【完結】男爵令嬢が気にくわないので追放したら、魔族に侵略されました

如月ぐるぐる

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12話

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「よーっし、単体の上級魔法なら、城壁にも影響がないよね!」

 目の前に立ちはだかる上級魔族の個体差を確認して、有効そうな魔法を選ぶ。

 翼の人型は剣スキルでいいかな、丸い体で翼が小さい人型は切り裂き、鳥型のは風か凍結? サイ型は燃えるかな、それと……。
 
 よし! 1体ずつ確実に落としていこう!

金盞花きんせんか!」

 大きな翼をもつ人型魔族の上に飛び、大型の剣を頭上から振り下ろす。

 すると、まるで巨大なフタがされた様に、魔族は地面に押しつぶされる。

 巨大な体は地面にめり込み、倒せはしなかったけど動きを封じる事が出来た。

 丸い魔族は私のさらに上に飛び、その巨体で押しつぶすつもりだ。

鬼百合おにゆり!」

 剣を大きなお腹に突き刺すと、剣を中心に花が咲くようにお腹が裂けていき、背中まで裂けたら小さな爆発と共に体が四散した。

 サイの魔族が数本あるツノを突き出して突っ込んでくる。
 かと思うと私に向けてツノが伸び、避けてもしつこく追いかけてくる。

「太陽よ! その温かさでの者を突き崩せ! レイ・ブレイド!」

 太陽の温かさを持つ光る剣が現れ、サイの魔物目がけて剣先から一筋の線が放たれる。
 線はサイを貫通し、一瞬で全身が炎に包まれた。

 地響きが起こる。更に巨大な魔族でも来たんだろうか。
 しかし地響きの発生源は地面の中のように感じる。

 足元を見ると亀裂が入り、私の足元の地面は何かに飲み込まれていった。

 ミミズ型の魔族だ。こいつは丸い口に無数の牙を生やし、通り道にある物全てを飲み尽くす奴。

 私をその大きな口で丸呑みにしようとしてるけど、そんなのまっぴら御免!


「アース・ミックス・プロセッサー!」
 
 大地の魔法を発動させ、巨大なミミズよりも更に大きな岩の筒が現れる。
 筒の中では巨大な刃が回転し、中の物を全て切り刻んで耕す。

 それがヘビのように動き回り、ミミズのついでに他の魔族も飲み込ませた。

 これで半分くらいは倒せたかな~。

 岩の筒が地面をうねり回る間、空を飛んでる魔族が私目がけて突っ込んでくる。

 鳥型の魔族と、あ、あれは厄介だな、小型の虫型の魔族がいる。

 小さいくせに上級魔族なもんだから、攻撃が当たりにくい、硬い、でも攻撃が痛い、と3拍子揃ってる。

 まずは大きな鳥の魔族から!

「エア・ストリング!」

 私の指先から細い竜巻が発生し、鳥の魔族に向けて鞭のように振るう。
 中々に避けるのが上手いわね、でも近くを通るだけで乱気流が発生するから飛んでいられないでしょ!

 鳥の魔族が風にあおられて飛んでいられなくなり、落下を始める。

 偶然だけど、虫の魔族も一緒に落ちてきた。

「よし! 一網打尽だ!」

 指先を回転させて、落ちてくる2体を竜巻の糸で絡めとると、竜巻の回転で体が締め上げられ動けなくなり、思いっきり地面に叩きつけた。

 流石の上級魔族でも、数百メートル上空から勢いよく地面に叩きつければ動けなくなる。

 エア・ストリングってどれだけ伸びるんだろう。

 お母さまは山一つを囲めるって言ってたけど。

 さてさて、残りを片付けましょうか!





 一通り討伐が終わり、街の中が心配になったから街に入る事にした。

「そういえばここに来るのは久しぶり。ハインツ王太子はお元気かしら?」

 それにしても、マンティコアの頭蓋骨の兜は暑いわね。
 返り血もいっぱい浴びちゃった。
 


 ◆王城・公爵令嬢ローラ◆

 窓から外を見ていると、天使さまが魔族を倒してくれている。

 ああ、私は罪な女。ハインツ王太子、あなたが愛してくれたローラはあなたを置いて旅立ちます。

 でもご安心ください、いつでも天から見守っております。

 街の外が静かになった。終わったのかしら。

 ん? 崩れた城壁から何かが入ってくる……!?

「ひ、ひぃぃぃいいぃいいい! 悪魔! あの禍々しい姿は悪魔だわ!」

 2本の角が額から後ろに向けて生え、骨がむき出しの顔。巨大で黒い剣を背中に背負い、全身が赤黒い。

 あれは……あれは古代書で見た悪魔そのものだわ!

 逃げようとしても、おぞましい姿で腰が抜けて動けない。

 私は……私は悪魔に魂を売ってしまったの? 神よ、あなたは私を裏切ったのね!!

 体の震えが止まらず、歯がカチカチ音を立てる。そして……失禁してしまった。


 ◆王城・ハインツ王太子◆

「父上、外が静かになりました」

「どうやら終わったようだな」

「アレはマイヤー元男爵でしょうか?」

「魔法を使っていたからな、カタリナ元男爵夫人ではないか?」

 謁見の間で対魔族の指揮を執っていたところ、突如として現れた存在が、魔族の軍勢を蹴散らしてくれた。

 私が知る限り、このような事が出来るのはマイヤー元男爵家のみ。
 という事は、マイヤー元男爵は我々を見捨ててはいなかったようだ。
 
「それでは父上、マイヤー元男爵の爵位を戻されますか?」

「それなんだがな、ワシはマイヤーを男爵に戻すつもりは無いのだよ」

「父上!? なぜですか!!」

 父上に問いただそうとした所、扉の外が異常に騒がしくなった。
 何事だ?

 聞こえてくるのは『悪魔!』『陛下お逃げください!』『そこをどかぬか!』など、聞こえてくる範囲では良い状況とは言えない様だ。

 扉が開けられるとそこには……悪魔の様な存在が立っていた。
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