、国のために働かせて欲しい……お父さまから聞いた事がある、絶対に改心しない人たちが使う言葉だ。

「必要ない。神聖騎士団は活動を休止するのじゃ」

 神聖騎士団になると言えば、運が良ければ生きていられる。でも大体死ぬ。

 地下炭鉱で強制労働させられるくらいなら、死んだ方がいい。そう考えての事だろうけど、それすら受け入れてもらえなかった。

「もうお前たちの顔も見たくない。連れていけ!」

 陛下の命令で、元貴族たちが兵士に連れられて謁見の間を出て行く……あれ? あれはローラ様……じゃなかった、ローラさんだ。

 なんで私を睨んでるの? そして、どうして奇声を上げて向かってくるの???


「ぎゃああーーー! がぁああーーー! いいぃいぃぃいー!」

 そういえば気がふれたって聞いたけど、どうして私の方に来るの?

 そんな……私はどうしたら……とりあえず避けた。

「ぎぎゃ!」

 ローラさんは転んで顔面を床に打ち付けたみたい。

 なんか睨んでる、私に助けろっていう事かな。

 でも手を貸して起こしたら、私が身請みうけするって取られかねないし……。
 罪自体は私なんかじゃどうする事も出来ないし。

 気の毒だとは思うけど、シャンク元公爵と一緒に悪い事をしてたっていうなら、しっかりと罪は償わないとね。

 魔族だって悪い事したらお仕置きされるんだし。

 ローラさんが兵士に連れられて行く。だからどうして私を睨むの!?

「さて、見苦しいものが居なくなった所で次の話に移ろう」

 陛下が話を進めると、第2王子と第3王子が前に出て来られた。

 ん? お二人が関係する話しなんて、昨日は聞いていなかったけど。

「今回の魔族、及び貴族の腐敗の責任を取るため、ワシは玉座を譲ろうと思う」
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