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40王子 庶民派
しおりを挟む ターポート共和国の王子の護衛を開始しました。
王子の名はニルス。まだ12歳の子供ではありませんか。
多少キレイな服装ですが、それ以外は街で遊んでいる子供と変わりません。
称号は王子でも王侯貴族という訳でもなく、厳しい躾けや教育を受けたわけではありませんからね。
これから20日間はずっと一緒に居る事になります。
今はニルス王子の自室で護衛中ですが、流石に常に全員が入るわけにもいかず、5人でローテーションを組んで2人が常に一緒に居るようにします。
残りの3人は休憩及び周囲の警戒に当たります。
「ニルス王子、これから20日間よろしくお願い致します」
最初なので5人が順番に握手を交わし、簡単な自己紹介をしました。
「よ、よろしくお願いしましゅ!」
噛みましたね。
緊張しているようですから仕方がありません。
しかしずっと一緒に居るのですから、何とか緊張をほぐして欲しいのですが……。
「いよぅニルス、今日は何して遊ぶ? つーか最近の流行りの遊びはなんだ?」
!?!? マット! いくら何でも王子に対してその言葉遣いは何ですか!?
緊張が走る私達を置き去りに、王子とマットは会話が弾みました。
「今は壁鬼をしてるの! お兄ちゃんもやる?」
「お~壁鬼か! 懐かしいな、よ~っし、最初は俺が鬼をするぞ!」
「うん!」
なんと、いきなり仲良しになってしまいました!
おそるべしマットの社交性。
精神年齢が近いだけ……何でもありません。
私達も一緒に遊び、休憩する時にはすっかり打ち解けていました。
「ねーねー、お兄ちゃん達って強いの?」
「おーよ、めったくそ強いぜ!」
「ほんと! じゃあエステバンよりも強いの!?」
エステバン……初めて聞く名前ですね。
他の4人も知らないようです。
「ニルス、エステバンとは誰ですか?」
「エステバンだよエステバン! いつもうるさいんだアイツ。でも大きいし力もあるから逃げられなくてさ」
ふむふむ、執事か何かでしょうか?
しかしここに来るまでに何人かの使用人に会いましたが、そんなに大きい人は居なかったはずです。
となるともっと別の職種でしょうか。
「あ! いっけね秘密だった。エステバンに知られたら怖いから、今の話は忘れてね!」
おやおや、随分とエステバンを怖がっていますね。
しかし嫌っている感じでもありませんし、仲が悪いわけでもないようです。
「じゃぁあ~、ニルスが良い子にしてたら黙っててあげるね~」
「ぼ、僕はいつもいい子だよ?」
目が泳いでいますよ? ニルス。
さてそろそろローテーションに入りましょう。
最初はレッドとマットの2人です。
私は休憩に入り、ロビーとケイは見回りに行きます。
休憩に入りますが、一応確認をしておきましょう。
「国王様、お伺いしたい事があるのですがよろしいでしょうか?」
「おや聖女様、いかがなさいました?」
執務室にお邪魔して国王様に話を聞くことにしました。
「エステバン、という方をご存じでしょうか」
「エステバン? はて聞いた事がありませんが。城に居る全員を知っている訳ではありませんが、私の周辺にはいませんね」
「そうですか、ありがとうございます」
執事では無いようですね。それにニルスに直接会える人物ならば国王様が知っているはずですし、知らないとなると……街で遊ぶ友達でしょうか。
それならば知らなくても不思議はありませんね。
ガキ大将でしょうか。
この事はメンバー内で共有しましょう。
数日が経過し、特にニルスが襲われるようなことはありませんでした。
城の外へ出る事は禁止されているので、単純に襲う事が出来ないだけという気もしますが、それならそれで美術館の開館祝典が終わるまで出て来なくてもいいのですけど。
交代でニルスの護衛をしていると、何故か5人のメンバーは、それぞれの得意分野でニルスの家庭教師をする事になりました。
私は座学を教える事になりました。
一番嫌われそうですね。
やはりというか何というか、ニルスは勉強が苦手でした。
私の教え方にも問題があるのでしょうが、もう少し、こう、集中できないモノでしょうか。
この日の晩は私とロビーがニルスの部屋で護衛をする番でした。
ロビーはニルスと一緒にベッドに入り、私は窓を背にして床に座っています。
先見の明を発動させていますが、何かが襲撃してくるビジョンは見えません。
今日も何事も無く夜が明けそうですね。
深夜になり、眠くなりそうなのを冷めたコーヒーを飲んで誤魔化します。
不意にビジョンが見えました。
「あ、エステバン来たんだ」
ニルスが起きています。
今の今まで寝息をたてていたのに!?
しかもエステバンですって? 一体どこに……!?
