【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

文字の大きさ
上 下
4 / 73

4.国境越え 新しい街

しおりを挟む
 リズ様に別れを告げ、サンダルフォンに乗り門を抜けました。
 ギルドカードを門番に見せると、お咎めなく通過する事が出来るようです。
 冒険者というのは、信頼されているのですね。

 門を抜けて、尖った木の杭で出来た柵を抜けると、森の中を通る道が見えてまいりました。
 あの森を抜ければ隣国ですのね? 急いで通り抜けてしまいましょう。
 それにしても……短いスカートで乗馬をするのは危険ですのね。

 道自体は馬車も通れるほどの広さがありますが、森の中を通るため視界が少々わるいです。
 まだ日が出ているうちに街に到着しなければ。



 ん? あれは……城壁が見えてまいりました。
 その手前にはやはり尖った木の柵があり、向こうには閉ざされた大きな扉が見えます。
 何とか日が沈む前に到着できました。
 ここまで来たら大丈夫でしょう。私はサンダルフォンを走らせるのをやめ、ゆっくりと歩かせました。

 ギルドカードを見せて街に入ると、やはりこの街も警備が厳重ですね。
 門番の数も、衛兵の数も、他の街よりも沢山います。

 前の街でリズ様がおっしゃっていました、街に着いたらまずはギルドに顔をだせ、と。
 なので門番に冒険者ギルドの場所を聞きましょう。

「ここですわね」

 この街の冒険者ギルドも同じ作りをしています。
 石造りで木製の両扉、しかしすでに暗くなっているので、扉の両側にはかがり火が置かれています。
 扉は開けられておりますので、遠慮なくお邪魔しましょう。

「こんばんは、この街に初めてお邪魔致しましたので、ご挨拶に伺いました」

「これはこれは、ようこそダラムへ! それではギルドカードの提示をお願いします」

 ギルドカードを渡すと専用の台に乗せ、わたくしの情報が読み取られます。
 わたくしとギルド間の情報は全て登録されます。

「はい、ありがとうございます。それではどうしますか? 依頼を受けますか?」

「いえ、今日は休もうと思います。手ごろな宿はございますでしょうか?」

「それでしたらギルドおススメの宿を紹介しますよ」

 そう言われて着いた宿は、まるで私の自室程度の大きさの宿でした。
 ええ、ええ知っていますよ、一般常識の講習でリズ様に教えていただきました。
 庶民はここで寝泊まりするのですよね。

 それにしても……小さい。ここに3~4人が泊まるのでしょうか。
 意を決して中に入り、一人で泊まる事を伝えると、部屋の鍵を渡されました。
 2階の一番奥だとか……階段を上がると沢山扉があり、全てに番号が書いてあります。
 まさか……これ全部に人が入るのですか?

 ああここですわね。
 少しの楽しみと少しの不安、そして、あふれ出す疑問で一杯です。

「ここは……お手洗いですの? ん? これはまさか……やっぱり! ベッドですわ!」

 扉を開けて目に入ったのは、倉庫にもならない小さな部屋。
 最初はお手洗いに入ったのかと思いましたが、どうやらここが今日泊まる部屋のようですわね。

「このベッド、まるで床のように硬いですわね。それに……ギシギシ音がします。壊れているのではありませんか?」

 いえ待ちなさいフランチェスカ。リズ様に聞いていたではありませんか、一般人が泊まる宿は、お前が思ってるより遥に質素だ、と。
 そう質素……質素? これが一般常識でいう質素なのですね……挫けてしまいそうです。

 部屋の中には壊れかけのベッドと小さな机とイス。
 わたくし……冒険者なんですもの! これも冒険なのです!
 何とか気合いを入れて、食事を頂きに1階に降りました。

 すでに沢山の人が食事をしていて、とても活気があります。
 きっと人気の宿なのでしょうね。

 それに皆さん気さくで、色んな方々が話かけてくださいます。
 心細かったわたくしですが、この街ならば安心してやって行けそうです。
 知らないシュワシュワするお酒を、見知らぬ男性たちに沢山ご馳走になりましたし、知らない食べ物ばかりですわね。

 気が付けばわたくしの周囲の男性は寝ておりました。
 どうやらお疲れのようですね、そっとしておいて差し上げましょう。

「うっはっは、お嬢さんやるねぇ。あたしゃ酔い潰されて、お持ち帰りされるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ」

 お持ち帰り? ああ食事をテイクアウトできるのですね、サービスが良いお店です。
 おかみさんの人柄もいいので、やはり人気があるのでしょう。




 翌朝、早速冒険者ギルドで依頼を受けようと思い、掲示板を見ています。
 初心者向け、というのはありますが、残っているのは数名でパーティーを組まなくてはいけないようです。
 わたくしは1人だけ……今日は何もできないのでしょうか。

「お姉さん、魔法使いウィザードでしょ? 俺達と組まないか?」

 声をかけられたので振り向くと、そこには剣を携えた男の子が2人と、小さな杖を持つ女の子が1人居ました。
 えーっと確か……剣士ソードマン聖職者クレリックでしたか、この装備は。

「はい。魔法使いウィザードですが、1人で出来る依頼が無いので、途方に暮れておりました」

「よっしゃナイス! 俺達さ、丁度魔法使いウィザードが欲しかったんだ、一緒に行かないか?」

 嬉しいお誘いです。渡りに船というのでしょうか。

わたくしはフランチェスカと申します」

「俺はマット、剣士ソードマンだ」

「僕はロビー、同じく剣士ソードマン

「私はケイです。聖職者クレリックです」
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

通称偽聖女は便利屋を始めました ~ただし国家存亡の危機は謹んでお断りします~

フルーツパフェ
ファンタジー
 エレスト神聖国の聖女、ミカディラが没した。  前聖女の転生者としてセシル=エレスティーノがその任を引き継ぐも、政治家達の陰謀により、偽聖女の濡れ衣を着せられて生前でありながら聖女の座を剥奪されてしまう。  死罪を免れたセシルは辺境の村で便利屋を開業することに。  先代より受け継がれた魔力と叡智を使って、治療から未来予知、技術指導まで何でこなす第二の人生が始まった。  弱い立場の人々を救いながらも、彼女は言う。 ――基本は何でもしますが、国家存亡の危機だけはお断りします。それは後任(本物の聖女)に任せますから

偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!

南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」  パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。  王太子は続けて言う。  システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。  突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。  馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。  目指すは西の隣国。  八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。  魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。 「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」  多勢に無勢。  窮地のシスティーナは叫ぶ。 「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」 ■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

処理中です...