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9話
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「お父様、お父様!」
「なんだ騒々しい」
屋敷に戻った私は、神聖騎士団の増員をお願いしに行った。
あれだけ強いんですもの、市民でも罪人でも使えばいいんだわ!
「あれか……残念だがそれは出来ない」
「どうして? 私は神聖騎士団の戦いを観てきたわ。あれなら魔族なんて怖くない!」
「神聖騎士団はな……元々は死刑になる犯罪者なのだ。死刑になるか薬の人体実験になるかを選択させ、その中から生き残った数少ない者たちなのだ。薬を投与して生き残るのは約1%、さらに意識を保っていられるのはさらに1%……犯罪者1万人に1人しか使い物にならないのだよ」
「なら市民を使えば良いわ! 湯水のごとく湧いて来るんですもの!」
「ローラ、それを言ったから陛下はお怒りになり、私達貴族に使用すると言われたのだぞ?」
「そ、そうだったわね」
もうっ! 陛下は優しすぎるのよ。私達王侯貴族を守る事こそが国の為だっていうのに。
でもこのままじゃ魔族の第3波が街に攻め込んできちゃう。
まったく、あのグズ女は何をやっているのよ!
自分の役目を忘れてしまうほど愚か者だったのかしら。
娘が娘なら親も親ね、男爵という爵位を持ちながら、たった一言で国から逃げてしまうんだもの。
ううん、ダメよローラ。私がしっかりしないと!
◆魔の森最深部・マイヤー元男爵夫婦◆
「あなた、この辺りなら開けられると思うわ」
「よし、それでは魔界への門を開けよう」
魔の森の結界が崩壊し、外から抑え込む事が不可能になったため、魔界へと繋がる門を探していた。
しかし広大な魔の森の中から門を探す事は至難であり断念。
それならばと、自ら魔界への門を開くことにしたのだ。
「御館さま、王都に魔族が攻め入りました」
2人の背後に、突如として片膝をつく者が現れた。
全身が黒装束で、目鼻口さえも覆われており、額には目が描かれている。
「そうか。お前たちはどうだ?」
「我らも上級魔族を止めてはおりますが、低級・中級までは手が回りません」
「それでは上級は止めていられるのですね?」
「申し訳ありません奥方様、上級魔族の数も増えており、我々ではもう……」
状況は思った以上に良くない。ここまで魔族の動きが活発になるとは思っていなかったのだ。
「では神聖騎士団が出てくるのは時間の問題だな。だがそうなると王都は……」
「あらアナタ、私達には頼りになる娘がいるじゃありませんか」
「それはそうなんだが……ジェニファーはオラフに預けてあるからなぁ」
「それですが、実はメルガスト共和連邦にも少数ながら魔族が侵入し、ジェニファー様が迎撃されました」
「ほう? 自分の強さを理解していないジェニファーが、よく動こうと思ったもんだ」
「私達の娘ですもの、きっと『大人は子供を護るのに忙しい』とかいって、出て行っちゃったのよ」
……以心伝心?
「ではジェニファーに手紙を書くから、渡して来てくれ」
「承知いたしました」
ちなみに会話の間は、当たり前のように魔族と戦っていた。
魔族と戦いながら……いや、むしろ会話がメインだと言わんばかりに戦っていたのだ。
◆メルガスト共和連邦・衛兵詰め所 ジェニファー◆
「ジェニファーちゃん! もう1度手合わせを頼む!」
「望むところです!」
最近は早朝訓練に、よく隊長さんと手合わせしてる。
とはいっても全然本気を出してくれないから、あんまり訓練にならないし、結局は夜にも訓練をしている。
でも体重は元に戻った! 睡眠不足と引き換えに……。
「クソ! また負けた! あーもう時間か、また明日たのむ!」
そう言ってどこかへ行ってしまった。ふふふ、私を女の子扱いしてくれるのは嬉しいけど、そこまで手を抜かなくてもいいのに。
お世話になっているオラフ家に戻り、朝食の準備をする。
そんな時、窓から手紙が投げ入れられた。あれ? これって確か、お父さまの仕事仲間が使ってたやつだ。
【ジェニファーへ】
お父さまの字だ!
◆チェスター国・王城 謁見の間 公爵令嬢ローラ◆
「神聖騎士団の数が多かった、だと?」
「そうです! あれだけ圧倒的な力があるのなら、半分で良かったのではありませんか!?」
昨日の今日で陛下に反発してる貴族がいる。
15人の神聖騎士団を全員使うのはムダだった、と言いたいみたい。
「お前の言う通り半分にしたとして、魔族が突破してきたらどうする?」
「少数の魔族ならば、騎士・兵士で対応すればよいのです! 先の戦いで30%が失われたとはいえ、まだ70%も居ます! 出来るはずです!」
陛下が騎士団長・兵長と小声で話しをしている。
「確かに70%は無事だ。だがその半数以上は怪我人であり、とても魔族と戦える状態では無い様だな」
「しかし、しかしそれでは第3波が来たらどうするのですか!」
「それを考えるために集まっておる。他にいう事は無いか? なければ下がるがよい」
貴族が顔をしかめながら下がり、軍議が再開される。
でも出てくる意見は消極的な物ばかりで、とても魔族を迎撃できる物はなかった。
やっぱり大人って役に立たないわね。私が本気を出すしかないわ!
