【完結】男爵令嬢が気にくわないので追放したら、魔族に侵略されました

如月ぐるぐる

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4話

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 地面に落ちた木剣をみて、私は少し拗ねた。

「隊長さん、いくら小娘が相手だからって、手を抜きすぎじゃありませんか?」

「え? あ、ああ、そうだな。すまんすまん、若い子に怪我させちゃマズイと思って、てー抜いちまった」
 (おっかしいな、木剣が飛ばされるほど手抜きはしてないけどな)

「じゃあ次は本気でやってくださいね♪」

「本気かぁ、流石に本気は出せないが、隊長の威厳って奴を見せてやるよ」

 そういって木剣を拾い、私達は剣を構えて向かい合う。
 
 よーし、私だって強いって所を見せてやる! と思ったらストップがかかった。

「たいちょ~、そろそろミーティングですぜ~」

「ん? もうそんな時間か。すまんな、威厳はまた今度だ」

「はーい」

 お仕事なら仕方ないな。よし! 隊長さんに負けないように、少し素振りをしよう!

 ただこの木剣、家にあるのと違って直ぐに折れそう。
 こういう時は……よし! フォームの見直しをしよう! 基本は大事だもんね!


 数日が経過し、運動不足も解消されて充実した日々を過ごしていた。
 ただ、ちょっと暴れたりない……は! 女の子が暴れるだなんてはしたない!

 そんな時だった、街に鐘の音が鳴り響いた。

「敵襲! 敵襲だー!」




 ◆数日前 チェスター国・謁見の間◆

「なんだと!? マイヤー男爵家を追放しただと!!」

「ええ、これで無駄な支出が減り、国政にも余裕が出る事でしょう」

 国王は公爵の報告に、両手で頭を抱えていた。

「なぜだ……なぜそのような事になったのだ……公爵、報告しろ」

「は? はぁ」

 公爵は独自に調べたという賄賂や横領の証拠を元に、自慢げに報告を始める。

 しかしそれは、逆に国王の逆鱗に触れる事になる。

「お前の目は節穴か! どれもこれも正規の手続きで、支払いや物資を支給しているではないか!!」

「い、いやしかし、あまりにも多すぎますので、その手続き自体が不正な物ではないかと……」

「愚か者がぁ!! 正規の手続きで不正など、それは事務方の問題であろう! ええい! もういいワシが調べる! ハインツ! ハインツはおらぬか!!」

「はっ、ここに」

「魔の森はどうなっておる!」

「魔の森の結界は正常に稼働しており、今のところ変化はありません」

「そうか、よかった……ハインツよ、王太子たるお前でも、こやつらは押さえられなんだか」

「申し訳ありません。現在の法では、私には何の権限もございません」

 王族に権力が集中し過ぎるのは良くない、そう考えて分散させたことが、ここで最悪の結果を出す事になる。

 ハインツの元に大慌てで報告が入った。
 それを聞いて、真っ青な顔で王に告げる。

「父上、最悪の事態です。魔の森が、あふれました」




 ◆魔の森周辺 カール・マイヤー元男爵とカタリナ・マイヤー元男爵夫人◆

「あなたと共に戦うのは久しぶりですね」

「まったくだな。できれば、お前と共闘する事態は避けたかった」

「今はそれを言っても始まりません」

「そうだな。今はこの、魔の森からあふれ出した魔族の大軍をどうするか、それだけを考えよう!」

 カール・マイヤーとカタリナ・マイヤー夫婦は知り合って直ぐの時に、魔界へとおもむき戦いに明け暮れていた。

 魔界で不穏な動きがあったため、先手を打って攻め込んだのだ。

 2人が知り合うまでにも色々とあったが、それはまた別の話し。

「カタリナはいつも通り空を頼む。俺は地上を何とかする」

「わかりました」




 話は現在に戻り、メルガスト共和連邦・ジェニファー。

「敵襲! 敵襲だー!」

 鐘がけたたましく鳴り響き、街の中は我先に逃げようとする人でごった返す。

 衛兵の詰め所は街の入り口付近にあるから、慌てて装備を取りに来る衛兵さんで一杯だ。

 この街は城壁で囲まれてて、入り口は正面の大門と、数か所に小さな門が数個。

 小さな門は閉じられたみたいだけど、大門は外にいる人が多いから、まだ閉められないでいる。

 衛兵さんと国の兵隊さんは城壁や門の周囲にいるけど、外にいる街の住民を助けにはいけない。

 可能な限りは街に入れるけど、街を守る事が最優先……衛兵さんの口からよく聞かされた事だ。

 今はまだ敵は遠くにいる。でも、もう少ししたら? 敵が何者かは知らないけど、敵が街に近づけば門は閉じられ、間に合わなかった人たちは……。

 私はおじさんの家に戻る事にした。



 お父さまに言われて装備を一式持ってきた。

 使う事になるとは思わなかったけど、やっぱり備えは大事って事ね。

 背中にかついだ大きな剣は私の身長よりも長く太い、腰に差した剣は光を放つ刀身を持つ。

 フェニックスの羽毛で編まれたベストとズボン、ドラゴンの鱗で出来た籠手こてとペガサスの祝福を受けた具足ぐそく

 マンティコアの頭蓋骨を加工して、完全に顔を覆い隠す兜をかぶる。

 これが、私の標準装備品。



 猛スピードで街中を走り抜け、門から外へ出る。

 外には住民がまだいる、でも敵もまだ来ていない。

 ふと羽根の音が聞こえて空を見上げると、低級魔族の群れが空を飛んでいる。

 敵って魔族だったの?

 なら手加減する必要はないわね!

 ペガサスの祝福を受けた具足に翼が生え、私は空へと舞い上がる。

「人を襲っちゃダメって、なんども言ってるでしょう!!」

 巨大な剣を背中から取り出し両手で下に構え、力いっぱい振り上げる!

 剣から発せられた剣圧は、低級魔族の群れの近くで拡散し、群れを覆い隠す数となって一気に魔族を切り裂いた。

「結界から出て来なければいいのに、出てくるからいけないの」

 そのころ街では、突然現れた勇者が魔族を倒した、という話で持ちきりだった……らしい。
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