【完結】男爵令嬢が気にくわないので追放したら、魔族に侵略されました

如月ぐるぐる

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10話

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「お父様! 神聖騎士団の候補を見つけてきました!」

 軍議の翌日、私は早速奴隷たちを用意した事を伝えた。

 これできっと何人かは神聖騎士団になれるはず。そうしたら第3波だってしのげるわ!

「ローラ、ダメなんだ。天使はな、薬は沢山用意できないんだ」

「え? でも15人居たって事は、15万人に使ったのですよね?」

「そうだ。30年~40年かけてね」

 天使。
 天使に耐えられるか調べる薬を投与し、生存・精神に異常をきたさなかった者が神聖騎士団となる。

 天使さえ投与してしまえば、年齢性別に関係なく脅威的な力を発揮するため、神聖騎士団の団員は統一性が無い。

 今回出撃した神聖騎士団の最年長は64歳の女性。

 40年前に神聖騎士団入りを果たしたのだそうな。

「じゃあ調べる薬も天使も、今は無いという事?」

「確か、年間でも5千人が限界のはずだ」

 それじゃあ5千人分あったとしても、神聖騎士団を名乗れるは出来ないかもしれない……なんて事、そんな危機管理能力だから魔族に攻められるのよ。

「それとローラ、神聖騎士団候補をどうやって見つけた?」

「え? スラムに一杯おりましたわ。でも足りませんでしたので、そこら辺にいる者を適当に」

「……そうか。ではその者たちはもう使えまい。帰してやるのだ」

「そうですね、役に立たないのなら、囲っておく必要はありませんものね」


 ◆シャンク公爵・自室◆

 何という事だ。ローラを王太子に、最低でも三大公爵の長男に嫁がせるつもりが、このままでは家自体が無くなってしまう。

 それもこれもローラの我儘わがままを聞いたからだ。

 こうなってしまっては仕方がない、ローラを嫁がせるのは諦めて、何とか家を、爵位を護らなくてはいけない。

 どうする? なんとかローラに全ての責任を背負わせて、私は可愛い娘の願いを断れなかった、という形に持って行けないだろうか。

 下手に証言させないように、気でも触れてくれればよいのだが……。



 ◆王城・謁見の間 対魔族会議 ローラ視点◆

「騎士や兵士たちはどんな状況か」

「はっ、騎士は軽症者は復帰しました。しかし重傷者の数が多く、80%の戦力といった所です」

「兵士も状況は似ております。こちらは何とか85%まで持って行けます」

 なんだ、結構回復してるじゃない。重傷者も盾を持たせれば、障害物として使えるのではなくて?

「よし。それでは魔族の第3波の様子はどうか」

「はっ父上。魔族は現在街から1日の距離にいます。……数は……総数約1万5千、上級魔族の姿も確認されております」

「そうか……ついに来てしまったか」

 上級魔族? なにかしら、随分と偉そうな呼び方だけど。

「諸君、明日が正念場だ。すべての力を出し切り、魔族との戦いに勝利するのだ!」

 


 翌日の早朝、けたたましい鐘の音が街中に鳴り響く。

 昨晩は安全のために王城で過ごしたけど、ここまで鐘の音が聞こえてくる

 うるさい。

 まさか魔族が!?

 ベッドから跳ね起きて窓を開けると、街の入り口の門辺りに何かが見えた。

 ……? なに? あれは。

 ゾウ? でも鼻が無いし、よく見ると足が6本ある。それに……どうして城壁の上から見えるの!?

 城壁は建物の3階か4階の高さがあるのに、それ以上に大きな生き物ってなに!?!?

 地響きのような音が聞こえる。それと同時に城壁が……崩れ始める。

 ど、どういう事!? 魔族って人間よりも少し大きい程度じゃないの!?

 魔族って……魔族ってあんなにも、あんなにも巨大でいるの?

 城壁の上からいくつもの顔が見える。

 姿かたちは違うけど、きっと、きっとアレが魔族……上級魔族なんだ。

 私は力が入らず崩れ落ち、初めて城内が喧騒に包まれている事に気が付いた。

「だ……誰か助け……」

 逃げようにも足に力が入らず、声も出ない。

 早く、早く誰か助けなさい……。

 外からひときわ大きな音がした。必死に腕を使って窓を覗き込むと、城壁が崩れ去っている。

 魔族が……街に入ってくる。

 6本足の魔族はその場でしゃがみ込み、地面に顔を付ける。

 ……? なに? 動かなくなった。


 ◆王都城壁付近・ジェニファー◆

「こーのーぉ! 城壁は脆いんだから、ぶつかっちゃダメでしょ!」

 上級魔族の獣種の足6本を斬り落とし、何とか街の中に入るのを防げた。

 もう、これだから獣種はキライよ。戦うならもう少し頭を使わないとね。

「えーっと、コレはここに放置しておけばいいかな。上手い具合に崩れた城壁を塞いでくれてるし」

 よし次は外の魔族!

 上級魔族の数は多くないけど、低級中級が山のようにいるから、コレを何とかしよう。

 両腕のドラゴンの鱗で作った籠手の先端を引っ張り出すと、右手が上あご、左手が下あごになった。

 両腕を合わせてドラゴンの顔を作り、前に突き出す。

「フレイム・ブレス!」

 腕から超高温の炎が噴き出し、私の前にいる低級中級魔族が一瞬で灰になる。

 流石に上級は防御してて倒せないな。

 周囲の魔族を灰にして、残った上級を倒す事にした。
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