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32 日記 王太子妃
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デイヴィット王太子の日記を読んだマットは、顔のニヤケが止まりません。
いえ、マットだけではなく、この場に居るほどんどの人が笑いをこらえています。
「き、貴様! それをどうやって手に入れた! 返せ! 早く返せ!」
王太子が玉座の横から離れ、大きな足音を立てながら近づいてきます。
顔が真っ赤ですね。
乱暴に奪い取り、日記を松明の火にかけて燃やしてしまいました。
勿体ない、面白い日記でしたのに。
「まったく、これだから下賤の者は! どうやって私の日記を手に入れたのか、拷問をしながら聞き出してやる!」
「え? アレってデイヴィット王太子の日記だったんですかぁ? 落ちてたのを拾っただけなのにな~?」
遂に墓穴を掘ってしまいましたね。
だれもデイヴィット王太子の日記だとは言っていないのに、自ら暴露してしまいました。
貴族の数名がこらえきれず、吹き出してしまいました。
これ以上ないくらいに顔が赤くなっていますね、デイヴィット王太子。
さて、からかうのはここまでにしておきましょう。
「静かにしろ! さっさとフランチェスカの尋問を始めろ!」
そう言って裁判官らしき人物が出てきました。
何やら意味不明な罪を読み上げていますが、私には全く心当たりがありません。
「聖女フランチェスカ! 申し開きはあるか!?」
「そうですね、こういうのはどうでしょうか。フランチェスカの先見の力は悪魔の力であり、国に害を及ぼす事は間違いない。王太子とのご結婚により、国に魔の者が蔓延する恐れがある。早急に処分する必要があると思われる」
マットと同じように、私は紙に書いてある内容を読み上げました。
そうです。私の処刑を具申する内容が書かれているのです。
誰かがデイヴィット王太子をそそのかした、一つの証拠ですね。
「な!? お、お前の力が聖女のモノだと知っていれば、処刑など考えもしなかったのだ!」
そうでしょうね。聖女の色の出方は、ごく一部にしか知られていないようでしたから。
そうとは知らずに恐れるのは仕方がありません。
しかし、こちらの意見を聞かずに一方的に処刑をするのはいただけません。
「そうでしょうか。ではこちらを。フランチェスカの逃亡により空席になった許嫁の候補一覧をお送りします。デイヴィット王太子のお望み通り、かの国の姫もねじ込ませました」
最初に見た時は意味が分かりませんでした。
しかしデイヴィット王太子の望み通り、つまり、私に飽きたため、気に入った女性と結ばれるための芝居だった、という事です。
今度は一変して顔が真っ青になっていますね。
出来ればこの『かの国の姫』をねじ込ませた人物も炙り出したいのですが……この場にいる者の表情だけでは判断が付きませんか。
ざわめきが大きくなりました。
ここに書かれている内容だけで、私を処刑しようとしたことは1個人の身勝手な行動であり、無罪であることの証明になります。
「デイヴィット王太子、これはどういう事でしょうか? 私は最後まであなたを信じておりましたのに」
これは本当です。政略結婚だとしても、夫となる人の助けとなりたい、そう思っておりました。
「それがどうしたというのですか? あなたは王太子妃として相応しくなかった、それだけの事でしょう?」
今まで黙っていた女性が口を開きました。
玉座の横からデイヴィット王太子の横に降りてきましたが……この女性が?
「飽きられたのであれば、それはあなたの努力が足りなかったのです。見たところ随分とはしたない恰好をしていますが、その様な者が王太子妃に、ひいては王妃に相応しいとお思いなら、あなたを捨てたデイヴィット王太子の判断は正しかったのです」
恐らくこの女性がリストに書いてあった『ねじ込ませた姫』でしょう。
いけませんね、話をすり替えようとしています。
私の無罪を主張するための話が、王太子妃として相応しいか、にすり替えようとしています。
何とか話を戻さなければ。
いえ、マットだけではなく、この場に居るほどんどの人が笑いをこらえています。
「き、貴様! それをどうやって手に入れた! 返せ! 早く返せ!」
王太子が玉座の横から離れ、大きな足音を立てながら近づいてきます。
顔が真っ赤ですね。
乱暴に奪い取り、日記を松明の火にかけて燃やしてしまいました。
勿体ない、面白い日記でしたのに。
「まったく、これだから下賤の者は! どうやって私の日記を手に入れたのか、拷問をしながら聞き出してやる!」
「え? アレってデイヴィット王太子の日記だったんですかぁ? 落ちてたのを拾っただけなのにな~?」
遂に墓穴を掘ってしまいましたね。
だれもデイヴィット王太子の日記だとは言っていないのに、自ら暴露してしまいました。
貴族の数名がこらえきれず、吹き出してしまいました。
これ以上ないくらいに顔が赤くなっていますね、デイヴィット王太子。
さて、からかうのはここまでにしておきましょう。
「静かにしろ! さっさとフランチェスカの尋問を始めろ!」
そう言って裁判官らしき人物が出てきました。
何やら意味不明な罪を読み上げていますが、私には全く心当たりがありません。
「聖女フランチェスカ! 申し開きはあるか!?」
「そうですね、こういうのはどうでしょうか。フランチェスカの先見の力は悪魔の力であり、国に害を及ぼす事は間違いない。王太子とのご結婚により、国に魔の者が蔓延する恐れがある。早急に処分する必要があると思われる」
マットと同じように、私は紙に書いてある内容を読み上げました。
そうです。私の処刑を具申する内容が書かれているのです。
誰かがデイヴィット王太子をそそのかした、一つの証拠ですね。
「な!? お、お前の力が聖女のモノだと知っていれば、処刑など考えもしなかったのだ!」
そうでしょうね。聖女の色の出方は、ごく一部にしか知られていないようでしたから。
そうとは知らずに恐れるのは仕方がありません。
しかし、こちらの意見を聞かずに一方的に処刑をするのはいただけません。
「そうでしょうか。ではこちらを。フランチェスカの逃亡により空席になった許嫁の候補一覧をお送りします。デイヴィット王太子のお望み通り、かの国の姫もねじ込ませました」
最初に見た時は意味が分かりませんでした。
しかしデイヴィット王太子の望み通り、つまり、私に飽きたため、気に入った女性と結ばれるための芝居だった、という事です。
今度は一変して顔が真っ青になっていますね。
出来ればこの『かの国の姫』をねじ込ませた人物も炙り出したいのですが……この場にいる者の表情だけでは判断が付きませんか。
ざわめきが大きくなりました。
ここに書かれている内容だけで、私を処刑しようとしたことは1個人の身勝手な行動であり、無罪であることの証明になります。
「デイヴィット王太子、これはどういう事でしょうか? 私は最後まであなたを信じておりましたのに」
これは本当です。政略結婚だとしても、夫となる人の助けとなりたい、そう思っておりました。
「それがどうしたというのですか? あなたは王太子妃として相応しくなかった、それだけの事でしょう?」
今まで黙っていた女性が口を開きました。
玉座の横からデイヴィット王太子の横に降りてきましたが……この女性が?
「飽きられたのであれば、それはあなたの努力が足りなかったのです。見たところ随分とはしたない恰好をしていますが、その様な者が王太子妃に、ひいては王妃に相応しいとお思いなら、あなたを捨てたデイヴィット王太子の判断は正しかったのです」
恐らくこの女性がリストに書いてあった『ねじ込ませた姫』でしょう。
いけませんね、話をすり替えようとしています。
私の無罪を主張するための話が、王太子妃として相応しいか、にすり替えようとしています。
何とか話を戻さなければ。
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