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46 偽勇者 異世界
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「レッド。アナタは勇者ではありませんね?」
浮かび上がった疑問をレッドにぶつけます。
先程の戦いで疑問に思った事ですが、今までの戦いを振り返ると確信に近いものが得られました。
レッドは剣士・格闘家・魔法使いの3種しか使えません。
しかし勇者ならば全適性を持っているはずで、得手不得手はあるにしろ聖職者のスキルが使えない事はあり得ません。
しかし敵に囲まれ後手に回り、さらに回復スキルを使わなかったという事は、使えないのです。
勇者のスキルである【後の先】を、そして3つ以外のスキルを。
「……そうだ。俺は勇者ではない、ただの3色持ちだ」
3色。適性検査で現れる色。剣士の赤、格闘家の黄、魔法使いの青ですね。
地面に片膝を立てて座り、草をむしっています。
「え? レッド兄は勇者じゃねーのかよ!」
「やっぱりそうだったんだね」
「え~? どういう事~?」
「レッド。説明していただけますか?」
「ああ……そうだな。俺は元々は2色だったんだ。2色持ちでも珍しいんだが、俺は魔法の訓練をして3色になった。不思議だろ? どれだけ訓練をしても、向かない職の適性が出るはずが無いんだ。しかし俺はでた。だから他の職も訓練をしたら4色5色と増えていくと思ったんだ。しかし増えなかった。どれだけ訓練をしても他の色が出る事はなく、しかし3色持ちでちやほやされるうちに、俺は勇者を名乗るようになっていたんだ」
色が増える事は基本的にあり得ません。確か勇者の適性を持つ者は最初からすべての色が出るはずです。
それ以外の人は基本的に1色。2色出たら確かに持ち上げられるでしょうね。
しかしそれだけでは説明がつきません。
「しかしレッド。アナタは勇者と聖女の成すべきことを知っています。私の知らない事を知っているという事は、勇者と何らかの関りがあるのではありませんか?」
レッドがパーティーに入った時、レッドは私に早く強くなれ、そうして勇者・聖女の役割を果たせ、そう言っていました。
なぜ、勇者ではないレッドが知っているのでしょうか。
私でも知らない事なのに。
「……俺は先代勇者の孫だ。散々聞かされたんだ、勇者と聖女が揃わないと侵略が始まる、とな」
「侵略? どこの国が侵略されるというのですか?」
「国ではない、この世界が侵略されるんだ。異世界からこの世界へと侵略者が現れ、攻撃を開始する」
……? 世界? 他の世界から侵略? 何を言っているのでしょうか、まさか自分が勇者ではない事を誤魔化すために嘘を……いえ、レッドはそんな事はしません。
嘘をついていたとはいえ、レッドは私達を鍛え上げてくれました。
その能力や真摯さは知っています。
「理解できないと思うが、代々勇者と聖女は番となり、異世界の侵略から世界を守っていたんだ」
「え? ちょっと待ってレッド。その言い方だと聖女もずっと誕生してた事になるよ? 確認されている先代聖女は数百年も前じゃないの?」
ああ、ロビーはその話を知りませんでしたね。
「ロビー、実は聖女も常に誕生していたのです。私と同じように聖女と気付かなかっただけで、先代勇者の妻は聖女だったそうです」
「ええー! マジかよ! じゃあフランは誰と結婚するんだよ!」
流石はマット、気にする方向がズレています。
「じゃあロビーは勇者なの~?」
「ええっ? ケイも一緒に適性検査を受けたじゃないか。僕は剣士の赤だけだっただろ?」
「ああ、ロビーは剣士の適性しかないだろう。格闘家の適性すら無いはずだ」
ええ、ロビーは実戦で使える格闘などできません。
1色のみです。
「じゃあフランと結婚するのは誰なんだ?」
「マット、今それは置いておきましょう」
「いやいや、だって勇者がいないじゃん! このままだと異世界から侵略されちまうじゃねーか!」
そうでした。代々勇者と聖女が結ばれたという事は、私もそうである可能性が高いです。
しかしそれはロビーでは無い……いえ、感情で言えばロビーしかあり得ません。しかし別の問題として勇者が不在という事になってしまいます。
「ロビ~? 頑張って勇者になる~?」
「色を増やすなんて無理だってば……無理……なんだ」
ロビーが唇を噛みしめて血が出ています。
「ロビー落ち着いてください。前例ではそうというだけで、私がそうとは限らないのですから」
「……うん」
切れた唇を水で湿らせたハンカチで撫でてあげました。
ああロビー。あなたはが勇者ならば……いえ、そんな事は関係ありません。
