17 / 23
17話
しおりを挟む
◆王城・謁見の間 ローラ公爵令嬢◆
私は突然の事で理解が出来ないでいる。
どうして? どうして喋れないの? 喋ろうとすると酷く喉が痛くなり、咳が止まらなくなる。
「コクオウ ワ ダレ ダ」
「あ、ああワシだが」
巨大な魔族が陛下と会話を始める。いけません陛下! ソレはジェニファーの手先なのですから!
でも声がでない。必死に前に立ちはだかろうとするけど、ハインツ王太子とお父様が邪魔をする。
「いきなり喋れるようになったのはいいけど、どうしてカタコトなの?」
「コトバ ヲ キュウシュウ シタ」
「吸収? 話を聞いて覚えたって事? すごく頭いいじゃない!」
魔族の赤い瞳が私を見つめる。 なに? どうしたの? どうして私を見るの?
さっきはまるで、吸い込まれるような感覚があったけど、吸収? 言葉を吸収? 私から?
私から言葉を奪ったの!?
窓の脇に置いてあった花瓶を魔族に投げつけた。
でも思ったよりも遠く、当たる事無く落ちていく。お前が、お前が私から言葉を奪ったのね!!
返せ! 私の言葉を帰しなさいよ!
手当たり次第に投げつけるけど、お父様が私を抱きかかえる。
「おおローラよ、やはりお前は気がふれていたのだな。奇声を発するだけでなく、物を壊しまくるとは……かわいそうなローラよ、もう無理をしなくてもいいんだぞ、家でゆっくり休んでいなさい。おい!」
お父様が兵士を呼び私を連れて行こうとする。
違うのですお父様! 魔族が、魔族が私の言葉を……!
腕で涙を拭うふりをして顔を隠した時、お父様の口は……笑っていた。
◆王城・謁見の間 ジェニファー元男爵令嬢◆
陛下と上級悪魔が話をしている。
魔族って、言葉が違うだけで意思の疎通が出来るんだね、知らなかった。
「魔族はどうして人を襲うのだ? なぜ魔界から出てこようとする」
「ニンゲンノ セカイヲ セイフク スルタメダ」
「征服だと!? なぜだ、魔界だけでは不服か!?」
「ニンゲンハ ヨワイ カンタンニ セイアツデキル ダカラ セイフクスル」
欲望丸出しだね魔族って。人間は弱いからって相手を襲ったりしないもん。
でなきゃ、今頃私は死んでるよ? それに人間が弱いって……悪魔ならいざ知らず、魔族の方が弱いじゃない。
自分の実力も知らないなんて、やっぱり魔族ってバカ?
その後は暫く陛下と上級魔族が話てたけど、この国・チェスター国に攻め入るにはリスクが高いが、悪魔の指示で動いているため、自分たちに行動に自由はない、そうだ。
上級魔族もつかいっ走りだもんね~、上官命令は絶対だろうし。
結局交渉は決裂したけど、しばらくはこの国にくる魔族は居ないだろう、という事で落ち着いた。
出来れば他の国にも行ってほしくないけど、まずは自国から?
◆王城・謁見の間 シャンク公爵◆
上手い具合にローラが狂ってくれたな。
これで少しはローラに責任をなすりつけられるだろう。
私はしばらくは大人しくしていた方がいいな。宝石の横領やマイヤー元男爵の追放の話が出て来ないよう、こちらでも話を誘導しなくては。
それにしても、王族や3大公爵だけでなく、どうも騎士・兵士達でもマイヤー元男爵の事を知っている者がいるようだ。
政敵にならないからと無視していたが、今後は国の全ての情報を知っておいた方がいいな。
このような失態を二度と繰り返すわけにはいかん。それに……3大公爵や王族の弱みも握れるかもしれない。
そうすれば私は、裏から国を操る真の王となれるのだ。
◆魔の森・魔界 マイヤー元男爵夫妻◆
「あれか? 随分とでっかい城だな」
マイヤー元男爵夫妻は魔界の深い森を突き進み、眼下に広がる魔界の支配者の街を見ていた。
「チェスター国のお城よりも大きいわね。今度の支配者は、自己顕示欲が強いのかしら」
「かもしれないな。悪魔は自分勝手だが、今までの支配者の中でもトップクラスに自分勝手な奴だろう」