そうして私は5万人以上の奴隷を集めた。
「なんだ騒々しい」
屋敷に戻った私は、神聖騎士団の増員をお願いしに行った。
あれだけ強いんですもの、市民でも罪人でも使えばいいんだわ!
「あれか……残念だがそれは出来ない」
「どうして? 私は神聖騎士団の戦いを観てきたわ。あれなら魔族なんて怖くない!」
「神聖騎士団はな……元々は死刑になる犯罪者なのだ。死刑になるか薬の人体実験になるかを選択させ、その中から生き残った数少ない者たちなのだ。薬を投与して生き残るのは約1%、さらに意識を保っていられるのはさらに1%……犯罪者1万人に1人しか使い物にならないのだよ」
「なら市民を使えば良いわ! 湯水のごとく湧いて来るんですもの!」
「ローラ、それを言ったから陛下はお怒りになり、私達貴族に使用すると言われたのだぞ?」
「そ、そうだったわね」
もうっ! 陛下は優しすぎるのよ。私達王侯貴族を守る事こそが国の為だっていうのに。
でもこのままじゃ魔族の第3波が街に攻め込んできちゃう。
まったく、あのグズ女は何をやっているのよ!
自分の役目を忘れてしまうほど愚か者だったのかしら。
娘が娘なら親も親ね、男爵という爵位を持ちながら、たった一言で国から逃げてしまうんだもの。
ううん、ダメよローラ。私がしっかりしないと!
◆魔の森最深部・マイヤー元男爵夫婦◆
「あなた、この辺りなら開けられると思うわ」
「よし、それでは魔界への門を開けよう」
魔の森の結界が崩壊し、外から抑え込む事が不可能になったため、魔界へと繋がる門を探していた。
しかし広大な魔の森の中から門を探す事は至難であり断念。
それならばと、自ら魔界への門を開くことにしたのだ。
「御館さま、王都に魔族が攻め入りました」
2人の背後に、突如として片膝をつく者が現れた。
全身が黒装束で、目鼻口さえも覆われており、額には目が描かれている。
「そうか。お前たちはどうだ?」
「我らも上級魔族を止めてはおりますが、低級・中級までは手が回りません」
「それでは上級は止めていられるのですね?」
「申し訳ありません奥方様、上級魔族の数も増えており、我々ではもう……」
状況は思った以上に良くない。ここまで魔族の動きが活発になるとは思っていなかったのだ。
「では神聖騎士団が出てくるのは時間の問題だな。だがそうなると王都は……」
「あらアナタ、私達には頼りになる娘がいるじゃありませんか」
「それはそうなんだが……ジェニファーはオラフに預けてあるからなぁ」
「それですが、実はメルガスト共和連邦にも少数ながら魔族が侵入し、ジェニファー様が迎撃されました」
「ほう? 自分の強さを理解していないジェニファーが、よく動こうと思ったもんだ」
「私達の娘ですもの、きっと『大人は子供を護るのに忙しい』とかいって、出て行っちゃったのよ」
……以心伝心?
「ではジェニファーに手紙を書くから、渡して来てくれ」
「承知いたしました」
ちなみに会話の間は、当たり前のように魔族と戦っていた。
魔族と戦いながら……いや、むしろ会話がメインだと言わんばかりに戦っていたのだ。
◆メルガスト共和連邦・衛兵詰め所 ジェニファー◆
「ジェニファーちゃん! もう1度手合わせを頼む!」
「望むところです!」
最近は早朝訓練に、よく隊長さんと手合わせしてる。
とはいっても全然本気を出してくれないから、あんまり訓練にならないし、結局は夜にも訓練をしている。
でも体重は元に戻った! 睡眠不足と引き換えに……。
「クソ! また負けた! あーもう時間か、また明日たのむ!」
そう言ってどこかへ行ってしまった。ふふふ、私を女の子扱いしてくれるのは嬉しいけど、そこまで手を抜かなくてもいいのに。
お世話になっているオラフ家に戻り、朝食の準備をする。
そんな時、窓から手紙が投げ入れられた。あれ? これって確か、お父さまの仕事仲間が使ってたやつだ。
【ジェニファーへ】
お父さまの字だ!
◆チェスター国・王城 謁見の間 公爵令嬢ローラ◆
「神聖騎士団の数が多かった、だと?」
「そうです! あれだけ圧倒的な力があるのなら、半分で良かったのではありませんか!?」
昨日の今日で陛下に反発してる貴族がいる。
15人の神聖騎士団を全員使うのはムダだった、と言いたいみたい。
「お前の言う通り半分にしたとして、魔族が突破してきたらどうする?」
「少数の魔族ならば、騎士・兵士で対応すればよいのです! 先の戦いで30%が失われたとはいえ、まだ70%も居ます! 出来るはずです!」
陛下が騎士団長・兵長と小声で話しをしている。
「確かに70%は無事だ。だがその半数以上は怪我人であり、とても魔族と戦える状態では無い様だな」
「しかし、しかしそれでは第3波が来たらどうするのですか!」
「それを考えるために集まっておる。他にいう事は無いか? なければ下がるがよい」
貴族が顔をしかめながら下がり、軍議が再開される。
でも出てくる意見は消極的な物ばかりで、とても魔族を迎撃できる物はなかった。
やっぱり大人って役に立たないわね。私が本気を出すしかないわ!
そうして私は5万人以上の奴隷を集めた。
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