【完結】男爵令嬢が気にくわないので追放したら、魔族に侵略されました

如月ぐるぐる

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6話

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 ◆チェスター国・公爵令嬢ローラ視点・謁見の間◆

 私を無視して軍議が進んでいく。

 どうして誰も聞いてくれないんだろう。マイヤー元男爵が一番怪しいのに。

 時期的にも、元男爵を追放した数日後に異変が起きた。

 それ以外には考えられないのに……なのに陛下や建国以来の歴史を持つ貴族、騎士団長・兵長は頑なに否定する。

 ……!! まさか、国ぐるみでの横領事件なの!?

 マイヤー元男爵家も男爵なのに世襲していたりと、歴史だけは古い……この国は、汚職にまみれているというの!?

「兵長、王都の守備はどうなっておる」

「はっ! 各門、城壁上に3万名を配置しております。偵察隊もすでに動いております」

「うむ。騎士はどうか」

「はっ! 我々も所定の位置に就いております!」

「よろしい。市民の避難はどうか」

「はっ!」

 次々に話が進んでいく。

 軍議の場において、貴族はあまり発言できない。
 するのは古くからの貴族だけで、過去、戦争の経験がある家柄だけ。

 だからなんなの? この国の経済を回しているのは、私達新しい世代の貴族なのよ?

 今回の魔族討伐だって、我がシャンク公爵家は膨大な資金援助をしているはず。
 
 少しくらい耳を傾けるべきではなくて?

 どうして思い通りに行かないのかしら。

 せっかく邪魔な女を追い出せたと思ったら、次は魔族なんて。

 あの女が魔族と契約したに決まってるわ!




 結局、話に参加できないまま軍議は終わった。

 徹底的に防衛に専念する、ってだけ。

 数日後には魔族が攻めてきた。

 防衛に徹したお陰で、魔族を打ち滅ぼす事に成功した。

 なんだ、大したことないじゃない。街もいつも通りだし、無駄な時間だったわ。

 大げさな軍議なんて開いて、仰々しい。

 でも無能な人ほど会議を好む。

 またお城で軍議か開かれることになった。

 どうして? 魔族は倒したんじゃないの?

 私は口を挟まない、という条件付きで謁見の間に入ることが出来た。

「今回は何とか追いはらう事に成功した。だが第2波、第3波が来るのが確認されている。諸君の忌憚きたんのない意見を聞きたい」

 第2波? どういう事? あれで終わりじゃないの?

「守備に当たる兵士の数が足りません。先の戦いで70%にまで減ってしまいました」

「騎士団も同じです。このままでは第2波を防ぎぎれません」

 そんなの、この国には何十万もの平民が居るのよ? 徴兵したらいいじゃない。

「魔の森より現れる魔族の数が増えております。このままでは第3波は防げません」

 防げないってどういう事!? 魔族を倒すのが役目でしょ? 命をとして戦いなさい!
 でも魔の森? どうして魔の森が出てくるのかしら。

「恐れながら国王陛下! いまは魔の森など気になさらず、魔族の討伐に集中すべきです!」

 さすがはお父様! 古い考えで頭の固まった貴族とは違うわね!

「違うのだシャンク公爵……あの森こそが……」

 何が違うのかしら。

「陛下、このままでは話が進みません。恐れながら、私が説明しとうございます」

 あれは3大公爵家の1つ、マイルコット公爵だわ。
 
「よかろう。マイルコット公爵、たのむ」

「はっ。シャンク公爵や、まだ若い貴族の者には伏せていたのだが、魔の森こそが、魔族が住まう魔界と繋がる場所なのだ」

 ……え? 何を言っているの、あそこは何もない、ただ深いだけの森よ?

「数百年前の人魔じんま大戦に勝利した我々は、あの森の奥深くに魔界への門を開き、すべての魔族を魔界へと追い返したのだ。だが魔族の力は強大、いつ門を開いて出てくるかもしれない。そこで、人魔じんま大戦で多大なる功績をあげたマイヤー家が代々森を封印し、あふれ出てくる魔族を管理していたのだ」

 頭が真っ白になる。そんな……そんなはずは無い。だって、あの森はだたの森で、無能な男爵が閑職として送られる場所で……。

「そそそ、そんなバカな!! なぜそのような家が男爵などに留まっているのですか! それに宝石を無駄に要求するような男が、その様な重要な役目を果たしているとは思えません!」

 そ、そうよお父様! きっと今のは私達を丸め込もうとしたウソよ!

「初代マイヤーが言ったのだ『武力と権力の両方を持つと、人はおかしくなる。どうか一市民として扱ってほしい』とな。だが一市民にそんな役目を押し付ける事は出来ないし、何より森の結界には大量の宝石が必要。その資金や国からの支援が行える最低ラインが男爵だったのだ」

「そ、そんな!! では大量の宝石を要求していたのは、魔の森を封印するためだったというのですか!?」

「その通りだ。ゆえにマイヤー家が宝石を要求するのは国のため、ひいては世界の為なのだ」

「で、では……役目を解かれたマイヤー元男爵は……」

「さてな。一市民となり追放された家の事は、我らにはわからん」

 そんな筈は……そんなはずは無い……だって、ハインツ王太子との仲を邪魔する女を追い出しただけ……男爵の分際で、陛下や王太子と親しい一家を追い出しただけ……。

 私は……悪くない。知らなかったんだもの。そうよ、そんな事を隠している方が悪いのよ!

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