暗く濃い魔素で満たされる魔界の中で、ひときわ魔素が強く満ちている。
まるで支配者の城から魔素が流れ出ているようだ。
「では行きましょうか、アナタ」
「ああ、頼むよ」
男爵夫人が呪文を唱えると、2人の体を透明な球体が包み込み、フワリと浮き上がって城へと飛んでいく。
悪魔や魔族を飛び越えて城の目前まで飛んできたが、空を飛ぶ悪魔に行く手を阻まれてしまう。
コウモリの翼が右に3枚、左に2枚。もう一体は右に2枚、左に3枚。
その体は筋肉がむき出しで皮膚がなく。その筋肉のスジも1本1本が別の生き物のように動いている。
人型……にも見えるが、体の形が固定されず、獣型や鳥型、ヘビみたいな姿にもなる。
「あら? この悪魔は……」
「久しぶりに見たな。前回来た時にもここに居た奴だ」
「門番さんだったのね」
「そのようだ」
2体の悪魔は左右からマイヤー元男爵夫妻に襲い掛かるが、透明な球体で全て防がれ、何を考えたか自らの体で球体を包み込んだ。
「ん? こんな技は前回は見なかったぞ?」
「新技かしら?」
2体の体が光り輝き、それに誘導されるように雷が何十発も直撃する。
雷が止み、2体の悪魔がススとなって崩れ落ちると、そこには何も無くなっていた。
私は突然の事で理解が出来ないでいる。
どうして? どうして喋れないの? 喋ろうとすると酷く喉が痛くなり、咳が止まらなくなる。
「コクオウ ワ ダレ ダ」
「あ、ああワシだが」
巨大な魔族が陛下と会話を始める。いけません陛下! ソレはジェニファーの手先なのですから!
でも声がでない。必死に前に立ちはだかろうとするけど、ハインツ王太子とお父様が邪魔をする。
「いきなり喋れるようになったのはいいけど、どうしてカタコトなの?」
「コトバ ヲ キュウシュウ シタ」
「吸収? 話を聞いて覚えたって事? すごく頭いいじゃない!」
魔族の赤い瞳が私を見つめる。 なに? どうしたの? どうして私を見るの?
さっきはまるで、吸い込まれるような感覚があったけど、吸収? 言葉を吸収? 私から?
私から言葉を奪ったの!?
窓の脇に置いてあった花瓶を魔族に投げつけた。
でも思ったよりも遠く、当たる事無く落ちていく。お前が、お前が私から言葉を奪ったのね!!
返せ! 私の言葉を帰しなさいよ!
手当たり次第に投げつけるけど、お父様が私を抱きかかえる。
「おおローラよ、やはりお前は気がふれていたのだな。奇声を発するだけでなく、物を壊しまくるとは……かわいそうなローラよ、もう無理をしなくてもいいんだぞ、家でゆっくり休んでいなさい。おい!」
お父様が兵士を呼び私を連れて行こうとする。
違うのですお父様! 魔族が、魔族が私の言葉を……!
腕で涙を拭うふりをして顔を隠した時、お父様の口は……笑っていた。
◆王城・謁見の間 ジェニファー元男爵令嬢◆
陛下と上級悪魔が話をしている。
魔族って、言葉が違うだけで意思の疎通が出来るんだね、知らなかった。
「魔族はどうして人を襲うのだ? なぜ魔界から出てこようとする」
「ニンゲンノ セカイヲ セイフク スルタメダ」
「征服だと!? なぜだ、魔界だけでは不服か!?」
「ニンゲンハ ヨワイ カンタンニ セイアツデキル ダカラ セイフクスル」
欲望丸出しだね魔族って。人間は弱いからって相手を襲ったりしないもん。
でなきゃ、今頃私は死んでるよ? それに人間が弱いって……悪魔ならいざ知らず、魔族の方が弱いじゃない。
自分の実力も知らないなんて、やっぱり魔族ってバカ?
その後は暫く陛下と上級魔族が話てたけど、この国・チェスター国に攻め入るにはリスクが高いが、悪魔の指示で動いているため、自分たちに行動に自由はない、そうだ。
上級魔族もつかいっ走りだもんね~、上官命令は絶対だろうし。
結局交渉は決裂したけど、しばらくはこの国にくる魔族は居ないだろう、という事で落ち着いた。
出来れば他の国にも行ってほしくないけど、まずは自国から?
