【完結】男爵令嬢が気にくわないので追放したら、魔族に侵略されました

如月ぐるぐる

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2話

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 ハインツ様とのお茶会が終わり、領地へ戻る前にお母様と買い物をしている。
 お父様の領地では売っていない物が沢山あって、本当に目移りしちゃう。

 ああ、なんだか良い匂い。買い食いしたいけど、ダメダメ、ハインツ様に見られたら、はしたない女だと思われちゃう。

 それにお金が無いから無駄遣いはできない。

「これ位でいいかしら。ジェニファー? 私、お腹が空いてしまったわ、アレを買ってきてちょうだい」

 お母様が指さしたのは、さっきの良い匂いがしたお店。

「お母さま愛してる!」

 ほおにキスをして、小走りで買いに行った。
 噴水のある公園でベンチに座り、ハインツ様の事を話しながら美味しくいただいた。
 やっぱりお母様は優しいな。

 城下町を出て、そろそろ人が居ない森に囲まれた道に入った。

「それでは行きますよ」

「はい、お母さま」

 ここからは全速力で走れる。
 公爵令嬢は馬で2日って言ってたけど、本気で走れば領地まで半日もかからないで到着する。
 ウチはお金が無いから馬は居ないし知らないけど、きっと子馬の事ね。




「ハッハッハ、ジェニファーはハインツ様をお慕いしているんだな。昔はお父さんと結婚する、って言っていたのに」

「お、お父さま! は、ハインツ様をお慕いだなんて……そんな事……は……」

 夕食中にお父さまにからかわれた。
 も、もう! お父さまのイジワル!

 


 今日はいつもと少し違って、1日ずっと訓練だ。

 森の結界を確認する日だから、いつもより荷物が多い。
 月一で確認しないと、何か所か結界が弱まってたりする。

 低級魔族程度なら結界を抜けてくるかもしれないけど、領内の子供を危険にさらす事はできないし、けっこう重要な事だ。

「お父さま、あそこの結界が少しほころんでる」

「うむ。ではそっちは頼む、私は向こうを見てくる」

「わかりました」

 結界を張るには宝石が必要で、これが我が家の台所事情を厳しくしている原因だ。

 王都から定期的に補充されるけど、最近は採掘量が減っているらしく、質も悪くなってきてる。

 だから自腹で買う事も増えてきた。
 でもこれも国のためだし、少しくらいは我慢しなきゃ。

「おーいジェニファー、そっちの結界が終わったらこっちに来なさい。上級魔族が居るからちょうどいい訓練になるぞ」

「はーい、いま行きまーす」

 上級なんて久しぶり! いつもは中級魔族しか相手にしてないし、私も久しぶりに本気で戦いたい!




「どうだった? 上級魔族は」

「流石に強かった。でも1対1なら大丈夫かな?」

「そうか。じゃあ明日は久しぶりに私と手合わせをしよう」

「本当!? うふふ、お父さまに勝ってしまうかもよ?」

「ははは、そうなったら家督を譲らないといけないな」

 でも勝てないのは分かってる。お父様は魔界に行って帰ってこれるほどの手練れ。

 それに引き換え私は、魔界への門を開けることも出来ないひよっこ……もっと頑張らないと!




 ひと月後、そろそろ王都に定期報告に行く時期だけど、逆に王都から呼び出された。

 なんだろう、しかも一家全員で来いなんて、でも陛下の押し印がない書類だし。

 ちょっとした家族旅行のつもりの、軽い気持ちで行ったけど、予想を上回る事態だった。

「カール・マイヤー男爵、及びマイヤー家を国外追放にする!」

 そう告げたのは公爵。
 そして周りには各大臣や上級貴族が集まっている。

 え? え? どういう事? どうして私達が追放されるの!?

「待つんだ公爵! マイヤー家に何の非があるというのだ!」

 ハインツ様が私たちをかばう様に立って、公爵に問い詰めている。

「ハインツ王太子、マイヤー家には横領や、国からの賄賂わいろを受け取っていたと報告が来ております。我らの調査からもそれは明らか。これ以上、役立たずのマイヤー家にわたす俸禄などございません」

「しかしそれは……父上がいないときに決議する事ではないはずだ!」

「国王陛下がお留守の場合、私が臨時の決定権を持ちます。これはすでに決定した事なのですよ王太子」

 ハインツ様が何も言えなくなる。
 確かに陛下がお留守の時は、公爵が決定権を持ってる。でもどうして? 賄賂なんて知らないし、微力ながらも魔の森の管理はしてきたのに!

 他の王子たちも公爵に反論をしているけど、ダメ、全部言いくるめられてる。
 まだ若い王子達では、公爵に反論しても無駄だ。

「ハインツ様、他の王子達も、ありがとうございます。しかしこれ以上の争いは、内乱に繋がってしまいます。私達は決定に従い、国を出ようと思います」

 ハインツ様が……王子達が悔しそうに下を向いている。
 もう、ハインツ様に会えないの……?

 城を出る私達に声をかける人が居た。公爵令嬢だ。

「あら、やっとゴミがいなくなるのね。これで少しは国がキレイになるわ。ホホホホ」

 公爵令嬢の高笑いを聞きながら、私達は城を後にした。
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