【完結】男爵令嬢が気にくわないので追放したら、魔族に侵略されました

如月ぐるぐる

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18話

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 2体の悪魔がススとなって地面に落ち、マイヤー元男爵夫妻はどこへ行ったのかと思えば、地面を悠々と歩いていた。

「あの雷、2体の悪魔が出したのよね?」

「そう思うが、自らの命と引き換えに使ったとしたら弱すぎるな。ワナか?」

「新しい支配者が何かをしたのかしら」

「う~ん、分からんが、注意しよう」

 王城へ向けて歩いている2人。
 
 先ほどの雷は、新しい支配者によって強化された2体の悪魔が、自らの命と引き換えに出した必殺技だった。

 本来ならば街1つを燃やし尽くすほどのエネルギーだったが、2人には効果がない様だ。

 まるで観光気分で周囲を見回し、巨大な城の門を開ける。

 門は魔法陣の様な模様が書いてあるが、高さ10メートルはあろう門を、マイヤー元男爵は両手で軽々と押し開けた。

 建付けの悪い金属がこすれる音がして、ゆっくり門が開くと、その先には悪魔の軍団が所狭しとひしめいていた。

「あらあら、こんな所に居たのね」

「どうりで道中が静かだったわけだな」

 悪魔の軍団は人型、獣型、鳥型、生き物には見えない物や手だけ、足だけといった、何の悪魔なのか分からない物も多数存在していた。

「あ、アナタ、ちょっと私に任せて下さる? 新技を思いついたのよ」

「新技? はっ! お前まさか、さっきの2体みたいな自爆技じゃ無いだろうな!」

「違うけど、近いわね」

「待て! ダメだダメだ!」

「落ち着いて、自爆するのは私じゃなくて、悪魔よ」

「……どういう意味だ?」

「まぁ見てて」

 元男爵夫人が1体の悪魔を指差すと、その悪魔は体が震え、まるで下手くそな操り人形みたいに歩き出す。

 その悪魔がくるりと後ろを向き、悪魔の軍団へ向けて歩き出すと、その姿は悪魔に埋もれて見えなくなる。

 爆発が起こった。

 周囲にいた悪魔を巻き沿いにして、操られた悪魔が自爆したのだ。

「おお、確かに自爆だな」

「でしょ? あまり魔力も使わないから、どんどんやっちゃうね」

 元男爵夫人が手を左から右に動かすと、すべての悪魔が震えだし、操り人形になる。

 そして支配者の城へ向けて歩き出し……大爆発を起こした。

 支配者の城はすでに半壊となり、下半分は中が丸見えだ。

「今度の支配者も最上階に居るのかな」

「きっとそうよ。自尊心と虚栄心の塊ですもの」

「じゃあ城の中を見学しながら登るとしよう」

 ◆王城・謁見の間 ジェニファー元男爵令嬢◆

 上級魔族が去り、私は謁見の間に戻った。

 中では激しい議論が交わされている。

 きっと他の国の心配をしているのね、みんな優しいんだから。

 そんな中、ハインツ王太子が私の元に駆け寄ってくる。

「ジェニファー! 報告に有ったんだけど、街の外で大量の魔族が倒れているらしい、何があったか知らないか?」

「ああ、それでしたら、私が上級魔法を使うふりをしたら、気を失ったんです。なのでしばらくしたらどこかへ行くと思います」

「上級魔法というと、黒い穴が開いたような、アレかい?」

「はい! 私も初めて使ったんですが、ステラ・バーストって言うんです」

恒星破壊魔法ステラ・バースト……?」

 ハインツ様が陛下の顔を見ると陛下は顔を横に振り、3大公爵を見ると2人が首を横に振る。

 残った1人がアゴを指でつまみながら考え事をしている。

「ステラ……バースト……確か何代目かのマイヤー家に、魔法に長けた者が居たはず。魔法の研究が大好きで、生涯をかけて完成させた魔法が確か『ステラ・バースト』だったはず」

 へーそうだったんだ。ご先祖様が考えた魔法なんだ、道理で私なんかじゃ使うのに苦労するわけだ。

「その後、マイヤー家ですら成功させたものは数名のみと……」

 ……ん?

「では、ジェニファーは歴代マイヤー家でも優秀だという事か?」

「そうなります。しかも魔法だけでなく、剣技にも優れている様子」

「凄いやジェニファー!」

「そそそ、そんな事ないでありますよ!? だってお父さまとお母さまはもっと強いんですもの! ステラ・バーストだってお母さまに教わったし、お父さまには剣で手も足も出ませんし」

「ジェニファー嬢よ、君の両親は過去に魔界の支配者を倒しておるのだ。すでに歴代最強なのじゃぞ?」

「え? 魔界に行った事は知ってますが、支配者を? ま、まっさか~、陛下もご冗談がお上手で」

「いや、ジェニファー本当の事だ。マイヤー元男爵夫妻は揃って過去最強で、魔界の支配者をデートのついでに倒してしまうつわものだ」

 魔界の支配者を……デートのついでに? いや流石にそれは……ありそう。
 あれ? じゃあその子供である私はどうして弱いの?

「ジェニファー嬢よ、君も過去最高の一人になると、常々マイヤー元男爵が自慢しておった。じゃからあれほどの強さを誇っておるのだろ?」

「で、でも陛下、私は両親から半人前だと言われ、他の同年代は魔界で散歩をしていると……」

「我らが魔界に行ったら死んでしまうよ。そもそも、普通に魔族を倒せる人間は、マイヤー家のみだからな」

「……え? でも、だって、街のお父さんお母さんは、魔族を見つけたら踏んづけて肥料にするって……」

「魔族に踏みつけられて終わりじゃ」

「今回魔族が来ても誰も出て来ないのは、小鳥がさえずってる程度に感じてるのかなって……」

「恐怖で動けなかったのだよ」

「子供は狩りの練習に低級魔族を狩るって……」

「逆に狩られる」

「……」

「…………」

「………………」

「あれぇ???」
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