◆王城・謁見の間 シャンク公爵◆
上手い具合にローラが狂ってくれたな。
これで少しはローラに責任をなすりつけられるだろう。
私はしばらくは大人しくしていた方がいいな。宝石の横領やマイヤー元男爵の追放の話が出て来ないよう、こちらでも話を誘導しなくては。
それにしても、王族や3大公爵だけでなく、どうも騎士・兵士達でもマイヤー元男爵の事を知っている者がいるようだ。
政敵にならないからと無視していたが、今後は国の全ての情報を知っておいた方がいいな。
このような失態を二度と繰り返すわけにはいかん。それに……3大公爵や王族の弱みも握れるかもしれない。
そうすれば私は、裏から国を操る真の王となれるのだ。
◆魔の森・魔界 マイヤー元男爵夫妻◆
「あれか? 随分とでっかい城だな」
マイヤー元男爵夫妻は魔界の深い森を突き進み、眼下に広がる魔界の支配者の街を見ていた。
「チェスター国のお城よりも大きいわね。今度の支配者は、自己顕示欲が強いのかしら」
「かもしれないな。悪魔は自分勝手だが、今までの支配者の中でもトップクラスに自分勝手な奴だろう」
暗く濃い魔素で満たされる魔界の中で、ひときわ魔素が強く満ちている。
まるで支配者の城から魔素が流れ出ているようだ。
「では行きましょうか、アナタ」
「ああ、頼むよ」
男爵夫人が呪文を唱えると、2人の体を透明な球体が包み込み、フワリと浮き上がって城へと飛んでいく。
悪魔や魔族を飛び越えて城の目前まで飛んできたが、空を飛ぶ悪魔に行く手を阻まれてしまう。
コウモリの翼が右に3枚、左に2枚。もう一体は右に2枚、左に3枚。
その体は筋肉がむき出しで皮膚がなく。その筋肉のスジも1本1本が別の生き物のように動いている。
人型……にも見えるが、体の形が固定されず、獣型や鳥型、ヘビみたいな姿にもなる。
「あら? この悪魔は……」
「久しぶりに見たな。前回来た時にもここに居た奴だ」
「門番さんだったのね」
「そのようだ」
2体の悪魔は左右からマイヤー元男爵夫妻に襲い掛かるが、透明な球体で全て防がれ、何を考えたか自らの体で球体を包み込んだ。
「ん? こんな技は前回は見なかったぞ?」
「新技かしら?」
2体の体が光り輝き、それに誘導されるように雷が何十発も直撃する。
雷が止み、2体の悪魔がススとなって崩れ落ちると、そこには何も無くなっていた。
38
お気に入りに追加
2,238
あなたにおすすめの小説
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
月が隠れるとき
いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。
その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。
という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。
小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。

【完結】べつに平凡な令嬢……のはずなのに、なにかと殿下に可愛がれているんです
朝日みらい
恋愛
アシェリー・へーボンハスは平凡な公爵令嬢である。
取り立てて人目を惹く容姿でもないし……令嬢らしくちゃんと着飾っている、普通の令嬢の内の1人である。
フィリップ・デーニッツ王太子殿下に密かに憧れているが、会ったのは宴会の席であいさつした程度で、
王太子妃候補になれるほど家格は高くない。
本人も素敵な王太子殿下との恋を夢見るだけで、自分の立場はキチンと理解しているつもり。
だから、まさか王太子殿下に嫁ぐなんて夢にも思わず、王妃教育も怠けている。
そんなアシェリーが、宮廷内の貴重な蔵書をたくさん読めると、軽い気持ちで『次期王太子妃の婚約選考会』に参加してみたら、なんと王太子殿下に見初められ…。
王妃候補として王宮に住み始めたアシュリーの、まさかのアツアツの日々が始まる?!
【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!
――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。
「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」
すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。
最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2022/02/14 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2022/02/13 小説家になろう ハイファンタジー日間59位
※2022/02/12 完結
※2021/10/18 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2021/10/19 アルファポリス、HOT 4位
※2021/10/21 小説家になろう ハイファンタジー日間 17位
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
竜神に愛された令嬢は華麗に微笑む。〜嫌われ令嬢? いいえ、嫌われているのはお父さまのほうでしてよ。〜
石河 翠
恋愛
侯爵令嬢のジェニファーは、ある日父親から侯爵家当主代理として罪を償えと脅される。
それというのも、竜神からの預かりものである宝石に手をつけてしまったからだというのだ。
ジェニファーは、彼女の出産の際に母親が命を落としたことで、実の父親からひどく憎まれていた。
執事のロデリックを含め、家人勢揃いで出かけることに。
やがて彼女は別れの言葉を告げるとためらいなく竜穴に身を投げるが、実は彼女にはある秘密があって……。
虐げられたか弱い令嬢と思いきや、メンタル最強のヒロインと、彼女のためなら人間の真似事もやぶさかではないヒロインに激甘なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:4950419)をお借りしています。
婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】
「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」
私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか?
※ 他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる