【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

文字の大きさ
上 下
30 / 73

30 ギルド 帝都

しおりを挟む
「んで? 何があったんだ」

 お菓子とお茶を並べ終えると、リズ様もイスに座りたずねてきました。
 リズ様になら話をしても構わないと思うのですが、一応みんなの顔を見ます。
 ロビーは首を縦に振りましたが、他の3人はお菓子を食べていますね、任せる、という事です。

「実はわたくし、グラストリム帝国に戻るように命令されたのです」

「あん? 命令って誰が、どうして」

「理由は存じ上げません。しかし1度は断ったのですが、そうしたら仲間を誘拐されました」

「はぁ!? 冒険者を誘拐だぁ!? 冒険者は舐められたら終わりだよ! どこのどいつだ! 徹底的に追い詰めてやる!!」

 テーブルを拳で叩きまくっています。
 ここまで激しい反応が来るとは思っていませんでした。

「予想ですが、相手はデイヴィット王太子と取り巻きです」

 するとどうでしょう、いきなり勢いが消えうせ、困った顔をしてしまいました。
 そういう反応ですよね。

「おいおい、なんでウチの王太子がフランチェスカを狙うんだ? 婚約破棄した上にお前を処刑しようとしたんだぜ? もう指名手配は解除されたんだ、狙う意味がわからねーぞ」

「おや? わたくしが公爵令嬢だった事はお話しましたか?」

「あの時は知らなかったけどよ、お前の名前で手配書が来て、不思議に思って調べたらわかった」

 なるほど、そう言えばギルドカードにはフルネームが記載されていますから、調べればわかってしまいますね。
 しかしある程度の事情が分かっているのなら話がしやすいです。

「それならば話が早いです。この国が聖女を必要としている理由をご存じありませんか?」

「聖女自体はどの国でも欲しがっているさ。でも誘拐してまでとなると……ねぇ」

 腕を組んで考えていますが、中々思いつかないようです。
 ギルドの情報網でも知りえない事態なのか、それとも言えない事情なのか。
 ……いえ、言えない事は無いでしょう。わたくし達はその被害者なのですから。

「すまねぇ、分からない」

「お気になさらず。わたくし達はわたくし達で動きますので、何か分かった時に教えてください」

「ああ、その時は真っ先に教えてやるぜ」




 ギルドを後にし、この街でもやる事があるので用事を済ませてしまいましょう。

「どの位でくっかな」

 夜になり、宿で食事を取りながら話をしています。
 今から国に先手を打つという少々危険な事をするのですが、何故かみんな楽しそうです。

「さぁなあ。今日入ったばかりだが、早ければ明日の朝、遅くても数日中だろう」

「そうだね、僕もその位だと思うよ」

 今のところ順調に進んでいますが、相手が気付いてからでは遅いので、常に先へと進めなければなりません。

「明日は早いのですから、今日は食事が終わったら寝てしまいましょう」

「そうだね~、眠くなったらやだもんね~」

 

 翌早朝。
 わたくし達は夜明けと同時に街を出て、一気に帝都を目指します。
 途中で何度かの野宿をし、強行軍で帝都の近くへと到着しました。

「つ……疲れた」

「ここまでくれば、明日の朝には帝都に入れるな」

「それでは、今日はここで一晩休むとしましょう」

 そろそろ日が沈む時間です。オレンジ色の空を見ながら野営の準備をします。

「大丈夫? フラン疲れてないかい?」

「疲れてはいますが、心配するほどではありませんよロビー」

 薪を拾っているとロビーが心配そうな顔をしていました。
 自分の考えでみんなに迷惑をかけている、そう考えていそうな顔ですね。

「ごめん、僕が変な事を言い出した―――」

 人差し指でロビーの口を押さえました。
 思った通りでしたね。

「謝るのはわたくしの方です。ロビーはわたくしの為に考えてくれたのですから」

「でもやっぱりムグ」

 今後はわたくしから唇を塞ぎました。
 以前は唇を奪われましたが、今後はわたくしが奪いましょう。

「ふ、フラン?」

「ふふふ。ロビーはすっかり大きくなりましたね。もう弟だなんて思えなくなりました」

 それが、わたくしから言える唯一の合図。
 その合図を、ロビーは理解してくれました。

「ふ、フフフフラン! 3年前の言葉をもう一度言わせて!」

「ど、どうぞ」

 いけません。わたくしも緊張してきました。

「フランの……フランの事が好きです! 僕とお付き合いしてください!」

 真っ直ぐにわたくしを見つめ、返事を待っています。
 ああ、そんな所も3年前と同じなのですね。
 今のロビーの言葉を、今のわたくしが断れるはずがありません。

「はい。わたくしもロビーが好きです、よろしくお願いします」

 そう言って抱き付き、もう一度唇を重ねました。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

通称偽聖女は便利屋を始めました ~ただし国家存亡の危機は謹んでお断りします~

フルーツパフェ
ファンタジー
 エレスト神聖国の聖女、ミカディラが没した。  前聖女の転生者としてセシル=エレスティーノがその任を引き継ぐも、政治家達の陰謀により、偽聖女の濡れ衣を着せられて生前でありながら聖女の座を剥奪されてしまう。  死罪を免れたセシルは辺境の村で便利屋を開業することに。  先代より受け継がれた魔力と叡智を使って、治療から未来予知、技術指導まで何でこなす第二の人生が始まった。  弱い立場の人々を救いながらも、彼女は言う。 ――基本は何でもしますが、国家存亡の危機だけはお断りします。それは後任(本物の聖女)に任せますから

偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!

南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」  パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。  王太子は続けて言う。  システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。  突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。  馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。  目指すは西の隣国。  八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。  魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。 「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」  多勢に無勢。  窮地のシスティーナは叫ぶ。 「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」 ■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

処理中です...