【完結】男爵令嬢が気にくわないので追放したら、魔族に侵略されました

如月ぐるぐる

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7話

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 ◆チェスター国・公爵令嬢ローラ視点・謁見の間◆

「つまりシャンク公爵、君が男爵を追放したことが、今回の魔族侵攻の原因なのだ」

「そのような……そのような事は知らされていない……そのような者に! 世界の行く末を任せる方がどうかしている!!」

「あの家系しか居ないのだよ、能力を引き継げたのは」

「なん……ですと?」

「マイヤー元男爵家の能力はあまりにも強力すぎるのだ。稀に近い力を持つ者が現れるが、子孫は残っていない。マイヤー家だけが、力を安定して継承し、力を操れるのだ」

 話が……頭に入ってこない。
 いいえ、入って来てるけど、理解するたびに意味が分からなくなる。

 魔族と戦える力を引き継げるのはマイヤー家だけ、という事?

 つまりジェニファーにもその力が?

 あの何も言い返さない臆病者が?

 いつも親の陰に隠れている自立できない女が?

 ハインツ王太子は知っていたんだ。

 だから必死に反対して、ジェニファーにやさしくして……そんな……そんな力のために!!

 私は我慢できなくなって反論した。

「それならば、どうしてあの時反対しなかったのですか! 追放が決定した時、3大公爵は何も言いませんでした、なぜですか!」

「ローラ嬢、我らが反対したところで、大多数の貴族の意見を覆す事は出来ないのだ。人魔大戦が終わって数百年、マイヤー家の力が悪用されないようにと情報を止めていたが、まさかこのような形で無力化されようとはな」

「悪用とは何ですか! まるで知らなかった者が悪者みたいではありませんか!!」

「過去に有ったのだよ。マイヤー家の力を悪用し、他国に侵略しようとした者が、な」

「それは! それは……その者が……おろかだったのです」

「そうだな、その通りだ。そしてその者も、利用できないのなら無駄飯食らいは必要ないと、追放しようとしたのだ」

 !! どういう意味? それではまるで……まるで私が……。

「陛下。この話はここまでで大丈夫でしょう。魔族の第2波をどうするか、その議論に移りたいと存じます」

 私が……愚か者じゃあ……ありませんか。
 うつむいて、唇をかみしめながら黙るしか出来なかった。

「ご苦労マイルコット公爵。では私の考えを先に言っておこう。神聖騎士団を出撃させようと思っている」

「陛下!! 神聖騎士団は王都の最後の砦です! 第2波で失っては、第3波で王都が滅びてしまいます!」

 騎士団長が反対してる。 
 なに? 神聖騎士団って。

「第3波を迎えることなく滅びてしまうのだよ、今の我々ではな」

「しかし……しかし天使を降ろした神聖騎士団は……もう……」

「それしか、無いのだ」

 天使を降ろす? どういう意味?

「お、恐れながら具申いたします! 神聖騎士団は第3波に取っておいて、第2波は市民に天使を降ろしてはいかがでしょうか。幸い数十万という数がおりますから、替えはいくらでもあります」

 お父様? 天使が何かご存じなのね。
 市民に天使を降ろす? 相手が誰でもいいのなら、掃いて捨てるほど居る市民は丁度いいわ!

 貴族たちも賛成してる。そうよね、役に立たない市民が私達の役に立てるのだから、栄誉な事だわ!

「貴様たちは、本気で申しておるのか……?」

 王族や3大公爵が睨んでる。
 あの顔は……私がマイヤー家が魔族と契約した、と言った時と同じ顔だわ。

 怒っていらっしゃるの? ハインツ王太子が、私達に?

「よかろう。では天使を降ろすとしよう」

「父上、一体何を!?」

「落ち着けハインツ。いま賛成した貴族共の一家に、天使を降ろす」

 ?? 意味が分からないわ。どうして市民から私達に替わるのかしら。

「おおおおお、お待ちください陛下! 我々は天使を降ろす器ではございません! 発狂してしまいます!!」

「市民もそうであろう? ならばどちらでも同じこと。自分の言葉は自分で責任を取るがよい」

「撤回します! 撤回しますのでお許しを!!」

 お父様が膝まづいている……あの誇り高きお父様が……陛下の御前とはいえ、あんなに……。

「今回の騒動の罪、確かに私にも責任はあるが、ほとんどがお前の思い込みによるものだ。お前には責任を取ってもらわねばならんな」

「そ、それは!! こっ、此度の騒動にかかった費用は全て負担させてきただきます! それと私の私兵も全てお渡しいたしますゆえ! なにとぞ、なにとぞ~~!!」

「まあよい、天使を降ろすのは止めてやろう。賛同した他の貴族共も同じ条件を課す! よいな!」

「ありがとうございます! ありがとうございますぅ~!」

 あまねく貴族が陛下に平伏している……あの温厚な陛下がここまでお怒りになるなんて……。



 貴族の私兵を合わせても5千程度で、国の兵士との連携が取れないため、戦力にはならないと言われた。
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