【完結】男爵令嬢が気にくわないので追放したら、魔族に侵略されました

如月ぐるぐる

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17話

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 ◆王城・謁見の間 ローラ公爵令嬢◆

 私は突然の事で理解が出来ないでいる。
 
 どうして? どうして喋れないの? 喋ろうとすると酷く喉が痛くなり、咳が止まらなくなる。

「コクオウ ワ ダレ ダ」

「あ、ああワシだが」

 巨大な魔族が陛下と会話を始める。いけません陛下! ソレはジェニファーの手先なのですから!

 でも声がでない。必死に前に立ちはだかろうとするけど、ハインツ王太子とお父様が邪魔をする。

「いきなり喋れるようになったのはいいけど、どうしてカタコトなの?」

「コトバ ヲ キュウシュウ シタ」

「吸収? 話を聞いて覚えたって事? すごく頭いいじゃない!」

 魔族の赤い瞳が私を見つめる。 なに? どうしたの? どうして私を見るの?
 さっきはまるで、吸い込まれるような感覚があったけど、吸収? 言葉を吸収? 私から?

 私から言葉を奪ったの!?

 窓の脇に置いてあった花瓶を魔族に投げつけた。
 でも思ったよりも遠く、当たる事無く落ちていく。お前が、お前が私から言葉を奪ったのね!!

 返せ! 私の言葉を帰しなさいよ!

 手当たり次第に投げつけるけど、お父様が私を抱きかかえる。

「おおローラよ、やはりお前は気がふれていたのだな。奇声を発するだけでなく、物を壊しまくるとは……かわいそうなローラよ、もう無理をしなくてもいいんだぞ、家でゆっくり休んでいなさい。おい!」

 お父様が兵士を呼び私を連れて行こうとする。

 違うのですお父様! 魔族が、魔族が私の言葉を……!

 腕で涙を拭うふりをして顔を隠した時、お父様の口は……笑っていた。

 ◆王城・謁見の間 ジェニファー元男爵令嬢◆

 陛下と上級悪魔が話をしている。

 魔族って、言葉が違うだけで意思の疎通が出来るんだね、知らなかった。

「魔族はどうして人を襲うのだ? なぜ魔界から出てこようとする」

「ニンゲンノ セカイヲ セイフク スルタメダ」

「征服だと!? なぜだ、魔界だけでは不服か!?」

「ニンゲンハ ヨワイ カンタンニ セイアツデキル ダカラ セイフクスル」

 欲望丸出しだね魔族って。人間は弱いからって相手を襲ったりしないもん。

 でなきゃ、今頃私は死んでるよ? それに人間が弱いって……悪魔ならいざ知らず、魔族の方が弱いじゃない。

 自分の実力も知らないなんて、やっぱり魔族ってバカ?

 その後は暫く陛下と上級魔族が話てたけど、この国・チェスター国に攻め入るにはリスクが高いが、悪魔の指示で動いているため、自分たちに行動に自由はない、そうだ。

 上級魔族もつかいっ走りだもんね~、上官命令は絶対だろうし。

 結局交渉は決裂したけど、しばらくはこの国にくる魔族は居ないだろう、という事で落ち着いた。

 出来れば他の国にも行ってほしくないけど、まずは自国から?

 ◆王城・謁見の間 シャンク公爵◆

 上手い具合にローラが狂ってくれたな。

 これで少しはローラに責任をなすりつけられるだろう。

 私はしばらくは大人しくしていた方がいいな。宝石の横領やマイヤー元男爵の追放の話が出て来ないよう、こちらでも話を誘導しなくては。

 それにしても、王族や3大公爵だけでなく、どうも騎士・兵士達でもマイヤー元男爵の事を知っている者がいるようだ。

 政敵にならないからと無視していたが、今後は国の全ての情報を知っておいた方がいいな。

 このような失態を二度と繰り返すわけにはいかん。それに……3大公爵や王族の弱みも握れるかもしれない。

 そうすれば私は、裏から国を操る真の王となれるのだ。

 ◆魔の森・魔界 マイヤー元男爵夫妻◆

「あれか? 随分とでっかい城だな」

 マイヤー元男爵夫妻は魔界の深い森を突き進み、眼下に広がる魔界の支配者の街を見ていた。

「チェスター国のお城よりも大きいわね。今度の支配者は、自己顕示欲が強いのかしら」

「かもしれないな。悪魔は自分勝手だが、今までの支配者の中でもトップクラスに自分勝手な奴だろう」

 暗く濃い魔素で満たされる魔界の中で、ひときわ魔素が強く満ちている。

 まるで支配者の城から魔素が流れ出ているようだ。

「では行きましょうか、アナタ」

「ああ、頼むよ」

 男爵夫人が呪文を唱えると、2人の体を透明な球体が包み込み、フワリと浮き上がって城へと飛んでいく。

 悪魔や魔族を飛び越えて城の目前まで飛んできたが、空を飛ぶ悪魔に行く手を阻まれてしまう。

 コウモリの翼が右に3枚、左に2枚。もう一体は右に2枚、左に3枚。
 その体は筋肉がむき出しで皮膚がなく。その筋肉のスジも1本1本が別の生き物のように動いている。
 人型……にも見えるが、体の形が固定されず、獣型や鳥型、ヘビみたいな姿にもなる。

「あら? この悪魔は……」

「久しぶりに見たな。前回来た時にもここに居た奴だ」

「門番さんだったのね」

「そのようだ」

 2体の悪魔は左右からマイヤー元男爵夫妻に襲い掛かるが、透明な球体で全て防がれ、何を考えたか自らの体で球体を包み込んだ。

「ん? こんな技は前回は見なかったぞ?」

「新技かしら?」

 2体の体が光り輝き、それに誘導されるように雷が何十発も直撃する。

 雷が止み、2体の悪魔がススとなって崩れ落ちると、そこには何も無くなっていた。
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