窓の外に黒い影が浮いていました。
人にしては形がいびつで、まるで炎のように揺らめいています。
王子の名はニルス。まだ12歳の子供ではありませんか。
多少キレイな服装ですが、それ以外は街で遊んでいる子供と変わりません。
称号は王子でも王侯貴族という訳でもなく、厳しい躾けや教育を受けたわけではありませんからね。
これから20日間はずっと一緒に居る事になります。
今はニルス王子の自室で護衛中ですが、流石に常に全員が入るわけにもいかず、5人でローテーションを組んで2人が常に一緒に居るようにします。
残りの3人は休憩及び周囲の警戒に当たります。
「ニルス王子、これから20日間よろしくお願い致します」
最初なので5人が順番に握手を交わし、簡単な自己紹介をしました。
「よ、よろしくお願いしましゅ!」
噛みましたね。
緊張しているようですから仕方がありません。
しかしずっと一緒に居るのですから、何とか緊張をほぐして欲しいのですが……。
「いよぅニルス、今日は何して遊ぶ? つーか最近の流行りの遊びはなんだ?」
!?!? マット! いくら何でも王子に対してその言葉遣いは何ですか!?
緊張が走る私達を置き去りに、王子とマットは会話が弾みました。
「今は壁鬼をしてるの! お兄ちゃんもやる?」
「お~壁鬼か! 懐かしいな、よ~っし、最初は俺が鬼をするぞ!」
「うん!」
なんと、いきなり仲良しになってしまいました!
おそるべしマットの社交性。
精神年齢が近いだけ……何でもありません。
私達も一緒に遊び、休憩する時にはすっかり打ち解けていました。
「ねーねー、お兄ちゃん達って強いの?」
「おーよ、めったくそ強いぜ!」
「ほんと! じゃあエステバンよりも強いの!?」
エステバン……初めて聞く名前ですね。
他の4人も知らないようです。
「ニルス、エステバンとは誰ですか?」
「エステバンだよエステバン! いつもうるさいんだアイツ。でも大きいし力もあるから逃げられなくてさ」
ふむふむ、執事か何かでしょうか?
しかしここに来るまでに何人かの使用人に会いましたが、そんなに大きい人は居なかったはずです。
となるともっと別の職種でしょうか。
「あ! いっけね秘密だった。エステバンに知られたら怖いから、今の話は忘れてね!」
おやおや、随分とエステバンを怖がっていますね。
しかし嫌っている感じでもありませんし、仲が悪いわけでもないようです。
「じゃぁあ~、ニルスが良い子にしてたら黙っててあげるね~」
「ぼ、僕はいつもいい子だよ?」
目が泳いでいますよ? ニルス。
さてそろそろローテーションに入りましょう。
最初はレッドとマットの2人です。
私は休憩に入り、ロビーとケイは見回りに行きます。
休憩に入りますが、一応確認をしておきましょう。
「国王様、お伺いしたい事があるのですがよろしいでしょうか?」
「おや聖女様、いかがなさいました?」
執務室にお邪魔して国王様に話を聞くことにしました。
「エステバン、という方をご存じでしょうか」
「エステバン? はて聞いた事がありませんが。城に居る全員を知っている訳ではありませんが、私の周辺にはいませんね」
「そうですか、ありがとうございます」
執事では無いようですね。それにニルスに直接会える人物ならば国王様が知っているはずですし、知らないとなると……街で遊ぶ友達でしょうか。
それならば知らなくても不思議はありませんね。
ガキ大将でしょうか。
この事はメンバー内で共有しましょう。
数日が経過し、特にニルスが襲われるようなことはありませんでした。
城の外へ出る事は禁止されているので、単純に襲う事が出来ないだけという気もしますが、それならそれで美術館の開館祝典が終わるまで出て来なくてもいいのですけど。
交代でニルスの護衛をしていると、何故か5人のメンバーは、それぞれの得意分野でニルスの家庭教師をする事になりました。
私は座学を教える事になりました。
一番嫌われそうですね。
やはりというか何というか、ニルスは勉強が苦手でした。
私の教え方にも問題があるのでしょうが、もう少し、こう、集中できないモノでしょうか。
この日の晩は私とロビーがニルスの部屋で護衛をする番でした。
ロビーはニルスと一緒にベッドに入り、私は窓を背にして床に座っています。
先見の明を発動させていますが、何かが襲撃してくるビジョンは見えません。
今日も何事も無く夜が明けそうですね。
深夜になり、眠くなりそうなのを冷めたコーヒーを飲んで誤魔化します。
不意にビジョンが見えました。
「あ、エステバン来たんだ」
ニルスが起きています。
今の今まで寝息をたてていたのに!?
しかもエステバンですって? 一体どこに……!?
窓の外に黒い影が浮いていました。
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