勇者が居たとしても、私はロビーを選びます。
「すまないが、勇者でなければダメなんだ。勇者と聖女の子、それこそが次世代の勇者なんだ」
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浮かび上がった疑問をレッドにぶつけます。
先程の戦いで疑問に思った事ですが、今までの戦いを振り返ると確信に近いものが得られました。
レッドは剣士・格闘家・魔法使いの3種しか使えません。
しかし勇者ならば全適性を持っているはずで、得手不得手はあるにしろ聖職者のスキルが使えない事はあり得ません。
しかし敵に囲まれ後手に回り、さらに回復スキルを使わなかったという事は、使えないのです。
勇者のスキルである【後の先】を、そして3つ以外のスキルを。
「……そうだ。俺は勇者ではない、ただの3色持ちだ」
3色。適性検査で現れる色。剣士の赤、格闘家の黄、魔法使いの青ですね。
地面に片膝を立てて座り、草をむしっています。
「え? レッド兄は勇者じゃねーのかよ!」
「やっぱりそうだったんだね」
「え~? どういう事~?」
「レッド。説明していただけますか?」
「ああ……そうだな。俺は元々は2色だったんだ。2色持ちでも珍しいんだが、俺は魔法の訓練をして3色になった。不思議だろ? どれだけ訓練をしても、向かない職の適性が出るはずが無いんだ。しかし俺はでた。だから他の職も訓練をしたら4色5色と増えていくと思ったんだ。しかし増えなかった。どれだけ訓練をしても他の色が出る事はなく、しかし3色持ちでちやほやされるうちに、俺は勇者を名乗るようになっていたんだ」
色が増える事は基本的にあり得ません。確か勇者の適性を持つ者は最初からすべての色が出るはずです。
それ以外の人は基本的に1色。2色出たら確かに持ち上げられるでしょうね。
しかしそれだけでは説明がつきません。
「しかしレッド。アナタは勇者と聖女の成すべきことを知っています。私の知らない事を知っているという事は、勇者と何らかの関りがあるのではありませんか?」
レッドがパーティーに入った時、レッドは私に早く強くなれ、そうして勇者・聖女の役割を果たせ、そう言っていました。
なぜ、勇者ではないレッドが知っているのでしょうか。
私でも知らない事なのに。
「……俺は先代勇者の孫だ。散々聞かされたんだ、勇者と聖女が揃わないと侵略が始まる、とな」
「侵略? どこの国が侵略されるというのですか?」
「国ではない、この世界が侵略されるんだ。異世界からこの世界へと侵略者が現れ、攻撃を開始する」
……? 世界? 他の世界から侵略? 何を言っているのでしょうか、まさか自分が勇者ではない事を誤魔化すために嘘を……いえ、レッドはそんな事はしません。
嘘をついていたとはいえ、レッドは私達を鍛え上げてくれました。
その能力や真摯さは知っています。
「理解できないと思うが、代々勇者と聖女は番となり、異世界の侵略から世界を守っていたんだ」
「え? ちょっと待ってレッド。その言い方だと聖女もずっと誕生してた事になるよ? 確認されている先代聖女は数百年も前じゃないの?」
ああ、ロビーはその話を知りませんでしたね。
「ロビー、実は聖女も常に誕生していたのです。私と同じように聖女と気付かなかっただけで、先代勇者の妻は聖女だったそうです」
「ええー! マジかよ! じゃあフランは誰と結婚するんだよ!」
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「ええっ? ケイも一緒に適性検査を受けたじゃないか。僕は剣士の赤だけだっただろ?」
「ああ、ロビーは剣士の適性しかないだろう。格闘家の適性すら無いはずだ」
ええ、ロビーは実戦で使える格闘などできません。
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しかしそれはロビーでは無い……いえ、感情で言えばロビーしかあり得ません。しかし別の問題として勇者が不在という事になってしまいます。
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「ロビー落ち着いてください。前例ではそうというだけで、私がそうとは限らないのですから」
「……うん」
切れた唇を水で湿らせたハンカチで撫でてあげました。
ああロビー。あなたはが勇者ならば……いえ、そんな事は関係ありません。
勇者が居たとしても、私はロビーを選びます。
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