【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

文字の大きさ
上 下
46 / 73

46 偽勇者 異世界

しおりを挟む
「レッド。アナタは勇者ではありませんね?」

 浮かび上がった疑問をレッドにぶつけます。
 先程の戦いで疑問に思った事ですが、今までの戦いを振り返ると確信に近いものが得られました。
 レッドは剣士ソードマン格闘家グラップラー魔法使いウィザードの3種しか使えません。
 しかし勇者ならば全適性を持っているはずで、得手不得手はあるにしろ聖職者クレリックのスキルが使えない事はあり得ません。

 しかし敵に囲まれ後手に回り、さらに回復スキルを使わなかったという事は、使えないのです。

 勇者のスキルである【後の先ごのせん】を、そして3つ以外のスキルを。

「……そうだ。俺は勇者ではない、ただの3色持ちだ」

 3色。適性検査で現れる色。剣士ソードマンの赤、格闘家グラップラーの黄、魔法使いウィザードの青ですね。
 地面に片膝を立てて座り、草をむしっています。

「え? レッドにぃは勇者じゃねーのかよ!」

「やっぱりそうだったんだね」

「え~? どういう事~?」

「レッド。説明していただけますか?」

「ああ……そうだな。俺は元々は2色だったんだ。2色持ちでも珍しいんだが、俺は魔法の訓練をして3色になった。不思議だろ? どれだけ訓練をしても、向かない職の適性が出るはずが無いんだ。しかし俺はでた。だから他の職も訓練をしたら4色5色と増えていくと思ったんだ。しかし増えなかった。どれだけ訓練をしても他の色が出る事はなく、しかし3色持ちでちやほやされるうちに、俺は勇者を名乗るようになっていたんだ」

 色が増える事は基本的にあり得ません。確か勇者の適性を持つ者は最初からすべての色が出るはずです。
 それ以外の人は基本的に1色。2色出たら確かに持ち上げられるでしょうね。
 しかしそれだけでは説明がつきません。

「しかしレッド。アナタは勇者と聖女の成すべきことを知っています。わたくしの知らない事を知っているという事は、勇者と何らかの関りがあるのではありませんか?」

 レッドがパーティーに入った時、レッドはわたくしに早く強くなれ、そうして勇者・聖女の役割を果たせ、そう言っていました。
 なぜ、勇者ではないレッドが知っているのでしょうか。
 わたくしでも知らない事なのに。

「……俺は先代勇者の孫だ。散々聞かされたんだ、勇者と聖女が揃わないと侵略が始まる、とな」

「侵略? どこの国が侵略されるというのですか?」

「国ではない、この世界が侵略されるんだ。異世界からこの世界へと侵略者が現れ、攻撃を開始する」

 ……? 世界? 他の世界から侵略? 何を言っているのでしょうか、まさか自分が勇者ではない事を誤魔化すために嘘を……いえ、レッドはそんな事はしません。
 嘘をついていたとはいえ、レッドはわたくし達を鍛え上げてくれました。
 その能力や真摯さは知っています。

「理解できないと思うが、代々勇者と聖女はつがいとなり、異世界の侵略から世界を守っていたんだ」

「え? ちょっと待ってレッド。その言い方だと聖女もずっと誕生してた事になるよ? 確認されている先代聖女は数百年も前じゃないの?」

 ああ、ロビーはその話を知りませんでしたね。

「ロビー、実は聖女も常に誕生していたのです。わたくしと同じように聖女と気付かなかっただけで、先代勇者の妻は聖女だったそうです」

「ええー! マジかよ! じゃあフランは誰と結婚するんだよ!」

 流石はマット、気にする方向がズレています。

「じゃあロビーは勇者なの~?」

「ええっ? ケイも一緒に適性検査を受けたじゃないか。僕は剣士ソードマンの赤だけだっただろ?」

「ああ、ロビーは剣士ソードマンの適性しかないだろう。格闘家グラップラーの適性すら無いはずだ」

 ええ、ロビーは実戦で使える格闘などできません。
 1色のみです。

「じゃあフランと結婚するのは誰なんだ?」

「マット、今それは置いておきましょう」

「いやいや、だって勇者がいないじゃん! このままだと異世界から侵略されちまうじゃねーか!」

 そうでした。代々勇者と聖女が結ばれたという事は、わたくしもそうである可能性が高いです。
 しかしそれはロビーでは無い……いえ、感情で言えばロビーしかあり得ません。しかし別の問題として勇者が不在という事になってしまいます。

「ロビ~? 頑張って勇者になる~?」

「色を増やすなんて無理だってば……無理……なんだ」

 ロビーが唇を噛みしめて血が出ています。

「ロビー落ち着いてください。前例ではそうというだけで、わたくしがそうとは限らないのですから」

「……うん」

 切れた唇を水で湿らせたハンカチで撫でてあげました。
 ああロビー。あなたはが勇者ならば……いえ、そんな事は関係ありません。
 勇者が居たとしても、わたくしはロビーを選びます。

「すまないが、勇者でなければダメなんだ。勇者と聖女の子、それこそが次世代の勇者なんだ」



※ファンタジー小説大賞に参加しています! ぜひ投票をお願いします!
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!

南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」  パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。  王太子は続けて言う。  システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。  突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。  馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。  目指すは西の隣国。  八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。  魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。 「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」  多勢に無勢。  窮地のシスティーナは叫ぶ。 「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」 ■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

聖女として全力を尽くしてまいりました。しかし、好色王子に婚約破棄された挙句に国を追放されました。国がどうなるか分かっていますか?

宮城 晟峰
ファンタジー
代々、受け継がれてきた聖女の力。 それは、神との誓約のもと、決して誰にも漏らしてはいけない秘密だった。 そんな事とは知らないバカな王子に、聖女アティアは追放されてしまう。 アティアは葛藤の中、国を去り、不毛の地と言われた隣国を豊穣な地へと変えていく。 その話を聞きつけ、王子、もといい王となっていた青年は、彼女のもとを訪れるのだが……。 ※完結いたしました。お読みいただきありがとうございました。

身に覚えがないのに断罪されるつもりはありません

おこめ
恋愛
シャーロット・ノックスは卒業記念パーティーで婚約者のエリオットに婚約破棄を言い渡される。 ゲームの世界に転生した悪役令嬢が婚約破棄後の断罪を回避するお話です。 さらっとハッピーエンド。 ぬるい設定なので生温かい目でお願いします。

通称偽聖女は便利屋を始めました ~ただし国家存亡の危機は謹んでお断りします~

フルーツパフェ
ファンタジー
 エレスト神聖国の聖女、ミカディラが没した。  前聖女の転生者としてセシル=エレスティーノがその任を引き継ぐも、政治家達の陰謀により、偽聖女の濡れ衣を着せられて生前でありながら聖女の座を剥奪されてしまう。  死罪を免れたセシルは辺境の村で便利屋を開業することに。  先代より受け継がれた魔力と叡智を使って、治療から未来予知、技術指導まで何でこなす第二の人生が始まった。  弱い立場の人々を救いながらも、彼女は言う。 ――基本は何でもしますが、国家存亡の危機だけはお断りします。それは後任(本物の聖女)に任せますから

処理中です...