【完結】男爵令嬢が気にくわないので追放したら、魔族に侵略されました

如月ぐるぐる

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3話

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 城下町を出てすぐ、私はお父さまに呼び止められた。

「ジェニファー、私と母さんは少し用事があるから、お前は先に帰っていなさい」

「お父さま……でも、帰って何をしたらいいの?」

「自分の旅支度をするんだ。装備一式も忘れないようにな」

「わかった。じゃあ先に帰ってるね」

 そう言って、私は走って家へと向かった。

 家に着いたけど、私は未だに信じられないでいる。
 賄賂? 横領? どれも身に覚えがない事ばかりだ。

 そんな事をしていたら、こんな苦しい生活をしてるはずが無いのに。
 きっと何かの間違い。国外追放も、きっと他の人と勘違いをしているんだ。

 お父さまとお母さまは、それを証明しに行ったに違いないわ!
 でも、お父さまに言われたから、一応準備はしておこう。

 夜になって帰ってきた両親との食事中、お父さまがいつになく真剣な表情で話を始めた。

「ジェニファー、父さんと母さんはな……」

 2人の真剣な表情に、私は唾をのむ。

「父さんと母さん、実は新婚旅行に行った事がないんだ!」

「……はい?」

「あなた、ジェニファーが呆けているわ」

「おおすまんすまん。知っての通り、母さんは若くして結婚をしたからな、旅行に行く余裕が無かったんだ。だから、これを機に新婚旅行へ行こうと思う」

「えーっと、はい、それはどうぞ、いってらっしゃい」

 確かにお母様は若い。王都でお買い物をしていたら、ナンパされたこともあるほどに。
 これを機に夫婦水入らずで旅行に行くのは賛成。
 だけど……あれ?

「ねぇ、それじゃあ私はどうしたらいいの?」

「うむ、お前は1人で旅をしなさい。隣のメルガスト共和連邦に知り合いがいるから、まずはそこへ行くといい」

 メルガスト共和連邦。小中国家が集まった集合国家で、時には1つの国として、時には別々の国として行動する国だ。
 知り合いがいるのならいいけど……なにが大事な事を忘れているような?

「あ! お父さま! 国外追放ってどういうことですか!?」

「ん? ああそれか。私にもわからん。わからんが、決まった以上は従うしかない」

「そんな、そんなアッサリと認めていいの!?」

「もちろん仲のいい貴族に調査をお願いした。それまでは気楽に過ごせばいいさ」

 ああ、それで私が先に帰ったのね。
 
 でも……はぁ、本当に追放されたんだ、私達。

「父さんたちは明日の朝には出発する。手紙を書いておくから、それを知り合いに渡せば面倒を見てくれるはずだ」




 朝起きると、お父さま達は出発した後だった。

 年頃の娘を1人で放り出すなんて、信用されてるというかノンキというか……。
 今はそんなこと考えてても仕方がないか。

 朝食を食べて、私も出発しよう。

 家の鍵を全部閉めて、門を出た所で振り返る。
 直ぐに帰ってこれるよね。ここは私達の家、お父さまたちの新婚旅行が終わった頃には、また、ここで一緒に暮らせるよね。

 後ろ髪を引かれながらも、メルガスト共和連邦へ走り出した。




 私の家は国の辺境にあるだけあって、隣の国は直ぐに到着した。
 でもお世話になる家はもう少し先だから、1泊して次の日の昼過ぎには門をたたいた。

「おお君がジェニファーか! 大きくなったな。君が生まれた時に祝いを持って行ったきりだが、おお、おお、カールにそっくりだな!」

 お父さまにソックリって、喜んでいいのかな。男みたいな顔って事?

「うんうん、これなら将来はカタリナみたいな美人ななるぞ」

 あ、お母様みたいに? それなら安心した。待ち遠しい。

 今日からお世話になるこの人は、オラフ・オイリッヒさん。
 お父さまの古くからの友人で、手紙のやり取りは頻繁にしている人だ。

「長旅で疲れただろう、ほらほら、部屋に荷物を置いて、お茶でも飲もう」

 オラフさんはとっても優しかった。お父様より年上みたいだけど、おば様も小さな子供も、まるで家族のように接してくれた。
 ふふ、これなら新婚旅行が終わるまで、楽しく暮らせそう。

 翌日の朝食が終わり、私はおじ様にお願いをした。

「オラフおじ様、私にできそうなお仕事はありませんか?」

「ん? どうしたんだいきなり」

「この家のお手伝いはもちろんしますが、それ以外にも職が欲しいんです」

 そんな事は気にしなくていい、そう言ってくれたけど、それでは私の気が済まない。
 生活費は渡したいし、甘えてばかりはいられない。

 そして紹介してもらったのは、簡単な事務仕事を募集しているという衛兵さんの詰め所。
 事務仕事か。計算は出来るから、大丈夫だと思う。

 簡単な計算問題を出されたけど、それを解いたら即採用された。
 よかった、しっかり勉強しておいて。

 数日は平穏無事に暮らしていたけど、ついにその時が来てしまった。

「ううっ、太った」

 ここに来てからは、早朝しか訓練が出来ていない。
 朝は朝食の準備をしてお仕事へ、夜は夕食の準備と子供たちの寝かしつけと、訓練時間が激減してるのが原因。

「何か運動を……あ、隊長さん、木剣をお借りしても良いですか?」

「構わないが、何に使うんだ?」

「その、ちょっと運動をしようかなって」

「はっはっは、いいぞ。それなら相手が必要だろう。どれ、私が相手をしよう」

 1人で素振りをするよりも、相手がいた方が運動になるもんね。
 隊長さん優しい!

 カーン。

 そんな音と同時に、隊長さんの木剣が宙を舞った。

「え?」

 おや?
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